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金木犀の許嫁

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第四十一話 デートの後の夕食その十二

「言われてみますと」
「そういうことです」
「どっちに行ってもですね」
「極端になりますと」
「同じになりますね」
「自分だけが正しいとなり」
「自分だけになり」
「そして羞恥心もです」
 それもというのだ。
「なくなり」
「そうしてですね」
「その結果です」
 まさにというのだ。
「人ですらなくなり」
「それで、ですね」
「人の最低の底を抜いて
 そうなりというのだ。
「餓鬼にもです」
「なりますか」
「そうなのです」
「餓鬼になったら」
 夜空は暗い顔で応えた。
「もうそれこそ」
「終わりですね」
「何処までも浅ましく卑しいですよね」
「それが餓鬼です」
 幸雄もその通りだと答えた。
「何があろうとも満足せず」
「餓えていて渇いていて」
「苦しみます」
「そうなりますね」
「人の姿をしていても」
 心が餓鬼になればというのだ。
「その卑しさを浅ましさ故に」
「それで、ですね」
「好かれることもなく」
 そうもなくというのだ。
「満足することもないので」
「満足しないと」
 佐京はそれならと応えた。
「幸せもです」
「感じないです」
「そうなりますね」
「満族してこそです」
 そうであってこそとだ、幸雄は話した。
「幸せもです」
「感じますね」
「ですから」
 それでというのだ。
「餓鬼になればです」
「幸せもですね」
「感じなくなり」
 そうであってというのだ。
「また出る言葉も」
「いいものじゃないですね」
「不平不満や悪口ばかりです」
「言いますね」
「そうもなるので」
 だからだというのだ。
「好かれることもです」
「ないですね」
「尚更です」
「ただ餓えて苦しんでいるだけですね」
「それが餓鬼です、餓鬼になることは」
 即ち餓鬼道に堕ちることはというのだ。
「地獄よりも辛いかも知れません」
「そうなんですか」
 白華は幸雄の今の言葉を聞いて考える顔になって言った。
「餓鬼になることは」
「地獄は鬼達に刑罰を受けますね」
「火の中に放り込まれたり針の山を登らさせらたり」
「文字通りですが」
 地獄だというのだ。
「浅ましく卑しく醜く」
「餓えと渇きにずっと苦しんでいて」
「忌み嫌われてです」 
 誰からもというのだ。
「不平不満ばかりでいい行いも感情もです」
「持たないので」
「ですから」
 そうであるからだというのだ。
「餓鬼になることはです」
「地獄に落ちるよりですね」
「辛いかも知れないので」
「極端にはならないことですね」
「そうです、そして」
 そのうえでというのだ。
「中庸を心掛けて下さい」
「バランス感覚ですね」
「それが大事です」
「そういうものですね」
「世の中は。覚えておいて頂ければ」
 今自分が話していることをとだ、幸雄は白華に話した。
「嬉しいです」
「幸雄さんは」
「そうです、覚えておいて頂けますか」
「はい」 
 白華だけでなく他の三人もだった。
 幸雄の言葉に答えた、そうしてカレイを中心とした夕食を食べて楽しんでいくのだった。夜空も佐京も神戸に帰っても学ぶことがあった。


第四十一話   完


                    2024・9・8 
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