| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/WizarDragonknight

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

最高傑作

「君ともよく会うが……俺のファンかな?」
「……」

 パピヨンの軽口を受け流しながら、フロストノヴァは歩む。
 相変わらず彼女が一歩足を踏み出すごとに、その周囲に白い氷が広がっていく。
 それはひなが「しゃむい……」と体を震わせるほどだが、フロストノヴァは目線をひなへ下げ、彼女から離れるような足取りを取った。

「……フロストノヴァ、お前何でここに?」

 彼女はビーストの質問に答えることなく、パピヨンへ目を当てる。

「ん? 俺と戦おうというのか? ゲートキーパー」
「ここには、戦士でない者が多い。巻き込むな」
「ふむ。聖杯戦争の参加者は、一般人の命を魔力として吸収し、強くなると聞いていたのだが……これには認識の違いでもあるのかな?」
「戦士でない者に手を出す気はない」
「おやおや……アウラ同様、俺も嫌われてしまったというか」
「聖杯戦争の参加者を好むわけがないだろう」

 フロストノヴァは吐き捨て、腕を振るう。彼女の氷弾が、パピヨンの蝶たちの体を貫いた。

「へえ……なら改めて、俺の敵としてよろしくしようか?」
「……」

 フロストノヴァは、その立ち位置を少し動かす。
 あたかもビーストとひなを庇うような位置に、ビーストは目を疑った。

「お前、何のつもりだ?」
「……」

 だが、フロストノヴァは答えない。
 一瞥をビーストとひなに投げるだけで、彼女はパピヨンへ手を向けた。
 そして地を走る氷山。次々に地面から突き立っていくそれに、パピヨンは大きくジャンプして退避。
 空高く飛翔し出すパピヨンを追いかけるように、氷はどこまでも伸びていく。

「甘い!」

 パピヨンはそう叫ぶと同時に、自らの体を蝶の大群に纏わせる。
 すると、氷が大軍を貫いたところで、霧散するだけ。
 そしてそれはフロストノヴァの背後に集約し、パピヨンの姿となると同時に蝶を放つ。
 蝶はフロストノヴァに接触すると同時に爆発するが、フロストノヴァを守るように生成された壁を破壊することは適わなかった。

「やはり硬いな」
「……」

 パピヨンの軽口に対し、フロストノヴァの返答は沈黙。
 ビーストはこの間に、ひなだけでも逃がすことは出来ないかと様子を窺っていると。

『フレイム スラッシュストライク』
「喝っ!」

 突如、頭上から二つの破壊の力が激突する。
 ウィザードとデイダラ。二人の遠距離攻撃が、氷のドーム天井付近で爆発。ドームの一部が欠ける。
 その余波は、ビーストたちの沈黙を打ち破り、頭上へ目線を上げさせた。
 氷のドーム、その頂上付近では、デイダラの鳥に飛び乗ったウィザードが、そのまま蹴りを放っていた。
 だが、デイダラは身のこなしとともにそれを回避し、飛びのく。同時に鳥が急旋回し、ウィザードを振り落としていた。

「喝!」

 直前までの会話は聞こえなかったが、デイダラのその声だけはハッキリと地上まで聞こえてきた。
 ウィザードへの追撃として放たれた粘土が爆発し、より勢いをつけて彼を地面に叩き落とす。
 轟音を立てて地面に追突したウィザードへ、さらにデイダラの爆発が続く。

「ぐああああっ……!」
「ハルト!」

 呻くウィザードへ、更に大型の鳥が向かってくる。
 そしてその位置は、ビースト、及びひなのすぐそばでもあった。あの鳥が爆発すれば、間違いなくひなも巻き込む。
 だがその直前で、氷がそびえ立つ。
 町中に出現した氷山は、粘土を突き刺し、小さな爆発に収めてしまう。

「フロストノヴァ……!」
「何で助けた?」

 ウィザードもまた、フロストノヴァの存在に顔を向けている。
 だが、フロストノヴァは何も応えない。
 ウィザードたちを一瞥し、すぐさま頭上のデイダラを見上げる。

「あれは……」
「へえ、新しい参加者か。お前が噂のゲートキーパーか? うん」

 デイダラもまた、フロストノヴァを見下ろす。

「色々と聞いてるぜ? この氷遁も、お前の術なんだろ?」
「……」
「クールだねえ……いいぜ、来いよゲートキーパー。お前の氷遁とオイラの爆遁で勝負だ! うん!」

 デイダラはそう言って、予め作っていたのであろう人形を取り出す。
 第一印象は、埴輪。翼のような両腕で自身を抱きかかえたようなフォルムの人形は、空中へ放り投げられると放物線を描きながら、フロストノヴァの頭上へ舞い上がる。
 同時に、人形の姿が白い煙に包まれる。すると、その大きさは人間の数倍の大きさに巨大化。

「何じゃありゃあ!?」

 太陽すら見えなくしてしまうような大きさに、ビーストは悲鳴を上げた。
 人形は数秒だけ天空に鎮座していたが、やがて重力の力により地表へ向けて落下。
 徐々に大きくなっていく粘土の隕石に、流石の子供たちも好奇心以上に警戒心が湧きだしたのだろう。警戒はやがて恐怖へと変わっていき、最後はパニックへとなる。

「オイラの十八番(オハコ)だ、特と味わいやがれ! うん!」
「くっ……!」

 巨大な人形が迫る直前、フロストノヴァはさらに巨大な壁を生成する。氷はより高く、より厚く形成されていく。やがて、既存の氷ドームの補強ができたところで、人形が氷と接触。

「喝ッ!」

 凄まじい音量とともに、人形は爆発した。
 それは、これまでデイダラが作りしてきた鳥たちとはけた違いの規模で、氷の壁を破壊、地表へ凄まじい衝撃を与える。
 そして粉々になった氷の破片は、今や一転、人々を襲う刃と化していた。
 人々の避難は完了していない。保育園にいる親子や職員を狙う死の雨が、地上へ降り注ぐ。

『チョーイイネ スペシャル サイコー』

 だが、銀の雨を、炎が瞬時に圧し飛ばす。
 ウィザードの胸から突き出たドラゴンの息吹が、一気に氷を蒸発していたのだ。

「ハルト!」
「コウスケ、皆を守って!」
「皆まで言うな!」

 ビーストはハヤブサのマントを振り、オレンジの風を吹き鳴らす。発生した突風が、ウィザードが打ち漏らした氷を吹き飛ばしていく。

「何だあの威力……!? 形状が凝ったものだと、威力も跳ね上がんのかよ!」

 ビーストは吐き捨て、即座にダイスサーベルを回す。
 すでにデイダラは新たな人形を作り上げようと手を伸ばしている。そのポーチに手を入れ、その中にあるのであろう粘土を操作しているのだろう。

「おい……オイオイオイ……!」
「あの表情、次の爆発も絶対にこだわりの逸品だろうよ」

 ウィザードの嫌な予感は的中してしまった。
 ようやくデイダラが掌から生成したのは、まさに彼が言うところの芸術作品。
 左右に鋭い針のような手を円形に造形され、中心の胴体は月のように大きくカーブしている。
 知る人が見れば、それは芸術的造形物、太陽の塔を思わる。煙と共に巨大化し、太陽の塔は意思を持つかのように地表へ落ちていく。

「おっと。美しいものならば、俺の蝶も負けてはいない」

 だが、パピヨンの蝶がそれを喰い尽くすように群がっていく。蝶たちは少しずつ粘土を破壊しようとしているのか、白い粘土を黒く染めるように接着していく。
 だが。

「馬鹿め……対策しねえわけねえだろ! うん!」

 デイダラは群がる蝶たちを見下ろし、笑みを浮かべた。

「アートには進化が必要だ。オイラの芸術は、この世界に来てからも当然進化した。そうなれば、無論オイラが目指すべき究極芸術もまた変わる。よりアーティスティックに、よりダイナミックに! 芸術は爆発だ!」

 デイダラが長々と語るごとに、人形の動きに変化が生じていく。
 人形が突如、その両腕を大きく広げたのだ。先細った先端が特徴の筈のその腕は、どこに隠していたのか、翼のように幅も広い。

「粘土変化の術!」

 さらに、デイダラが唱える。
 すると、再び人形が煙に包まれる。
 そうして煙が晴れれば、人形の形状はまたしても変化していた。
 巨大な蝶の翼がついた太陽の塔。太陽の塔の本来細い腕も、蝶の足に合わせて六本に増加しており、見るだけで嫌悪感を抱かずにはいられない。
 有機物と無機物が合わさったデザインに違和感を覚えながら、ビーストはハヤブサの指輪をダイスサーベルに差し込む。

『5 セイバーストライク』
「うっし! 悪くねえ!」

 放たれた五体のハヤブサ。
 それは、これまでと同じように蝶の爆発物である人形を食らい尽くそうとするが。

「無駄だ。オイラの芸術は、そんな鳥どもじゃあ止められねえ」

 デイダラが笑みを浮かべる通り、蝶人形はビーストが召喚したハヤブサたちをものともしない。
 翼を大きく振るい、生じた風によりハヤブサたちが吹き飛ばされ、次々に消滅していく。

「何!?」
「コイツはオイラのチャクラレベルC3を練り込んで作り上げた特大芸術だ! しかも、パピヨンの芸術を取り込んで強化してある特別製! この場一体を無に帰し、その爆発は未来永劫語られるであろう!」

 デイダラが宣言すると同時に、蝶人形は翼を大きく広げる。
 すると、その全身より無数の蝶の人形が湧いて出てくる。それは空中を埋め尽くし、地上の建物を、そして子供たちを狙ってくる。

「ふざけるな……! そんなもの、この世界のどこにだってさせはしない!」

 ウィザードはそう叫び、ウィザーソードガンを打ち鳴らす。
 彼の魔力が込められた弾丸は、それぞれ蝶の粘土にそれぞれ命中、小さな爆発の中に消えていく。
 同時に、ウィザードは左手の指輪を外す。彼の左手に輝いていた赤い輝きは、瞬時に黄色い煌めきに差し替えられた。
 それは、大地の力を宿した指輪。ウィザードは即座にウィザードライバーを操作し、それを発動させた。

『ランド ドラゴン』

 そして発動する、琥珀の魔法陣。
 それは、ウィザードの赤い炎の魔力を、黄色の土へと変換していく。土砂となった魔力はドラゴンを形作り、ウィザードの体を琥珀に染め上げていった。

『ダンデンズンドゴーン ダンデンズンドゴーン』

 その深紅のローブは、琥珀の魔力を帯びてエレメント変化。
 その名は、ウィザード ランドドラゴン。

「土のウィザードの、ドラゴン版か!」
「チャクラが火遁から土遁に変わった……本当に便利な術だな、うん」

 ウィザードの変化を見下ろしていたデイダラは、軽く粘土を放つ。
 彼の頭上から注がれる粘土の雨。
 蜘蛛となったそれは、ウィザードの体に次々に接着していく。

「変化したばかりで悪いが……芸術は、爆発だ」
「!」

 ウィザードが反応する隙間さえも与えない。
 デイダラが手で印を結ぶと、ウィザードに張り付く蜘蛛たちが爆発する。
 モクモクと立ち込めていく煙。
 だが。

「ハルト、お前……」
「うん。全然問題ない」

 煙の中心には、微動だにしないウィザードの姿があった。
 これまでも、土のウィザードは防御能力に優れていた。それでも、参加者達の攻撃を軽減し切ることは難しかった。
 だが今、ファントムの力を合わせた今のウィザードには、デイダラの小型爆弾は意味をなさない。
 それどころか、小さな爆発物程度では、歩行の邪魔にもならない。

「チッ」
「ならば、これならどうかな?」

 続くパピヨン。
 フロストノヴァの頭上を飛び越え、彼女の攻撃が届かない位置から無数の蝶を放つ。
 しかも蝶たちは、それまでの小さな大きさではない。集い、群がり、巨大な蝶となったそれらが、爆発を携えてウィザードへ迫る。

「蝶☆ニアデス・ハピネス!」

 だが。

『ディフェンド プリーズ』

 発動した、防御の魔法。
 その琥珀の魔法陣は、ウィザードだけではない。
 今この場にいる人々___爆発物の危険に晒された人々の足元に生成される。
 大地より築き上げられる、大地の壁。それは、強化された蝶の爆発さえものともせず、眼鏡な壁としてその存在感を保っている。

「これはすごいな……」

 ウィザードは長らく使ってきた防御の指輪を見下ろしている。

「これなら、戦いの巻き込みもかなり減らせる……!」
「……なあ、オレここ最近の戦いのインフレに置いてかれてねえか?」

 ビーストは思わず、これまで見知った彼の防御魔法の威力を比較しながら呟いた。
 だが、爆発が進まないデイダラはそれを良しとしない。

「やるじゃねえか! ウィザード。なら、オイラのこの究極芸術で一気にアートにしてやるぜ! うん!」

 デイダラがそう叫ぶのと同時に、蝶人形は大空へ飛翔。
 翼で自身の体を抱き締め、そのまま地面に向かって落下してくる。空気を切る音が地上にも届き、誰も彼もが天上の爆発物に目を奪われている。

「現時点でのオイラの究極芸術だ。次回作ももっと凄いのを見せてやるから、乞うご期待! うん!」
「いい加減に……」
『チョーイイネ グラビティ サイコー』

 それに対し、ウィザードはすでに重力の魔法を発動していた。
 その効力は、ビーストも十分承知している。魔法陣の影響内にある相手の動きを重力で封じるのだ。

「しろおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 ウィザードがその手で地面を叩く。
 すると、魔法陣が彼の意思に沿って地面に落ちる。同時に、魔法陣が触れたもの___巨大人形、鳥、蝶、デイダラ、パピヨン、そして周囲に残った氷。
 この場の芸術家たちを、圧倒的重力の中に閉じ込めた。
 氷が瞬時にぺしゃんこになり、宙にいるパピヨンとデイダラ及びその乗り物の鳥が地に落ちる。

「す、すげえ……」

 これまでの重力の魔法とは比にならない力。だが、肝心の蝶人形をこれ以上地上へは近づけさせるわけにはいかない。
 だが、見上げたビーストは再び唖然とした。目下の脅威である蝶人形は、逆にぐんぐんと高度が上昇していくのだ。

「あれは……!」
「重力の魔法、この形態と一番相性がいいみたいだ」

 ビーストのはてなマークに、ウィザードが答えた。

「どういうことだ?」
「本当の意味で重力をコントロールできる。つまり……」

 ウィザードは、伸ばした手を地面に向ける。
 すると、蝶人形が彼の手に従い、今度は地表に向けて進行してきた。
 爆発物が想定以上に接近してきたことを見て、ビーストは子供たちとともに悲鳴を上げた。

「お、おいおいおい!」

 重力の魔法が、蝶人形の動きを完全に支配した。ここまで来れば、彼が今指輪を外したとしても、残りは慣性の法則により、地上へ……ウィザードへ激突することは間違いない。
 だが指輪を外したウィザードは、別の指輪を取り付けていた。

『チョーイイネ スペシャル サイコー』

 琥珀色の魔法陣が、再び大地の力をウィザードに与える。
 無数の土砂がウィザードの腕に集約。それはやがて形となり、ドラゴンの鉤爪(ドラゴヘルクロー)をウィザードの両手に与える。
 金色の爪が光を放ち、そのまま魔力がウィザードの全身から溢れ出す。

「終わりだ……!」

 魔力はそのまま、ウィザードの両手に集っていく。やがて琥珀は金となり膨大な力となる。

「だあああああああああっ!」

 ウィザードはそのまま、ドラゴヘルクローの腕を振るう。
 すると鉤爪が描いた弧は、そのまま空中を直進。
 地上へ向かってくる巨大な蝶人形に命中、その体を貫通させた。
 蝶人形は、数秒空中にとどまっていたが、やがて左右の体に切れ込みが入り、分裂。空中にて、大きな爆発となった。

「バカな……! オイラの究極芸術が!」

 嘆くデイダラ。
 哀れ彼の芸術作品は、すでに別のエネルギーを受け、虚空の塵と化している。
 頭を抱えたデイダラは、ウィザードを睨む。

「やってくれたな、うん。お前には今度、改めてオイラの芸術を味合わせてやるよ」

 デイダラは次に、パピヨン、彼と対峙するフロストノヴァにも視点を当てている。

「お前たちも、オイラの芸術を味あわせてやるよ。特にゲートキーパー」

 芸術家の指名に、ゲートキーパーは目を細めた。

「戦いたいのなら、相手になろう。私の芸術とやら(・・・・・)になる覚悟はあるのだろうな」
「ふん。氷遁使いの対策用の芸術を開発しておいてやるぜ、うん」

 デイダラは鼻を鳴らし、手を組み合わせて印を組む。
 すると、彼の隣に倒れる大型の鳥が爆発。
 だが、それまでの爆発に比べると、その規模はあまりにも小さい。爆発が晴れると、デイダラの姿もない。逃げる目くらましだということは明白だった。

「ふむ。逃げたか……」

 パピヨンは相変わらずの姿勢で、それを眺めている。

「まだやるのか!?」

 ビーストはひなから離れないまま、彼へ警戒の目線を向ける。
 パピヨンは強張った表情のまま、ビーストを睨んだ。

「君一人を倒すことなど造作もないが……今はフロストノヴァも君たちの味方をするつもりのようだ。あえて分の悪い戦いに身を乗り出すほど馬鹿じゃないよ」

「だったらもう帰ってくれない?」

 ウィザードの手からドラゴヘルクローが消滅する。

「あと、聖杯戦争からも手を引いてくれると助かる」
「残念ながら、こちらにも聖杯でなければ叶わない願いがあるのでね」
「お前の願いって、何だ……?」

 ウィザードはじっとパピヨンを睨む。

「こんな、聖杯戦争に関わってまで叶えたい願いって、何なんだ……!?」
「それを言ってどうする? お前が代わりに叶えてくれるのか?」
「……」
「ふん」

 鼻を鳴らしたパピヨンは、その背に蝶の翼を広げた。

「また会おう、ウィザード。ビースト。そしてフロストノヴァ」

 パピヨンの目が血走る。

「そろそろ監督役を見つけて、マスターにしてもらわないとな」
「お前、前も響やキャスターに結構コテンパンにされてんじゃねえか。何で諦めねえんだよ」

 ビーストの言葉に、パピヨンは「愚問だな」と返した。

「どうしても叶えたい願いがあるからだ。お前たちと同じようにな」
「オレの願いは多分聖杯が早合点しただけなんだがな」

 ビーストはぼやく。
 一方、ウィザードは何も言わない。握り直したウィザーソードガンの銃口をパピヨンへむっける。

「俺はこれ以上、参加者を増やしたくない。前言ったかもしれないけど、お前の参加意欲を消すまで徹底的に痛めつける必要だって出てくる」
「ならばもう一度言おう。俺を傷付ける口実ができてよかったな、偽善者」

 パピヨンの口角がより吊り上がる。
 彼の体が、蝶に包まれていく。包まれた箇所から徐々に飛び去って行き、彼がこの場からいなくなることが分かった。
 だが、完全に危険が無くなる前。
 ビーストは、彼の宣言を確かに聞いた。

「次こそ、俺のサーヴァントを合わせてやろう」 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧