火傷をしたけれど
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第一章
火傷をしたけれど
家が火事になった、それでだ。
小学五年生の佐藤智花は顔や背中に火傷の傷を負った、このことに両親は泣いた。
「女の子なのにな」
「とんでもないことになったわね」
サラリーマンの父の康友も妻でスーパーで働いている嘉久子も項垂れた、二人共優しい顔立ちをしていて中肉中背だ。母の髪の毛は黒く長い。
「火事になって」
「こんなことになるなんてな」
「けれど助かったから、皆」
智花の一つ上の姉の智子が言ってきた、大きな二重の目に細い奇麗なカーブを描いた眉と小さな唇とやや面長の顔は姉妹同じだ。二人共黒髪だが姉の方が髪の毛は長い。
「そのことだけでもね」
「それは言えるな」
父も確かにと頷いた。
「お隣さんの煙草の不始末の火事でもな」
「私達皆助かったし」
「火災保険も出るしな」
「皆生きてることは不幸中の幸いね」
「そうよ、よかったわ」
こう両親に言うのだった。
「本当にね」
「そうだな、それじゃあな」
「また四人で暮らしていきましょう」
両親も気を取り直してだった。
また一緒に暮らすことにした、だが智花は火傷の為に暫く入院することになった。それにやはりだった。
「火傷がな」
「背中もだけれど特にお顔が」
「かなり広いしな」
「そのことを言われたりしないかしら」
「どうにかならないか」
「本当にね」
頭を抱えていた、だが。
その二人にだ、病院の医師が言ってきた。
「実は保険も下りて手術も出来ますか」
「できますか?」
「智花の火傷の跡がなくなりますか」
「はい」
そうだというのだ。
「手術で」
「そうなのですか」
「あの娘の火傷の跡がなくなるんですね」
「そうなりますが」
二人に言うのだった。
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