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今も残る封建主義

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第六章

「そうだけれどな」
「それにも文句を言わないことだな」
「そうだな」
「フロントのイエスマンと近いか?」
「かもな、普通はそんなの嫌だけれどな」
「監督としてはな」
「プライベートにも口出ししてくるけれどな」
 巨人のフロントはというのだ。
「何かと」
「それでもな」
「そういうのにな」
「一切反論しないで」
 そうであってというのだ。
「従う」
「そうじゃないといけないな」
「ここまで揃わないとな」
 住友はサイダーを一口飲んでから言った。
「もうな」
「なれないな」
「巨人の監督はな」
「なり手限られるよな」
「絶対にな」
 住友は確信を以て頷いた。
「封建主義もここまでいくとな」
「凄まじいな」
「そんなチーム嫌だな」
「全くだ」
 冲田もその通りと頷いた。
「本当にな」
「それでもなりたい奴いるんだな」
「そりゃな」
 冲田はそれこそと応えた。
「あそこは人気は今もあるからな」
「それでだな」
「そうだよ」
 それ故にというのだ。
「あそこの監督にな」
「なりたいっていうか」
「巨人の選手がな」
「今もいるか」
「そうだよ、ただな」
 それでもというのだ。
「なるとな」
「全国区の有名人だからな」
「そうなってやっぱり球界の盟主って自称してるだろ」
「今もな」
「盟主の監督だぞ」
 その立場になるというのだ。
「だからな」
「それでなりたいな」
「なれるんだったらな」
「そうしたものなんだな」
「ああ、そうだよ」
「それで封建主義は残ってるんだな」
「今の日本にもな」
 まさにというのだ。
「そうなんだよ」
「嫌な話だな」
「俺達から見てもな」
 代々の江戸っ子としてもんじゃを食べながら忌々し気に言った、そうして食べて飲み終えると二人で店を出てだった。
 東京ドームの方を見た、そして冲田は住友に言った。
「そういえばあそこ出来て何年だった?」
「もうちょっとしたら四十年だろ」
 住友は何でもないといった顔で答えた。
「一九八八年だったな」
「ああ、本当にちょっとしたら四十年だな」
「日本で最初のドームって言われてな」
「出来た頃は持て囃されたな」
「それからもうちょっとしたら四十年だ」
「長いな」
「ああ、気付いたらそれだけ経っていてな」
 そうしてというのだ。
「何かとな」
「オンボロだな」
「巨人そのままだな」
 住友はこうも言った。
「持て囃されていて何時の間にかな」
「オンボロになってるな」
「封建主義だな、それでそのままな」
「化石になるな」
「ああ、本当にな」
 それこそというのだ。
「巨人そのものだよ」
「あのドームもな」
「盟主だと思いあがっていて」
「気付けばポンコツだ」
「そのままどんどん悪くなれ」
「全くだ」
 こう言うのだった、そして二人は後で巨人がクライマックスで負けたことを喜んだ。そうしてそのまま落ちていけとも願ったのだった。


今も残る封建主義   完


                  2024・10・30 
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