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第百四十八話 本物その一

                第百四十八話  本物
 かな恵達のクラスのお化け屋敷の準備は無事に整い文化祭のはじまりを迎えた、かな恵は古典的な日本の幽霊、白い着物に頭に三角巾があるその恰好で同じ格好の一華に言った。
「怖い?」
「暗がりから出たらね」
 一華は笑って答えた。
「怖いわね」
「今は怖くないの」
「全くね」
「そうなのね」
「だって明るいから」
 今自分達がいる場所はというのだ。
「それじゃあね」
「怖くないのね」
「暗いところからいきなりよ」
「うらめしや~~って出て来るから」
「怖いからね」
 幽霊はというのだ。
「明るい場所で普通に立っていてもね」
「怖くないのね」
「メイクもまだだし」 
 見ればそうだった。
「そもそもかな恵って怖いキャラじゃないから」
「幽霊みたいに」
「明るくてね」
 そうした娘でというのだ。
「それでね」
「怖くないないのね、幽霊になっても」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ここに平家の怨霊が出たら」
「耳なし芳一の」
「私全力で逃げるわ」
 一華は真顔で言った。
「出て来た瞬間にね」
「平家の怨霊ね」
「冗談抜きで怨み飲んで死んでるから」
「壇ノ浦で」
「だからね」
 そうであるからだというのだ。
「出て来たらね」
「逃げるのね」
「それか出て来るってわかっていたら」
 その場合はというと。
「体中にお経書いてもらうわ」
「芳一さんみたいに」
「耳にもね」
 小説では書いていなかったが為に引き千切られたその部分もというのだ、これが小説の題名にもなっている。
「ちゃんとね」
「書いてもらって」
「それでね」 
 そのうえでというのだ。
「じっとしてるわ」
「そうしないと駄目よね」
「平家の怨霊だったらね」
「そうよね」
 かな恵も確かにと頷いた。
「洒落になっていないからね」
「さもないと平家物語言わされて」
 その作品の中の様にというのだ。
「最後は祟りでね」
「やつれて死んじゃうわね、ただね」
「ただ?」
「うん、このお話って悲しいよね」
 かな恵は一華にそうした顔になって述べた。
「何か」
「そうね」 
 一華も確かにと否定せずに応えた。 
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