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始皇帝の目

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第四章

「おそらくこのまま残るでしょう」
「我等の後も」
「ですから」
 それでというのだ。
「以後も言われるでしょう」
「そうなのですね」
「私はそう見ましても」
 張良、劉邦の知恵袋であり天下一の軍師と言われる彼がというのだ。
「後世の人達はです」
「わからないですか」
「はい」 
 そうだというのだ。
「真実かどうかは」
「そうなのですね」
「そうかと」
 こう言うのだった。
「今でもそうなのですから」
「噂があり」
「実際に始皇帝を見た人もです」
「少ないですね」
「秦の皇室か廷臣の人達ですが」
「もう皆死んでいますね」
「趙高の粛正に楚王が残る人達を殺したので」
「それではですね」
「目や髪の毛の色のことは記録に残りますが」
 それでもというのだ。
「噂もです」
「記録に残るので」
「ですから」
 その為にというのだ。
「後世でもです」
「始皇帝が実は呂不韋殿の子かと」
「言われるでしょう」
「そうなのですね」
「そのことはです」
 どうしてもというのだ。
「止められません、誰にも」
「後世言われることは」
「そうです、おそらくずっと続くでしょう」 
 こう言うのだった、そしてだった。
 事実後世になってだ、司馬遷は史記を書く時に友人に話した。
「始皇帝の親ですが」
「言われていますね、何かと」
「秦王の子ではなく」
「呂不韋の子だったと」
「それで私はです」
 司馬遷はさらに話した、宦官にされて髭が抜け落ちてしまった顔で。
「両方書きます」
「両方ですか」
「始皇帝の紀ではです」
 こちらではというのだ。
「秦王の子と書きますが」
「それでもですか」
「呂不韋の列伝ではです」
 こちらではというのだ。
「呂不韋の子とです」
「書かれますか」
「そうします」
 こう言うのだった。
「両方書きます」
「どちらかわからないからですか」
「両方を書いて」
 そうしてというのだ。
「後世に伝えます」
「両方の話があると」
「どうもです」
 司馬遷は友人に考える顔で話した。
「始皇帝の目は青く」
「そうだったのですか」
「はい、それで髪の毛や髭は赤かったそうで」
「我々とは違いますね」
「西方のものですね」
「そちらから来た」
「秦は西にあったので」
「秦の王室にもその血が入っていてもおかしくないですね」
「そうです、ですが」
 それでもというのだ。
「呂不韋は韓か衛の生まれで」
「趙で商いをしていて」
「始皇帝の母親を召し抱えていたので」
 それでというのだ。
「西方の血を引いていたとはです」
「考えにくいですね」
「ですから私もです」
 司馬遷は自分の考えを述べた。
「始皇帝は呂不韋の子ではなく」
「秦王の子ですね」
「秦の王室の血を受けています」
「そうなのですね」
「そう考えていますが」
 それでもというのだ。
「両方の話があるので」
「どちらもですね」
「書きます、ですが始皇帝自身の書にはです」
「紀はですね」
「帝王のそれにはです」
「貴方の書かれているもので一番格が高いですね」
「はい、天子を書いた書なので」
 だからだというのだ。
 
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