社長の息子の行く店
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第二章
「僕も兄も妹達も」
「ああ、皆そうだね」
「そうした性格ですね」
「そうだね」
彼の兄ね会社を継ぐことになっている紘一と二人の妹の香澄と靡の話もした、三人共穏やかで真面目なことで知られている。
「皆ね」
「うちはそうなんで」
「吉野家も好きだね」
「はい、じゃあ今から」
「いただくね」
「牛丼を」
笑顔で言って実際にだった。
室生は牛丼を食べた、長谷川も一緒だった。そして牛丼を食べるとだった。
笑顔でだ、同時に食べ終えた長谷川に言った。
「やっぱり美味しいですね」
「ここの牛丼はね」
「何時でもです」
こうも言った。
「牛丼を食べられたら」
「それでなんだ」
「僕は満足です」
「そうなんだね」
「本当に料亭や高級レストランよりも」
そうした店で食べるよりもというのだ。
「僕はです」
「こうしたお店でだね」
「食べる方がです」
その方がというのだ。
「いいです」
「じゃあまた来るね」
「はい、しかし」
「しかし?」
「いつも悩むんですよ」
長谷川に少し苦笑いになってこうも言った。
「牛丼に生卵を入れるか」
「入れると美味しいね」
「特盛は絶対にしても」
それでもというのだ。
「お味噌汁も注文するか」
「生卵も入れるか」
「いつもです」
「悩むんだね」
「どっちかを頼んでも」
そうしてもというのだ。
「高くつきますから」
「そうだね、それでだね」
「いつも悩みます」
「それわかるよ、しかしね」
笑ってだ、長谷川は室生に言った。
「もうそう言うのは贅沢じゃないね」
「その時点で、ですか」
「こうしたお店でね、しかしいいと思うよ」
「牛丼を食べる時に悩むのは」
「そのこともね」
「そうなんですね」
「少なくとも贅沢で横柄な人よりずっといいよ」
将来会社の経営に携わるならとだ、こう話してだった。
そうしてそれぞれ勘定を済ませて店を出た、室生は後で実際に会社の経営陣に入ったが親兄弟は皆穏やかで真面目で確かな経営が出来た。そして吉野家等で食べ続けたのだった。
社長の息子の行く店 完
2024・11・15
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