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口紅を塗らなくても

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第二章

「浮気ばかりしていてな」
「碌でもない人だったの」
「今も風俗行く位のな、八十過ぎて」
「凄い人ね」
「その祖父さんが家に帰って下着脱いだら」
 そうすればというのだ。
「白ブリーフだったんだけれどな」
「今少ないわね」
「俺もトランクスだしな、それでそのブリーフの前の部分にな」
 そこにというのだ。
「真っ赤な唇の口跡あってな」
「浮気ばれたのね」
「これ言い逃れ出来ないだろ」
「無理ね」 
 紗理奈は笑って答えた。
「絶対に」
「それで奥さん、祖母さん怒ってな」
「離婚とか?」
「寸前までいったらしいな」
「よくならなかったわね」
「ああ、口紅付けてるとこうしたこともあるよな」
「普通ないわよ」
 紗理奈は笑ったまま答えた。
「何よそれ」
「だから口紅でこんな話もあるんだよ」
「だから普通ないから」
「けれど紗理奈にはないよな」
「付けてないから最初から。大体浮気なんてしないわよ」 
 紗理奈は自分から言った。
「それはあんたもでしょ」
「こんな話聞いて浮気とかな」
「しないわよね」
「実際この祖父さんギッタンギッタンにやられたらしいからな」
「奥さんから」
「そんな話聞いたらな、浮気はしない」
 清正は言い切った。
「最初からな、それにな」
「それに?」
「口紅はあれだな、付けたいなら付けて」
 そうしてというのだ。
「付けたくないならな」
「付けなくていいわよ」
「そうだよな、それだけだな」
「そうよね」
 下校中にこうした話をした、そしてだった。
 紗理奈は高校時代は口紅は付けなかった。就職してメイクもマナーであるので付ける様になった。だが元々赤い唇の外見が変わることはなくそこで目立つことはなかった。


口紅を塗らなくても   完


                    2024・12・20 
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