一人のクレーマーが
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第一章
一人のクレーマーが
その寺は毎年大晦日に除夜の鐘を鳴らしていた、それは日本の年末の行事でありこの寺でも当然として行っていた。
それで今年も行うことが決まっていたが。
「除夜の鐘の音が五月蠅い?」
「はい、苦情が来ています」
寺の副住職の青光、中年の太った僧侶の彼が住職の銀光初老の住職である彼に寺の茶室で真剣な顔で話した。
「その様に」
「そんな話ははじめてだ」
銀光は驚きを隠せない顔で答えた。
「除夜の鐘の音がなぞと」
「私もです、百八の煩悩を祓うものですが」
「一年の最後にな」
「そして日本の恒例行事です」
「毎年一度のな」
「それに苦情を言うなぞ」
「はじめてだ」
「それでどうされますか」
「苦情は何件だ」
銀光は青光に問うた。
「一体」
「今のところ一件です」
青光は即座に答えた。
「それだけです」
「一件か。それだけで中止するのもな」
「よくないですか」
「一人の人がそう言ってもこの辺りの他の人達はどうか」
「他の人の意見も聞くべきですね」
「そうだ、檀家の人達からも聞いて総本山ともお話をしてな」
そこまでしてというのだ。
「市役所とも話す」
「そうもしてですか」
「決めよう」
こう言ってだった。
銀光は実際に近隣の人達から話を聞き市役所とも相談し檀家の人達の話をして総本山にも伺いを立ててだった。
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