イタリアン弁当
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第一章
イタリアン弁当
アルバイトを募集すると大学生が面接に来た、その大学生はというと。
「フィレンツェから来た」
「はい、マリオ=パンピエッリです」
真ん中で割れた顎に長い睫毛を持つ彫のある顔に縮れた短めにした黒髪に彫のある顔立ち。背は
一七二程で均整の取れた身体付きである。
「六歳からこちらにいます」
「そうですか」
面接を受けている弁当屋の店長中井勉は内心戸惑いながら応えた、眼鏡をかけて髪の毛が前からなくなってきている前歯がやや出て釣り目で面長の顔で一七〇位の背の腹は出ているが痩せた身体つきの中年男だ。
「それで日本語が堪能ですね」
「両親はずっと日本で働いていまして」
「今回はうちで働きたくて面接に来られたんですね」
「昔からお弁当が好きで」
こう中井に話した。
「それで、です」
「そうなのですね」
「はい、採用してくれた時はお願いします」
「今うちは人手不足なので」
その場で採用とした、そして採用すると。
バンピエッリは真面目に働いた、日本語はネイティブと変わらず流暢でしかも接客も問題なかった。テキパキと動き頼りになった。
「いや、まるで日本人みたいだよ」
「そうですか」
「日本語も接客もね」
「子供の頃から日本にいまして」
バンピエッリはここでもこのことを話した。
「日本のお店にもいつも出入りしていまして」
「日本の中にいてだね」
「はい」
それでというのだ。
「自分でも日本人と同じになっていると思います」
「外国生まれでもずっと日本にいれば」
中井は今わかった、二人共今は店の制服を着ている。
「日本の接客になるんだね」
「そうですね」
「他のこともね」
「日本の習慣や風習に馴染んでいますね」
「お箸使うのも得意だし」
休日の昼の仕事の合間の昼食の時のことも話した。
「そのこともだね」
「そうだと思います」
バンピエッリも笑顔で応えた、兎角だった。
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