着ぐるみで調査

「お客さんの声が」
「そうだね、人が前にいたらね」
「言わないですか」
「そんなお話もね」
「着ぐるみが前だとですか」
「何しろ着ぐるみだからね」　
　そうであるからだというのだ。
「中に人が入っていても人間に見えないから」
「気がねなくお話するんですね」
「実際そうだったね」
「はい」
　葉山はその通りだと話した、二人で乾杯したビールのジョッキに鶏のから揚げにイカゲソを焼いたものが卓の上にある。
「大勢の人が」
「何処がいいか悪いか」
「どうして欲しい何がよかったか」
「何かと話していたね」
「はい」
　そうだったというのだ。
「鬼塚さんの言われる通り」
「それでその聞いたことをね」
「ここで、ですね」
「覚えている限り話してね」
「そうさせてもらいます」
「その話してくれることが」
　それがというのだ。
「次のイベントに役立つから」
「改善点やあらたに取り入れることの発見ですね」
「そうなるから」
　だからだというのだ。
「話してね」
「そうさせてもらいます」
「宜しく頼むよ」
「それじゃあ」
　葉山は鬼塚の言葉を受けてだった。
　着ぐるみを着た時に聞いた話を覚えている限り話した、鬼塚はその話をメモに取った。それが終わってからだった。
　鬼塚は満足した笑顔でだ、向かい側に座る葉山に言った。
「これでよし、じゃあね」
「これからですね」
「仕事は終わったよ」
「今までがお仕事ですね」
「お客さんの声をメモするまでがね」
「そうなんですね」
「うん、じゃあ飲んで食べよう」
　鬼塚は笑顔で言って実はこれまでしていなかった乾杯を葉山に言った、葉山も仕事が終わったからそれに応えてだった。
　乾杯した、そして打ち上げを楽しんだ。全てが終わってから。


着ぐるみで調査　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２４・１２・１５