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第百四十九話 文化祭の中のデートその三

「噛んだら頭を刺激してよくて」
「消化にもいいからってね」
「そう教えられてよね」
「結構噛むの」
「お食事の時はね」
「それでお蕎麦もね」
 この食べものもというのだ。
「ざるそばでもね」
「噛むわね」
「勿論熱いお蕎麦もね」
「鴨なんばとかね」
「私鴨なんば好きだけれど」
 この蕎麦もというのだ。
「けれどね」
「噛むわね」
「けれど東京は噛まないのよね」
「そうそう、あっちはね」 
 かな恵はその通りだと答えた。
「ほら、三年生で幸田さんって人おられるでしょ」
「自転車の部長さんの」
「あの人料理部の二年永井さんと幼馴染みでね」
「交際してるのよね」
「そうだけれどお蕎麦はね」
 今二人で話しているこの食べものはというのだ。
「噛まないでね」
「飲み込むのよね」
「もう絶対に噛まなくて」
 そうであってというのだ。
「喉越しをね」
「味わうのね」
「そうらしいわ、永井先輩もね」
「同じなのね」
「何でもあっちじゃお蕎麦はね」 
 東京の方ではというのだ。
「量も少なくて」
「そうして食べるのね」
「何でも軽食で軽く食べるものでおつゆもね」
「ああ、あっち辛いのよね」 
 一華はすぐにこう返した。
「東京のお蕎麦のおつゆって」
「おうどんでもね」
「墨汁みたいに黒くてね」
「それで辛いのよ」
「そうよね」
「ざるそばのおつゆはね」
 これはというと。
「あっちのお醤油で大根おろしのお汁らしいから」
「ああ、それは辛そうね」
 一華は話を聞いてすぐにこう察した。
「あっちのお醤油辛いのに」
「そこに大根おろしのお汁だから」
「辛いわね」
「そうした辛いおつゆだから」 
 それでというのだ。
「噛まないらしいのよ、しかもせっかちでしょ」
「江戸っ子ってね」
「もうすぐに食べてお店を出てね」
「次に動くのね」
「そうするから」
 だからだというのだ。
「尚更ね」
「噛まないのね」
「そうらしいわ」
 東京の方ではというのだ。
「お風呂だって熱いのに入って」
「すぐに出るのよね」
「そうした風だしね」
「幸田さんはそうした入り方なのね」
「そうみたいよ、永井先輩と一緒で根っからの江戸っ子だから」 
 かな恵はさらに話した。 
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