マンションジャングル
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第一章
マンションジャングル
そのタワーマンションは何でもあると評判になっている、オーナーである伏山勘太郎六十代の不動産業者の彼は胸を張って言った。
「もうここにいればお仕事以外で、です」
「外に出ることはないですか」
「全く、それこそです」
入居希望の売れっ子作家の山本道明に話した、見れば大人しそうな痩せた黒髪と黒い目の細い顔の青年だ。中背で痩せている。
「何でもありますから」
「マンションの中にですか」
「はい、お店も何でもです」
「あるんですね」
「ジムもプールもありまして」
そうであってというのだ。
「郵便局も銀行も行政サービスを受けられる場所も」
「ありますか」
「もう中にいれば」
そのタワーマンションのというのだ。
「全くです」
「外に出ることがないんですね」
「お仕事以外は」
「妻は雑誌編集者で出版社勤務ですが」
山本は伏山にそれこそと話した。
「僕は小説家で」
「在宅で出来るお仕事ですね」
「はい」
まさにというのだ。
「そうですが」
「ならもうです」
伏山は山本に笑顔で言った。
「全くです」
「タワーマンションの外からですか」
「出ないで」
それでというのだ。
「お買いものもスポーツも出来て」
「行政サービスもですね」
「レジャー施設もあります、またペットもです」
「飼えますか」
「犬でも猫でも。ドッグレース場もありますし」
「そこで犬の運動もですか」
「何でしたらお散歩も」
マンションの中でというのだ。
「出来ます」
「本当に中で、ですね」
「何でも出来ますので」
「外に出る必要はないですね」
「そうした場所です」
「それじゃあ」
そこまで聞いてだった。
山本は妻と話してそのうえで契約した、こうしてタワーマンションに入ったが伏山の言う通りであった。
「凄いね、何でもね」
「あるわね」
妻もまさにと頷いた、見れば二十八位で黒いロングヘアで整った顔立ちの巨乳でスタイルのいい美女である。
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