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神々の塔

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第九十三話 それぞれの神具その八

「時が来ればな」
「わかるね」
「神霊さんはこうした時嘘は言わへんもんや」
「必ず伝えるって言った時は」
「ニーベルングの指輪やとな」
 リーは厳粛な感じの声で言ってきた。
「これが結構な」
「契約破ろうとするね」
「ヴォータン、即ちオーディンさんがな」
「あの手この手で」
「北欧神話でもそうしたとこあるが」
「あの楽劇やとね」
 綾乃もこの話を知っていた、ワーグナーが作曲だけでなく脚本も全て行った四部作合計十五時間に渡って上演される大作中の大作である。
「特にやね」
「あれこれとな」
「契約破ろうとしてるね」
「対する巨人や小人も大概やけどな」
「相手を嵌めようとして」
「色々やってるけどな」
「神霊さんの方も」
 そのヴォータンがだ。
「やろうとしてるさかい」
「神霊さんが嘘吐かへんのはな」
「ちゃうね」
「オーディンさんそうでロキさんなんかもっとな」
「相手騙すし」
「それでギリシャやとヘルメス神がな」
「よりによって嘘の神様でもあるし」
 そちらも司っているのだ、商売と伝令の神であるが伊達に泥棒の神でもあるというわけではないということだ。
「ほんまな」
「神霊さんも嘘吐くことはね」
「事実や」
「そやね」
「しかし芥川の言う通りな」
「こうした時はね」
「神霊さんは絶対にや」
 それこそというのだ。
「嘘は吐かへん」
「そやね」
「絶対に来たるべき時になったらな」
「神託で伝えてくれるね」
「そうしてくれるわ」
「ほなその時を待とうね」
「しかし。前まで神霊さんでもわからんって言うてはったが」
 シェリルはここで言った。
「それがどうもな」
「神霊さん達もわかりはったみたいやね」
「遂にな」
「そうなったんやね」
「そやな、それだけな」
 まさにというのだ。
「有り難いわ」
「ほんまにそやね」
「神霊さん達も調べてくれてたんやな」
「この世界を襲う危機についてな」
「そうしてくれたんやね」
「まあ前からな」
 シェリルはそれこそと話した。
「わかるべき時になったらな」
「わかるって言われてたね」
「そやった、そしてや」
「その危機が何か」
「わかった、その段階や」
「そやね」
「しかしそれが今から私等が全力でせんことやとな」
 そうした危機ならというのだ。
「もう今の時点でや」
「うち等に伝えてるね」
「そうなってるわ」
 こう言うのだった。 
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