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とある3年4組の卑怯者

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166 暖炉

 
前書き
藤木は堀の旧友・雪田みきえに自分のスケートスキルを見せるが、その帰りに城ヶ崎とたかしがみどりの学校の小倉こうへいと熊谷まなぶに暴行される様子を目撃し、助けに行こうとする。激しい喧嘩の中、熊谷がたかしの犬・タロを川に投げ捨てた事で堀が自ら飛び込んでタロを助けようとした!! 

 
 たかしは川に流されるタロと堀を追いかけていた。一方、堀は何とかタロを掴まえ、水面から離した。
「はあ、はあ・・・」
 幸い、下流とはいえ、簡単には出られない。堀は自分まで沈まないように足をばた足させるしかなかった。
「だ、誰かー!助けてーー!!」
 たかしは助けを求めた。その時、遠くからボートの影が見えた。たかしはそのボートの所まで全速力で走った。
「すみませーん、助けてください!!」
「おや、君は確かまるちゃんの友達じゃないか」
 ボートに乗っている人物は巴川を綺麗にしている川田守だった。川田はボートに乗って河川内のごみを取り除いている所だった。
「はい、僕の犬とあの子を助けてください!」
 たかしは泣きながら川田に助けを促した。川田はたかしの指差す方向を見ると一人の少女が子犬の抱えてもがいているのが見えた。
「わかった。今すぐ行くよ!!」
 川田はボートを堀の所へと近づけた。
「君、大丈夫かい!?」
「はい、まずこの子を・・・!!」
 堀は川田に子犬を渡し、次に自分を引き上げてもらった。
「はあ、はあ、ありがとうございます・・・」
「一体どうしたんだい?」
「この子の犬が乱暴な子に川に投げ入れられたんで・・・、助けようとしたんです・・・」
 堀は体を震わせながら答えた。
「そうだったのか・・・。大変だったね」
 二人と一匹はボートから降りた。
「君、ごめんよ、僕の犬を助けてくれて・・・。川田さんもありがとうございます・・・」
「ううん、いいのよ。ウチの学校のあいつらが一番悪いんだから・・・。はい、確かタロって名前よね」
 堀はタロをたかしに差し出した。丁度、藤木、城ヶ崎、みどり、みきえにベスもその場に追い付いた。みどりは堀が脱ぎ捨てたコート、マフラー、カーディガンを抱えていた。
「はあ、はあ、西村君、堀さん、大丈夫かい!?」
「うん、川田さんが助けてくれたんだ!」
「君は藤木君じゃないか。この子も君達の友達かい?」
「はい、本当にありがとうございます。堀さん、大丈夫かい?」
「う、うん・・・」
 しかし、堀は全身ずぶ濡れでかなり寒そうにしていた。
「か、風邪ひくといけないわっ!私の家、暖炉があるからそこで暖まってっ!!」
「え?うん・・・」
 城ヶ崎は堀を自分の家まで連れて行くことにした。
「川田さん、ありがとうございました」
「うん、君達も気を付けるんだよ」
 藤木達は川田と別れ、皆で城ヶ崎の家へと向かった。
「あ、あの、貴女は姫子さん?」
「あれ、みどりちゃん・・・?」
 みどりと城ヶ崎はお互いを確かめ合った。
「え!?君達知り合いなのかい?!」
 藤木は驚いた。何しろみどりと城ヶ崎がお互いの名を知っていたからである。
「はい、同じ幼稚園だったんです。あの時の私は泣き虫で誰も遊んでくれなくて、その時、私と仲良くなって下さったのが姫子さんだったんです・・・」
「そうだったの・・・」
「でも学校が別々になると私はまた一人ぼっちになってしまったんです。堀さんと会うまでは・・・」
「吉川さん・・・」
「ええと、貴女が堀さんだっけ?」
「そうよ、それでこっちが私が転校前の学校の友達よ。たまたま清水に遊びに来てるの」
「雪田みきえっていうんだ。そう言えば君もこずえみたいに凄い美人だね!」
「え、そうかしら・・・?」
 城ヶ崎は美人と言われて照れた。
「そうだ、みどりちゃんはいつ藤木と知り合いになったの?」
「前にスケート教室で、私と藤木さんの学校が同じ日になってその時にスケートする藤木さんが好きになって・・・。それでお友達になる事ができたんです」
(み、みどりちゃん・・・!!)
 藤木はみどりの告白で恥ずかしくなった。
「藤木をっ!?」
 城ヶ崎は驚くしかなかった。
(城ヶ崎・・・、そうだよな、誰だってこんな卑怯者をよく好きになれるよなって思うよな・・・)
 藤木はあたふたするしかなかった。しかし、城ヶ崎が驚いた理由はそこではなかった。
「と、兎に角急ぎましょう!犬さんも寒さで凍えてしまいそうです!」
みどりが促した。

(それにしても姫子さんもまる子さんや藤木さんと同じ学校だったなんて・・・。どうして気付かなかったのかしら・・・)
そしてみどりは過去の自分を思い出した。
(藤木さんの事を好きになるまではまる子さんくらいしか友達がいなかったのに。そういえば幼稚園に行っていた頃、一人気が強い女の子がいて、その人に何かとお世話になっていた事がありましたね・・・)

 藤木、みどり、たかし、城ヶ崎、堀、みきえとタロ、ベスは城ヶ崎家に到着した。
「只今っ!ママ、大変よっ!私と西村君が隣町の子に絡まれてそれで西村君の犬がそいつらに川に投げられてそれを助けてくれた子がずぶ濡れになっちゃったのっ!!暖炉で暖めてあげてっ!!」
「え!?分かったわ!皆入って」
「おばさま、御無沙汰しております」
 みどりが城ヶ崎の母にお辞儀をした。
「え?貴女は確か・・・」
「姫子さんの幼稚園の時の友達の吉川みどりです」
「ああ、みどりちゃん、久しぶりね・・・」
「すみません、私の友達が姫子さんのお友達の犬を助けようと川に飛び込んだんです」
「そう、みどりちゃんのお友達だったのね」
「はい・・・」
 堀は城ヶ崎の母からタオルを受け取り、それで濡れた服や体を拭いた。そして、暖炉で体を暖めて乾かした。服も暖炉で乾かしたが、下着は城ヶ崎の物を借りる事にした。暖炉の部屋にはみどりやみきえなど女子がいたが、藤木とたかしは男子であるためかさすがに部屋のドアの外側に立っており、中は見ないようにしていた。また、ベスとタロは喧嘩のせいで怪我をしたところがあり、城ヶ崎の父が応急処置をし、二人はそれを手伝う事にし、タロも暖炉で暖めさせた。 
 

 
後書き
次回:「今後(これから)
 城ヶ崎の家に向かった藤木達。堀はたかしや城ヶ崎の犬を見てある思い出を語りだす。それに対したかしはもう一つの恋をする。その後、笛吹へ帰るみきえを見送る藤木達はそれぞれの次なる目標を顧みる・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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