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故郷だったので

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第一章

                故郷だったので
 日本は地震が多い、それでだ。
 サウジアラビアから仕事で大阪に来ているアブダリ=ハミール口髭を生やした黒髪に黒い目で彫のある顔の長身で痩せた彼はいつも同僚達に言っていた。
「日本はいい国なのに地震が多くて」
「困りますよね」
「本当に多いですからね」
「何時何処で起こるかわかりません」
「どうしても」
「他の災害もありますし」
 オフィスでスーツ姿で話した。
「台風、大雨、大雪、津波、洪水、雪崩、竜巻と」
「もう何でもありますよ」
「雷も火事もあります」
「火山も噴火しますし」
「ない災害ないですね」
「そうですね、特に地震です」
 この災害だというのだ。
「サウジアラビアでこんなに起こることはないです」
「全くですよ」
「日本人の僕達も思います」
「災害が多過ぎると」
「地震も」
「困ったことがない国はないですね」
 ハミールは心から思ってこの言葉を出した。
「まことに」
「その通りですね」
「そんな国何処にもないです」
「どの国もそれぞれ何かあります」
「困ることのない国なんてないです」
 日本人の同僚達も言った、だがハミールは基本日本を平和で豊かで清潔で色々なものがある素晴らしい国だと思っていた、そうしてだった。
 働きつつ日本での生活を満喫していた、だがある日。
 滋賀県で地震があった、ハミールはその速報を聞いて仰天したが。 
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