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仮面ライダーアルカナ

作者:地水
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第2話:思い立ったが凶日

―――アルカナタロット。


それは、22枚の特殊な現象を引き起こす力を秘めた神秘のタロットカードの総称。
アルカナカードの所有者は人々に降りかかる『災いの存在』からの魔の手を払い除け、人知れず影ながら平和な世界を守っていた……。

そして現代にてアルカナカードを受け継ぐのは一人の青年。
御崎統人(みさき・とうと)』、またの名を『仮面ライダーアルカナ』。

人を襲って不幸へ引きずり込む謎の怪人"ドラウ怪人"と戦い、愛と平和を守り抜く。

彼の戦いはいまも続いている。




――――



「うーん……そうだね、端的に言えばその起業は今すぐやめたほうがいいね」

「なにぃ!?」

「信じるか信じないかは勝手だけどね」

東京、とある街路の広場、そこに青年・御崎統人が客相手に占いをしていた。
相手は起業家を目指す青年……名前は日向夏樹。
彼を占っていた統人は、結果を伝えるが相手の反応はよろしくない。

「時期のタイミングがよくないってこと。やるにしてももうちょっと下準備は必要だってこと」

「ふざけんなっ!ここで逃したらいつやるってんだ!」

「まーまーまー、悪いことは言わないからやめたほうがいいって!占いにもそう出てるから!」

怒りを露にする日向は、統人へ向けてにらみつける。
なんとかして宥めようとする統人だが、未だに治まらない。

「もう知らん!もういい!もう二度と占ってもらわんぞ!」

「あの!占い代!!」

「もってけドロボー!!」

「がふん!!」

顔面に占いの代金(札束)を叩きつけられ、変な悲鳴を上げる統人。
何故正しく占ったのにあれほど怒るのか……首をかしげながらお代を受け取る。
そこへ統人に声をかける存在がいた。

「まーた、お客さん怒らせちゃったね」

「あぁ、真依ちゃーん!やっぱり君の美貌は心癒されるよー!」

「ああもう近づかないで!褒めながら来るな!」

そう言って甘い言葉で近づいてくる統人を手で押さえる元気そうな少女……星詠真依。
以前スパイダードラウに襲われていた所を助けられた彼女は、以降なんだかんだで統人とのつるんでいた。

「というかさっきのあの人の占い」

「んー?あの起業家さんの事?」

「もうちょっと言い方はなかったの?物は言いようっていうでしょ?」

真依の言う通り、占いを求めた相手に結果をやんわりと伝える方法はいくらでもあった。
彼女の質問に関して、統人はいつもとは違う真剣な表情に変わり、こう答えた。

「そいつはできないな。なんたって占った結果の意味合いが変わってくるからね」

「意味合いが?」

「そう、相手の都合のいいように言っちゃうとその結果が変わってしまうこともあるんだよね。だから占うオレがむやみ勝手に都合のいいように変えてしまうと色々ダメになっちゃうのさ」

「え、変わっちゃうの!?」

「まあね……ある意味、占いってのは占う相手と占ってくれる相手の真剣な契約だから。だからあやふやな事もいえないのさ。占うことを正確に読み取って、ちゃんと伝えなければいけない」

普段おちゃらけた雰囲気の彼が語る占いについての真剣さ。
その言葉に偽りはなく、真依は占いを行っている統人について少し見直した。

「でもって、まだまだ若造じゃ説得力ないしこんなものかー……やっぱり僕は真依ちゃんで慰められたい」

「どさくさに紛れてするなぁ!」

抱きつこうとする統人を、顔をつかんで阻止する真依。
いつもの日常が繰り広げられようとしていた……そんな時だった。
平和な日常を裂くように悲鳴が聞こえてきたのは。


「うわあああああああああ!!!」


「あれ、今のってさっきの起業家さんの声じゃ!」

「ありゃりゃ【その起業は今すぐやめたほうがいい】って言ったのに」

驚く真依の横では、やっぱりかと言わんばかりに苦笑を浮かべる統人。
大方、日向が今すぐにでも何かの起業をやろうとした結果なのだろう……。
そう推測した統人は先程彼から受け取った札束を手にしながら呟いた。

「さてと、受け取ったお代分は全部きっちりかっちり払わないと」


―――――


先程統人に占ってもらった日向夏樹。
その彼を取り囲むように鎧の兵士達・タロンが取り囲んでいた。
落ち葉の形にもスペードにも見える仮面をつけたタロンは剣を彼に突き付けている。

「な、なんなんだよこいつら!?」

タロン達は標的である日向を逃げられないように取り囲み、剣先を向けている。
頭上を見れば、そこには信号機にぶら下がる怪物の姿があった。
猿に似た外見、青い痩躯と長い尾を持ち、鋭い目つきが日向を捉えている。
猿のドラウ怪人……『モンキードラウ』は、日向に対して言い放つ。

『お前の死を以てお前を不幸にする』

「死ぬ……?俺が?嫌だぁ!まだ、まだ死にたくない!俺には夢が!」

『御託はいい……シャラァ!!』

モンキードラウはその両手を信号機から手放し、上空から襲い掛かる。
日向は決死の想いで避けるも、アスファルトの地面を砕け散るほどの腕力の余波が襲い掛かり、数メートルほど吹っ飛んで地面に叩きつけられてしまう。
激しい痛みと朦朧する意識が自身が死に近づいている予感を克明に実感させる。

「痛い……痛い……!」

『お前、不幸。お前もっと不幸にする』

迫りくるモンキードラウ、日向との距離をあと数メートルまで迫りつつある。
もはやこれまでなのか、日向が迫る死におびえる中、一つの爆音が聞こえてくる。


―――ブォオオオン!!


突如響いてきたバイクの排気音と共に、現れたのは二輪バイク型専用マシン"フォーチューンホイールダー"。
フォーチュンホイールダーはその前輪でモンキードラウを跳ね飛ばし、日向の目の前で止まる。
そこから降りてきたのは、統人と真依の二人だった。

「統人!あれってドラウ怪人だよね!?」

「もしかしなくてもドラウ怪人だよ」

「お、お前達は……」

突如現れた二人を見て、驚く日向。
そんな彼を見やると、統人は笑顔で手を指し示した。

「はあい、俺の言ったとおりになっただろ?」

「そ、それは……」

「まあまあ気にしないで。ほら、真依ちゃん、彼を安全な場所までお連れして」

「うん、わかった!」

日向は真依に連れられ、別の場所へと避難していく。
統人は二人の姿がこの場からか離れたことを確認すると、腕を回しながらモンキードラウ達の方へ向き直る。

「さーてと、いつもの変身タイムと行きますか」

統人は奇妙な魔法陣が描かれたバックル"タロットベルト"を腰に装着、さらにカードホルダーから取り出した愚者(ザ・フール)のアルカナカードをベルトに翳した。

【The・Fool!】

「―――変身」

【Reverse・Fool!】

タロットベルトから放たれた等身大の光のカードが浮かび上がって目の前に展開、光のカードは統人の身体を変化させていく。
黒いボディに灰色の装甲と変わり、やがて変化を終えて現れたのは……金色の複眼を持った仮面の戦士。
『仮面ライダーアルカナ フールフォーム』の登場である。

「さてと、いっちょ派手に暴れますか!」

『かかれぃ!かかれぃ!』

『グォォォ!!』

モンキードラウの号令と共に、剣を手にして襲い掛かるタロン達。
タロン達の攻撃を素早い身のこなしで避けながら、アルカナは一枚のカードをベルトに翳した。

「そうだね、今回はこれでいくか」

【The・Death】

【Reverse・Death】

アルカナの目の前に死神をイメージした大鎌型武器・デスサイザーが出現。
デスサイザーを手にしたアルカナはそれを大きく振りまし、タロン達を切り裂いていく。
一瞬のうちに片づけられたタロン達を見て、モンキードラウはアルカナに殴り掛かる。

『次は、俺だ』

「はぁい、お猿さん。相手してやるからかかってきなよ」

デスサイザーを肩で担ぎながら、アルカナは挑発をしかける。
鼻息を荒くしたモンキードラウは飛び掛かっていく。

『ウラァァァァ!!』

「よっこいせっと!」

アルカナはデスサイザーを大振りに回しながら、モンキードラウを迎え撃つ。
デスサイザーによる鋭い斬撃を避けながら、素早い身のこなしで近づいてくるモンキードラウ。
両腕の拳がアルカナを捉え、殴りつけてくる。

「ぐぅ!?」

『フゥゥゥハァァァ!!』

さらには長い尾を使ってアルカナを拘束すると、そのまま近くの建築物まで投げ飛ばされす。
壁に深くめり込み、そのまま内部まで突き抜けて倒れたアルカナは、別の策としてアルカナカードを取り出す。

「だったらコイツでいきますかっと」

【The・Temperance】

【Reverse・Temperance】

アルカナがタロットベルトに翳すと、現れたのは杯の意匠が入った二つのハンドガン。
テンパランスショットを手にしたアルカナは、モンキードラウがやってくるのを待ち構える。
数刻経った頃、頭上の天井を破壊しながらモンキードラウが現れる。

『ウキャアアア!!』

「―――そこだ!」

アルカナは左手に持ったテンパランスショットを上へと構え、トリガーを引く。
銃口から放たれたエネルギー弾の本流はモンキードラウに炸裂する。
不意打ちが失敗に終わり、地面へと叩きつけられるモンキードラウ……だが、アルカナの反撃はまだ終わらない。

「もういっちょ!」

今度は右手に持ったテンバランスショットのトリガーを引く。
すると先程当たって消えていったエネルギー弾が再び現れ、今度はモンキードラウの背後に炸裂。
そのままエネルギー弾の本流は右手のテンパランスショットの銃口の中へと消えていく。

「無駄弾は出さないエコ使用だぜ?いいだろ」

『グォォォォ!?なんだそのふざけた武器だ!?』

「そう?慣れればいけるよこれ」

【左の銃で撃ったエネルギー弾が右の銃に戻ってくる】というややこしい特性を持つテンバランスショットに理解が苦しむモンキードラウと、意外と気に入っているアルカナ。
よろけ始めている相手の様子を見て、チャンスと言わんばかりにNo14節制(テンパランス)のアルカナカードを再びベルトに翳した。

【Final Turn……Temperance】

「さぁ、その運命(さだめ)を告げよう」

二つのテンパランスショットを合体させ、モンキードラウへ銃口を向ける。
銃口に集まっていくエネルギーの光球が回転しながら循環していく……。
やがて最高潮まで達したとき、アルカナは両方のトリガーを引いた。

「―――ハァ!!」

『こんな負け方はいやだぁぁぁぁぁ!!』

溜まった光球から光の本流が生まれ、モンキードラウを飲み込んでいく。
アルカナの放った『テンパランスストリーム』によって、モンキードラウは跡形もなく倒された。
そして光の本流が建物内部へと及ぼす寸前、テンパランスショットを分離して右手のトリガーを引いた。

「おっと、危ない危ない」

光の本流は逆再生のような動きで戻っていき、右のテンパランスショットの銃口へ吸収されていく。
結果的に建物内部を最小限の被害に止めたのであった。


――――


モンキードラウとの闘いの後、統人は別の場所へ避難していた真依と合流をする。
そこには日向の姿もあった。

「すまん……あんたの言う通りだった」

「ま、気にしないでくれよ。世の中には当たるも八卦当たらぬも八卦とかいう言葉もあるんだし」

申し訳なさそうに頭を下げる日向に対して、別に気にしてない様子で接する統人。
背を向けながら話していたが、日向の方へ顔を向けると笑顔でこう言った

「代わりと言ってはなんだが、かわいいお客紹介してくれよ。今度来た時、おまけでもしておくからさ」

「……統人?」

「ちょっと真依ちゃん、なーに怖い顔しちゃってんの?(えにし)のつなぎ合わせも占い師としちゃある意味立派な報酬なんだからがさ」

「そういって統人はかわいい子と知り合いたいだけでしょ!」

「嫉妬かな?嬉しいねぇ、焼き餅妬いてくれちゃってお兄さん嬉しい!」

「なっ、そんなんじゃないっての!!」

顔を真っ赤にしながら、真依は統人へ迫る。
統人は笑顔でそれをあしらいながら、真依の繰り出している拳を避けていく。
そんな夫婦漫才のような光景を見て、日向は思わず吹いて笑ってしまう。

『死神』の逆位置は"再スタート"。
一度はくじけたものの、青年企業家の活躍はこれから始まるのであった……。






「こら待て!あっ……」

「おっと……あっ」

「………」

「やっぱおっきいおっぱいはいいよね。触り心地がいい」

「節制!!」

「あいたっ!?」


【to be continued】
 
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