英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
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第56話
~黒芒街~
「つまり、ほぼ確定ってわけだな。――――――アルマータが”外部勢力”を使っているのは。」
「ええ――――――間違いないでしょう。そしてその資金源は、かつてあった”民族テロ”からも流れているようね。」
「!そんな…………」
「前に聞いた…………」
「…………ええ、我が社のリスク分析とも一致しています。」
ヴァンの確認に対して答えたキリカの話を聞いたアニエスは不安そうな表情を浮かべ、フェリとリゼットはそれぞれ真剣な表情で呟いた。
「………数年前まであった、東方系や中東系を標的としたテロ…………旧王国系の流れを汲む白人系グループがいくつも存在していましたね。―――――4年前に最大規模の組織が帝都――――――クロスベルの通商会議を襲撃するまでは。」
「ええ、その時は”想定外な出来事”があったとはいえ”保険”をかけてなんとか事無きを得たけれど。」
エレインの確認に対して頷いて答えたキリカはレンに視線を向けた後話を続けた。
「…………事件後、前総督の指示で摘発が進められた事に加えて1年前に”中央”と”本国”による大規模な摘発が行われてからは鳴りを潜めたわ。それ以降は”中央”からの”援助金”による好景気もあって、話題には上がらなくなっていたけど…………」
「むしろその好景気が格好の”隠れ蓑”になっていたわけですねぇ。援助金の支払いも終わりつつある今――――――顕在化しつつある問題の一つでしょうか?」
「そしてその問題が深刻化すれば、”現総督”の責任問題にもなりかねないから、北カルバード総督府としては何としても早急に終わらせたいのでしょうね。」
キリカの説明の後にチョウとレンはそれぞれ自分の考えを指摘した。
「……………………」
「…………アルマータとどんな風に繋がってるのかは知らねえが…………そんな資金源もあるってんならあの勢力拡大っぷりも頷けるぜ。」
「そしてそれだけのミラがあれば”外”を引き込むことも叶うわけだ。例のメルキオルって幹部の古巣にして新たな人形遣いなんかも所属する組織。高位傭兵中隊を一方的に殲滅できる、恐らくは”異能”の持ち主の集団…………」
「っ…………」
「なるほど――――――”庭園(ガーデン”って連中か。」
話を聞いていたアニエスは不安そうな表情で黙り込み、アーロンの言葉に続くように呟いたジンの話を聞いてアイーダ達の事を思い出したフェリは息を飲み、心当たりがあるヴァンはその心当たりを口にした。
「フフ、流石よくご存じですね?裏の世界でも余り知られていない名前のはずですが。」
「”庭園”…………」
「い、いったいどういう…………?」
ヴァンが口にした組織を耳にしたチョウは感心した様子でヴァンを見つめ、フェリは真剣な表情で呟き、アニエスは不安そうな表情で疑問を口にした。
「簡単に説明すれば”暗殺者”達の組織よ。なんでもあちこちから身寄りのない子供を集めて英才教育を施しているとの事よ――――――勿論”暗殺”の為のね。」
「…………!」
「おいおい…………んなモンが現実にいるのかよ?」
レンの説明を聞いたアニエスは驚き、アーロンは困惑の表情で疑問を口にした。
「ええ――――――構成員こそ少ないものの、依頼達成率は凄まじかったみたいね。いくつかの”園”とそれを統括する”管理人”の存在が確認されているわ。
「…………MK社でも把握されています。脅威度S+の詳細不明集団として。一時期、未解決の暗殺事件の殆どが彼らの仕業と分析されていたくらいで。」
「ああ、しまいには手口を模倣しようとした連中まで出てくる始末でな。だがここ2年くらいはほどんど名前も聞かなくなっていた。幹部の一人――――――”剣”の管理人ってのが脱走者の返り討ちに遭ってからみたいだが。」
「そ、そんな事が…………」
(…………えっと…………どこかで読んだような…………)
キリカとリゼット、ジンの話を聞いたフェリが驚いている中心当たりがあるアニエスは戸惑いの表情を浮かべた。
「……………………」
「ヴァンさん?」
「いや…………そのヤバイ連中が今はアルマータに協力してるわけだ。民族テロからの資金と合わせてどう繋がっているかはわからねえが…………――――――問題は”何のために”だろう。」
「…………はい…………」
「”最悪”っつー牌を3つ揃えてどんな”役”を狙ってるってことか。」
「ま、だからこそ”中央”と”本国”までアルマータを最大限に危険視して、彼らの撲滅の為に”エースキラーという精鋭”を結成したって事よ。」
ヴァンの疑問にフェリとアーロンがそれぞれ頷いている中レンは肩をすくめて答えた。
「レン先輩…………」
「その口ぶりから察するにどうやら”学生は表向きの立場”で、テメェの正体は”エースキラー”――――――それもメンフィル側の奴のようだな。」
「あ…………クロスベル側の”エースキラー”はサルバッドの時に全員判明していますから、残りの判明していない”エースキラー”の人達は全員メンフィル帝国側という事になりますね。」
アニエスがレンを見つめている中真剣な表情でレンを見つめながら呟いたアーロンの言葉を聞いたフェリはある事実に気づいた。
「フフ、改めて名乗るわ。――――――レン・H・マーシルン。お察しの通り”エースキラー”の一員よ。ちなみにH(ヘイワーズ)は私のミドルネームだから、別に”偽名”を名乗っていた訳ではないわよ?」
「”レン・H・マーシルン”…………それがレン先輩の本当の名前…………―――って、ええっ!?」
「おいおい、”マーシルン”って言えばメンフィルの皇族連中の家名じゃねぇか。てっきりメンフィルの貴族あたりかと思っていたが、まさか皇族とはな。」
「ええっ!?メ、メンフィル帝国の”皇族”…………!?」
(…………なるほど。私のようなディル=リフィーナからの”迷い人”もそうですがメンフィル帝国の内情に随分と詳しかった事といい、学生の身でありながら本来なら高額かつ限られた人物しか入手できないはずのザイファを僅か数日で用意できた事といい、彼女について色々と疑問に思う点はありましたがそれも全て彼女がメンフィル帝国の皇族である事を考えれば納得が行きますね。)
レンの”真の名”を知ったアニエスは呆けた後すぐにレンがメンフィル帝国の皇族であることに気づくと驚きの表情で声を上げ、真剣な表情でレンを見つめながら呟いたアーロンの話を聞いたフェリは驚きの表情で声を上げ、メイヴィスレインは真剣な表情でレンを見つめて呟いた。
「メンフィルの皇家は”分家”は多くても数家程しかない他国と違って十数家の”分家”が存在しているとの事だが、彼女の両親は”英雄王”と”闇の聖女”だから、レンは比較的”本家に近い立場の分家の皇族”でもあるんだぜ。」
「ええっ!?」
「え、”英雄王”って確か”大陸最強”とも称されているメンフィル帝国最強の戦士にして前皇帝じゃないですか…………!?」
「”闇の聖女”ってのにも聞き覚えがあるな。確か異世界の宗教――――――”混沌の女神”教とやらの”聖女”で、その娘も”姫君の中の姫君”とかいう大層な名で呼ばれているそうじゃねぇか。…………確か”姫君の中の姫君”とやらの年齢は俺達より少し年上って話を聞いた事があるからそこの皇女はその”姫君の中の姫君”の妹か。」
ヴァンの説明を聞いてレンの両親を知ったアニエスは驚きの表情で声を上げ、フェリは信じられない表情でレンを見つめ、アーロンは興味ありげな様子でレンを見つめてある推測をした。
「フフ、ちなみにレン皇女殿下も姉君のように既に二つ名があります。レン皇女殿下は”裏”の世界では”殲滅天使”という二つ名で恐れられている上、先ほどヴァン様も仰ったように腕利きのハッカー――――――仔猫としても有名なのです。」
「”殲滅天使”…………という事はもしかしてレン先輩は実は天使族の方なんですか?」
「ハハ、違う違う。”天使”のような可憐な容姿でありながら、”戦場”では敵対する者達を容赦なく”殲滅”したことからついた異名だ。」
「!里でも聞いたことがあります…………!何でも”戦場”にその姿を現せば二人の”姉”と共に敵兵を一人残らず殲滅したことから”殲滅の姉妹(ルイン・シスターズ)”とも呼ばれているとか。」
「ハッ、優等生の仮面を被ったとんだサイコ野郎じゃねぇか。」
「アーロンさんは私の事を何だと思っているのよ…………ジンさんも言ったように私が殲滅したのはあくまで”戦場の敵兵達のみ”よ。」
リゼットの説明を聞いてある疑問を抱いたアニエスの疑問にジンが苦笑しながら答え、ジンの話を聞いたフェリは目を見開いた後アーロンと共に真剣な表情でレンを見つめ、レンは溜息を吐いてアーロンの指摘に反論した。
「せ、”戦場で敵兵を殲滅”って…………もしかしてレン先輩、戦争の従軍経験まであるんですか…………!?」
「勿論ありますよ。殿下は3年前の”大戦”ではかの”大英雄”殿が率いた伝説の部隊――――――”灰獅子隊”の参謀兼”灰獅子隊”の拠点にしてリベールの”白き翼”、エレボニアの”紅き翼”の姉妹艦でもある高速飛行艇――――――”灰色の翼”の”艦長”という”大役”を務められたのですよ。」
「ハハ、それにレン嬢ちゃんは3年前の大戦だけでなく、6年前の”リベールの異変”の時も”異変”解決の為にその嬢ちゃんは両親や親族と一緒に、俺やリベールの遊撃士、それにリベールのお姫さん達と共に最終決戦地に乗り込んで、”裏”の使い手たちと激闘を繰り広げたんだぜ。」
「ちなみに彼女は4年前の”クロスベル異変”でも”リベールの異変”同様”異変”解決の為にクロスベル皇家――――――”六銃士”達に協力する等と言った大きな貢献をしている上、先ほど少しだけ話に出た4年前の通商会議にもメンフィル帝国側の代表者の一人として参加して前総督やエレボニアのかの”鉄血宰相”と当時のクロスベルを巡って舌戦を繰り広げた事もあるわ。」
「まさかそれ程の優秀な戦士だったとは…………最初に出会ったときに見ぬけなかったわたしはまだまだ未熟ですねっ。」
「いや、戦士云々の問題じゃねぇだろ。あの天使や幽霊の学生共といい、目の前の化物じみたアニエスのパイセンといい、お前の学院も中々カオスな面子が揃っているようじゃねぇか、アニエス?」
「え、えっとレン先輩達が特別であって、他の人達は普通の学生ですよ!…………多分ですけど。」
アニエスの疑問に答えたチョウやジン、キリカが口にしたレンの過去の経歴を知った助手達はそれぞれ冷や汗をかいた後真剣な表情でレンを見つめて呟いたフェリに呆れた表情で指摘したアーロンはアニエスをからかい、からかわれたアニエスは苦笑しながら反論した後すぐに自信なさげな表情になった。
「あら、その口ぶりだとアンリエットさんが”幽霊”であることもアニエスは知っているみたいね。煌都での出張でリタさんとも共闘したって話は聞いているけど、もしかしてその時にリタさんから教えてもらったのかしら?」
「いえ、”息吹”の有無に敏感なフェリちゃんが気づいたんです。…………えっと、もしかして先輩とレジーニアさんやアンリエットさんもそうですが、リタさんともそれぞれ昔からのお知り合いなのですか?」
目を丸くした後訊ねたレンの疑問に答えたアニエスはあることに気づき、レンに確認した。
「ええ。まあ、私の方は彼女達とはそれ程親しい訳ではないから、”知り合い”程度と言った所だけどね。」
「ハッ、天使や幽霊娘達と”知り合い”とかどんな知り合いだよ。」
「その”天使”の姉や母がいるアーロンにだけは言われる筋合いはないと思いますがねぇ。」
レンが答えた後鼻を鳴らして指摘したアーロンにチョウが苦笑しながら指摘するとヴァン達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「話を戻すが、いずれにせよ今後の対応はアルマータの目的が焦点になりそうだな。」
「ええ――――――勿論それぞれの立場で”対応”は異なってくるでしょうが。」
ジンの意見にチョウが頷いて異なるとアニエス達はそれぞれ表情を引き締めた。
「フフ…………本日の交流はこのあたりまでになりそうね。」
「ええ――――――ですが”他”よりは歩み寄れる余地もあるはずです。」
「フフ、その”余地”に私共も加えて頂けるとは光栄ですが。」
キリカの言葉にエレインは頷き、チョウは口元に笑みを浮かべて答えた。
「ま、お前さんやギエン老はともかく、ファン大人みたいな穏健派もいるしな。アークライド――――――お前さんたちも構わんか?」
「構うも何も、アンタら全てと関わりあんのはウチだけだろうが…………つーか”繋ぎ”に使う気満々だな?」
ジンの確認に対して呆れた表情で溜息を吐いて指摘したヴァンはジト目でになって呟いた。
「バレたか。」
「バレた?」
「バレましたか。」
「バレちゃったわね♪」
「ハモってんじゃねえっ!!」
ヴァンの問いかけに対してジン、キリカ、チョウ、レンはそれぞれ同時に答え、4人の答えにヴァンは思わず突っ込んだ。その後会合は終了し、ヴァン達は先に地上に戻るキリカ達の見送りをしていた。
「フフ、旧首都での生活、家族共々さっそく馴染んでいるようですね?アシェン様も心配していましたしあまり羽目を外し過ぎないように。」
「あいつも小うるせぇな…………アンタこそマメに顔を出してやれよ。そういやシンはどうしてんだ?レミフェリアに留学して半年か。」
「ええ、現地名門校の中等部でご学友にも恵まれたらしく…………」
アシェンの意を汲んだチョウの注意に対して呆れた表情で呟いたアーロンはチョウに指摘した後ある人物の事について尋ね、尋ねられたチョウはその人物の事についての説明を続けた。
「ふふっ、アニエスがヴァンさんの所でバイトを始めた時からいずれ私の正体がバレる日が来るとは思っていたけど、まさかこんなにも早くバレるとは思わなかったわ♪」
「正体を黙っていた理由は先輩の”身分”を考えれば理解していますけど、私やオデット達――――――生徒会のメンバーにも黙っているなんて水臭いですよ…………私もそうですがオデット達も先輩の”正体”を知っても、今まで通りの態度で接しますのに…………」
ウインクをして答えたレンにアニエスは困った表情で指摘し
「私と親しくしてくれている貴女達にも私の正体を黙っていたことは悪いと思っているわ。だけど貴女達”子供側”はそれでよくても、”親側”が貴女達が”中央”――――――クロスベル帝国政府の上層部と親しい関係を築いているメンフィル帝国の皇族である私と親しいなんて話を知ったらその”親側”が自分の子供である貴女達の学生生活に口出しして、貴女達に余計な負担をかけるかもしれないでしょう?」
「!それは…………」
若干申し訳なさそうな表情で答えたレンの推測に目を見開いたアニエスは複雑そうな表情で答えを濁していた。
「そういや室長さん、そこの熊野郎たちの因縁があるとはいえ…………こういった合意についてだったらてっきりルネの領分かと思ったが。」
アーロンとチョウ、アニエスとレンがそれぞれ話している一方ヴァンはキリカにあることを訊ねていた。
「あ…………」
「ああ、お前さんとエレインの昔馴染みっていうキレ者か。」
「フフ、彼にはちょうど別件で動いてもらっていてね。まあすぐにわかるでしょう。」
ヴァンの問いかけにエレインとジンがそれぞれキンケイドを思い浮かべている中キリカは静かな笑みを浮かべて意味ありげな答えを口にした。
「…………?そいつは――――――」
キリカの意味ありげな言葉が気になったヴァンはキリカに続きを訊ねようとしたがタイミング良くチョウが別れの言葉を告げた後その場から立ち去り、キリカやレン達もそれぞれ別れの言葉を告げた後立ち去った為答えは聞けなかった。
「…………ったく、比較的マシな室長さんですらアレだからな。揃いも揃って濃すぎだろ…………」
「ヴァン様も人の事は余り言えないのではないかと。」
「そ、そうですよっ。内緒でこんなところに来て…………!」
キリカ達が去った後呆れた表情で呟いたヴァンに指摘したリゼットの言葉にフェリは同意した。
「撒かれたっつーのはムカつくがま、そいつはどうでもいい。」
「それで結局――――――この場所は一体どういう…………?」
「ここは黒芒街――――――存在しないはずの”十三区”にしてイーディスの”裏の顔”と呼ばれている。昔から場所を変えながら存続してきた、警察も基本立ち寄らねえ”無法地帯”…………”裏”の住民やら、勢力なんかが逃げ込んだり交流したりする”街区”だ。」
「…………十三区…………そんな場所が…………」
「そういえば前にお父さん(アブ)から…………」
「事前に把握しておりましたが、このような場所だったのですね。恐らくは都市計画から取り残された複数街区の地下に跨っている空間…………」
ヴァンの説明によって初めて知ったイーディスの”裏の顔”にアニエスが驚いている中フェリは心当たりがある様子を見せ、予め把握していたリゼットは興味ありげな様子で周囲を見回しながら分析していた。
「あの女に、迷路みてぇな地下道を延々と案内されて辿り着いたからな。違法品販売やら地下闘技場――――――なかなか痺れる場所みてぇじゃねえか?」
(アーロンにとっては相性が良すぎる場所だからこそ、ヴァンさんはアニエス達は当然としてアーロンにもできればこの場所の存在を教えたくなかったのでしょうねぇ。)
(ええ………日常茶飯事のように入り浸る姿が目に浮かぶわ…………)
「…………ま、来ちまったからには仕方ねえ。エレインがいたから絡まれなかっただろうがここじゃあ喧嘩や小競り合いは日常茶飯事だ。――――――それを含めての”作法”を教える。地上に戻る前に一通り回ってみるがくれぐれも気を抜くんじゃねえぞ…………?」
不敵な笑みを浮かべて周囲を見回しているアーロンの様子にユエファは苦笑し、マルティーナが疲れた表情で頭を抱えている中呆れた表情で溜息を吐いたヴァンは表情を引き締めてアニエス達に説明した後忠告した。
「!はいっ…………!」
「了解っ。」
「ハッ、望むところだっつーの。」
その後ヴァンは時折襲い掛かってくる半グレ達をアニエス達と共に撃退し、ヴァンは助手達に黒芒街についての注意点を説明しながら黒芒街を一回りして街を出た後行きとは異なるルートを通って地上に戻ると夕方になっていた。
~リバーサイド地区~
「もうこんな時間か…………結構かかっちまったな。」
「リバーサイド…………こんな所にも繋がってたなんて。なんだか夢でも見ていた気分です。」
「クク、さすがにお子ちゃまには刺激が強かったんじゃねーのか?つってもガキもいたな…………女猟兵の息子だったみてぇだが。」
歩きながら呆けている様子で呟いたフェリにアーロンは口元に笑みを浮かべてからかいの指摘をした後あることを思い出し
「はいっ、半グレとかはともかくわたしは嫌いじゃないですっ。紛争地帯の街にも似てて…………何より訓練にもなりますしっ!」
「またそれかよ…………」
フェリのマイペースさを知るとアーロンは呆れた表情で溜息を吐いた。
「最低限のルールはあるようですし付き合い方しだいではないかと。表に流通していない資材などの調達にも使えそうですね。」
「ああ、ハマリすぎない程度に筋を通して利用すればいい。特にアーロン…………あんまり入り浸るんじゃねえぞ?」
「~~~♪」
「……………………」
「アニエスさん…………どうしましたか?」
リゼットの推測に頷いて指摘したヴァンはアーロンに忠告し、忠告されたアーロンが口笛を吹いて誤魔化している中黙り込んでいるアニエスが気になったフェリがアニエスに声をかけた。
「え、あ…………いえっ、なんでもないですよ!ちょっとカルチャーショックでぼうっとしていただけで。」
「…………無理もないかと。」
「す、すみませんっ…………!わたし、はしゃいじゃって…………」
アニエスの黒芒街に対する感想を知ったリゼットが同意している中フェリはアニエスに謝罪した。
「あはは、フェリちゃんが謝る必要なんてないですって。その、それだけじゃなくって別の考え事もあって…………」
「…………そういや最近、なんか考えてる感じだったな。学校の授業かなんかで迷ってることでもあんのか?」
「!ええ、実はちょっとした特殊なカリキュラムがあるんです。でも…………やっぱり、今回はやめておこうかなって。確かめたいこともできましたし…………」
「…………確かめる?」
「ハン…………?」
ヴァンの質問に答えたアニエスの話を聞いて気になる事が出てきたフェリとアーロンがそれぞれ不思議そうな表情を浮かべたその時ヴァン達の近くに白いリムジンが停車した。
「――――――やあ、情報通りだね。」
するとリムジンの窓が開き、中にいるシェリド公太子がヴァン達に声をかけてきた。
「十日ぶりくらいか――――――また会えて嬉しいよ、諸君。」
「ご無沙汰しております。」
「公太子殿下…………!?」
「ナージェさんまで…………」
「オイオイオイ…………どういう登場の仕方だっつの?」
「ったく…………お前んトコの室長が言ってたのはこれかよ。」
シェリド公太子達の登場にアニエス達がそれぞれ困惑している中ヴァンが呆れた表情で車から出てきた人物――――――キンケイドに指摘した。
「ああ、そういう事だ。殿下と合わせて話がある――――――お前たちも乗ってもらおうか。」
そしてヴァン達がキンケイドと共にリムジンに乗り込んだ。
「わあっ…………!すっごく広いですねぇ!」
「エトワスのストレッチリムジンか。まさに贅沢の極みってヤツだな。さっきから揺れ一つしねぇし、上には上があるもんだよなァ?」
フェリが初めて乗るリムジンにはしゃいでいる中アーロンはヴァンに対する皮肉を口にした。
「フン、PU(ピックアップ)とこの手の高級車じゃ足回りの思想がそもそもだなぁ…………」
対するヴァンは対抗するかのように反論していた。
「フフ、そういえば”例のパーツ”は気に入ってくれたかな?君の愛車のデザインを損なわないよう特注させてもらったんだが。」
ヴァンが愛車の話を始めるとあることを思い出したシェリド公太子がヴァンに訊ねた。
「あー、それについては感謝してますよ。微妙に透けて見えた”意図”は気のせいじゃなかったみたいですが。」
「?でも殿下もナージェさんもお元気そうで本当に良かったです。」
ヴァンのシェリド公太子への指摘の意味がわからないアニエスは首を傾げたが気にせず話を続けた。
「ええ…………その節は本当にご迷惑をおかけしました。」
「いや、私達もこれほど早く再会できるとは思っていなかった。ちょうど”総督へのご挨拶”が重なったのも都合が良かったかな。」
「え――――」
「あ…………”ぐらむはーと”っていう!」
「ハン…………ニュースでも見なかったしいわゆる”密議”ってヤツか?」
「それについては君達には関係のない話だ、気にしなくていい。」
シェリド公太子の話を聞いたアニエスが呆けている中フェリは興味ありげな様子で声を上げ、鼻を鳴らして呟いたアーロンの推測をキンケイドは誤魔化した。
「…………ま、このご時世だし色々あんだろう。”別件”には遠慮なく関わらせるつもりなのは気に食わねぇが。」
「…………別件、ですか。」
「…………なるほど、何となく話が見えてきましたね。」
ヴァンのキンケイドへの皮肉を聞いたフェリは表情を引き締め、リゼットは納得した様子で呟いた。
「この場を設けたのは他でもない――――――君達に新たな”依頼”をしたいんだ。エルザイムとGIDの”共同依頼”という形でね。」
「…………共同依頼。」
「…………聞くだけ聞きましょうか。」
シェリド公太子が口にした意味ありげな言葉にアニエスが目を丸くしている中ヴァンは続きを促した。
「単刀直入に言えば、出張に行ってもらいたいのだよ。カルバード南西にしてメンフィル帝国領南カルバード総督府のお膝元でもあるバーゼル市――――――かの『ヴェルヌ社』の本拠地にね。」
「ヴェルヌ――――――両カルバード州の巨大メーカーの…………」
「ハン…………?なかなか思わせぶりじゃねーか。」
「こちらをご覧ください。」
ナージェがリムジンについているある装置を動かすとヴァン達の前にスクリーンが現れ、いくつかの写真が映った。
「”ヴェルヌグループ”の本拠地であり、”バーゼル理科大学”を擁する学術工業都市――――――中世の職人街もあり、美しい自然にも囲まれたこの地で現在”とある異変”が起きている。具体的には都市内の導力ネットと、工業用の”導力供給網”の不安定化…………さらには見慣れぬ者たちが市内に出没しているというな。」
「…………!」
「そ、それって…………」
キンケイドの話を聞いてすぐにアルマータを思い浮べたヴァン達がそれぞれ血相を変えている中アニエスは目を見開き、フェリは声を上げた。
「まだ”そう”と決まったわけではない――――――というより現時点で何もわからないんだ。ちなみに我が国と理科大学には昔から浅からぬ縁があるんだが…………その理事でもあるヴェルヌ社CEOに問い合わせても、返事が濁されていてね。」
「それは…………少々おかしいですね。たしかエルザイム公国はヴェルヌ社の大株主であるとも聞いたような。」
シェリド公太子の話を聞いたアニエスは真剣な表情で考え込みながら呟いた。
「ああ、筆頭ではないし、4年前の連合による侵略によってメンフィル帝国がヴェルヌの大株主の筆頭になったとはいえ、それなりの発言力はあるはずだ。にも拘わらず、タウゼントCEOは時間稼ぎのような曖昧な返事ばかりでね。おそらく”何か”を隠している――――――君達にはそれを見定めて欲しいんだ。」
「何か、ですか…………」
「…………ハン…………」
「…………随分と漠然とした話ですね。正直、技術的な問題に関しちゃ俺達は専門外ですよ?」
「ハッハッハ、謙遜はよしたまえ。マルドゥック社のSCを雇う君が。何でも画期的なサービスも運用し始めたそうじゃないか?」
ヴァンの忠告に対して軽く笑って流したシェリド公太子は真剣な表情でヴァンを見つめて指摘した。
「あ…………あのしみゅれーたっていう。」
「何分まだテスト段階なので…………いずれ一般公開させて頂きます。」
「ああ、期待させてもらうよ。ともあれ――――――民間人の被害が出ていない以上、多忙極めるギルドに頼んでも後回しだろう。それに相手の腹を探るケースでは彼らは警察並みに敬遠されがちだからね。」
「その点、俺達ならいざ問題が起きても”内々”で済ませることができる。…………一応念の為に確認させてもらいますが、南カルバード総督府には話を通しているのですか?南カルバード総督府のお膝元であるバーゼルにGIDとエルザイムの共同依頼を請けた俺達が出張となると、煌都やサルバッドの時と違い、さすがに南カルバード総督府―――――メンフィル帝国が黙っていないと思いますが。」
「無論、南カルバード総督府には話を通してあるから心配無用さ。」
「それと無理を承知で南カルバード総督府に大株主の筆頭の権限を利用して、タウゼントCEOに”異変”の件を説明するように問い合わせる事を要請してみたが、人的被害もそうだが市内全体の生活に何らかの支障も出ていない上それらに関する何の証拠もない現状では、”強権”を発動してでもタウゼントCEOの口を割らせる等といった強引な事はメンフィル帝国とヴェルヌ社との関係を良好に保つためにもできないとの事だ。」
「それは…………」
「ハン…………見慣れない連中が南カルバード総督府のお膝元に出没している件については何て答えやがったんだ?」
ヴァンの確認に対してシェリド公太子が答えた後補足の説明をしたキンケイドの話を聞いてメンフィル帝国の正論を知ったアニエスが複雑そうな表情で答えを濁している中、鼻を鳴らしたアーロンはある疑問を口にした。
「それについてはそれこそ”エースキラー”の出番の為、彼らにバーゼルでの調査を要請したとの事だ。――――――最も、こちらが把握している限りでは今の所メンフィル帝国側もそうだが”中央”側のメンバーも確認できず、確認できたのはお前達もよく知る現在イーディスに滞在中の”北の猟兵”達の4人との事だ。」
「という事はラヴィさん達が現在バーゼルに…………」
キンケイドの説明を聞いたフェリはラヴィ達を思い浮べて呆けた表情で呟いた。
「なるほどな…………――――――話を戻しますが、後は報酬次第、と付け加えておきます。」
一方ヴァンは頷いた後シェリド公太子を見つめて指摘した。
「ハハ、勿論。その点はむしろ信用に値する所だよ。」
「ハン…………割り切ってやがんな。」
ヴァンの指摘に対して陽気に笑って答えたシェリド公太子をアーロンは真剣な表情で見つめた。
「…………報酬はともかく”彼ら”の可能性については…………」
「その…………恐れながら他にも”事情”はありますよね?それだけだと”GIDとの共同”であることに説明がつかないと思うんです。」
「ほう…………?」
「いい質問だ、”お嬢さん”。――――――前提として、ヴェルヌ社と理科大学は現在北カルバード総督府と”中央”――――――クロスベル帝国政府、そして南カルバード総督府――――――いや、メンフィル帝国との共同による二つの国家プロジェクトに関わっている。一つは君達にも馴染みある”ザイファ規格”の民生化と国際展開――――――国防にも使われる技術であることを考えると我々の”関与”も納得してもらえるだろう。」
フェリが考え込んでいる中複雑そうな表情で質問したアニエスの質問を聞いたシェリド公太子が興味ありげな様子を見せている中、キンケイドが頷いて説明した。
「…………なるほどな。」
「スパイ摘発やスキャンダルのもみ消しに備えてるっつーわけか。んで、もう一つはなんだよ?」
「――――――そちらは機密事項だ。君たちは”一切”気にしなくていい。」
「ハ?」
「えと…………?」
「残念ながらそちらについては私もまったく知らないくらいだ。総督閣下に探りを入れたら”暗に牽制”されたくらいでね。」
アーロンの質問に対して答えたキンケイドの意味ありげな答えにアーロンはフェリと共に困惑の表情を浮かべ、シェリド公太子は意味ありげな笑みを浮かべてキンケイドに視線を向けた。
「恐れ入ります――――――という訳でなおさら君達が知る必要はない。ただ単に、GIDの関与する理由が”複数”あると理解してくれれば結構だ。」
「……………………」
「ハン…………?胡散臭ぇが話が進まねえから続けろや。」
キンケイドの要請に対してヴァンが真剣な表情で黙っている中、アーロンは話を続けるように促した。
「ああ――――――話を戻すが”ザイファ規格”にはプロジェクト出資状況という事情もあってね。それについては、そちらの所長やSC殿に説明してもらうとしようか?」
「え…………」
「と、いいますと…………?」
キンケイドがヴァンとリゼットに説明を促すとフェリとアニエスはそれぞれ不思議そうな表情を浮かべた。
「ふう、こっちに振るんじゃねーよ。――――――”ザイファ規格”はヴェルヌ社が独自に開発した第六世代として知られてるが…………立ち上げ時に、とある”出資元”が莫大な投資をしたのがその筋じゃ有名でな。その出資元っつーのが――――――」
「――――――”ヴァリス投資銀行”。わたくしの”出向元”であるマルドゥック社の筆頭株主でもありますね。」
「そ、そうだったんですか…………」
「ヴァリス…………最近ちょくちょく聞くが…………」
「ヴァリスって…………え、あの”ヴァリス市国”ですか…………?」
ヴァンとリゼットの説明を聞いたアニエスは驚き、アーロンが考え込んでいる中フェリは戸惑いの表情で自身が知る地名を口にした。
「ああ、ゼムリア大陸中東部の沿岸部に位置する巨大海港都市。国土は小さいながらも南洋貿易で築いた莫大な富を大陸全土への投資に回している――――――我がエルザイムの友好国にして競合相手たるかの都市国家が擁する投資銀行というわけだ。」
「……………………」
「ハン…………つまり中東勢の縄張り争いもあるわけだ。加えて国家機密レベルの技術を狙うスパイが入り込んでもおかしくねぇ。」
「今回の件は、そんな複雑な状況であくまで”中立”の立場で動きながら…………何が起きているのかを正確に見極める、いえ――――――嗅ぎ分ける必要があるわけですか。」
「85点あげよう、助手諸君。加えてヴァリス側の干渉があった場合の窓口としても期待させてもらいたい。」
「…………そこまで見越してやがるとはな。」
「”そちら”とは業務が異なりますので期待には添えない可能性もありますが…………」」
助手達の推測を評価した後に答えたキンケイドの話を聞いたヴァンは真剣な表情で呟き、リゼットはキンケイド達にある指摘をした。
「それでもあらゆる意味で君達に期待してしまう状況が整っているわけだ。期間は3日間――――――サルバッド同様、”4spg”をやりながらで構わない。すぐにとは言わないが数日中には出発して欲しいと思っている。」
(あ…………)
「――――――お話はわかりましたよ。だがこの場での即答は難しいですね。一度持ち帰って返事をさせてください。」
「フフ、無論それで構わないさ。さすがに君達に一点張りというわけでもないからね。」
「引き受けない場合、当然だが今の情報は機密案件として漏洩を禁じさせてもらう。まあ――――――今回は思わぬ決め手があるかもしれんが。」
(っ…………)
「…………?」
「……………………」
キンケイドが口にした言葉の意味を理解していたアニエスは息を飲み、理解していないフェリは首を傾げ、アニエス同様理解していたヴァンは真剣な表情で黙り込んでいた。
その後、ヴァン達は旧市街まで送られ…………モンマルトで夕食をとってから、依頼について話し合うのだった。
~アークライド解決事務所~
「――――――ちなみに、”本社”から何か聞いてねぇのか?」
「ザイファ規格の民生化については存じていますが、異変については何も。ただし”A"関連であればわたくしの方にも連絡があると思います。」
「そうか…………引き受けるとなると確かに3日はかかりそうな案件だ。ヴェルヌや理科大学っの実態調査である以上、平日に動く必要もあんだろう。」
「そうなるとアニエスさんは…………」
「えっと、それなんですが…………むしろ丁度いいかもしれません。実は――――――」
リゼットへの確認を終えた後に答えたヴァンの説明を聞き、学生であるアニエスは今回の出張は厳しい事を悟ったフェリは僅かに複雑そうな表情でアニエスを見つめたが対するアニエスは動じていない様子であることをヴァン達に説明した。
「”視察研修”…………”高校って面白いですねっ。」
「さすが旧首都の有名校、小生意気なカリキュラムだな。」
アニエスの説明を聞いたフェリは驚いた後明るい表情を浮かべ、アーロンは口元に笑みを浮かべて呟いた。
「生徒の自主性を重んじるアラミスならではの伝統行事だな。レポートもさぞかしたんまり出るんじゃねぇか?」
「?はい…………実は前に事務所にも来た友人や先輩がバーゼル行きを検討してまして。私も興味があったので、どうしようかと迷っていたところだったんです。」
「来週木曜からの3日間の研修…………タイミング的に一致していますね。」
「えへへ…………なんだか翼の女神の導きを感じますっ。」
「しかもあの生徒会長のメンフィルの皇女も行くんだったら、もし”南”の総督府に用があった時、あの皇女に口利きしてもらえればいいだろうからな。」
ヴァンが”視察研修”について詳しく知っている口ぶりを不思議に思ったアニエスだったが説明を続け、アニエスの説明を聞いたリゼットは頷き、フェリは嬉しそうな表情を浮かべ、アーロンはある提案をした。
「あ、でもだからといって依頼を引き受ける決め手にはなりませんけど…………!」
「ま、そうだな。学校行事だし、そっちこそ無理に依頼と絡めて決めることもねえだろう。行き先が被ったところで研修って名目なら別行動の可能性も高いだろうしな。」
「そ、それはそうですけど…………それはそれで寂しいと言いますか。」
(鈍感とはまた罪深い男ですね…………)
自分の念押しに頷いた後答えたヴァンの指摘に頷いたアニエスだったがヴァンから目をそらして小声で呟き、その様子を見守っていたメイヴィスレインは呆れた表情で呟いた。
「ん…………?」
「クク、毎度スイーツに釣られるヤツがどのツラ下げてって話だがなぁ。」
「あ、ちなみにバーゼルはどんなお菓子があるんですかっ?」
アニエスの様子が気になったヴァンが首を傾げている中からかいの表情で指摘したアーロンの話を聞いてあることが気になったフェリは興味ありげな様子で訊ねた。
「よくぞ聞いた――――――有名なのは”エンガディーナ”って焼き菓子だ。クルミと蜂蜜のヌガーがぎっしり詰まった素朴だが濃密な味わいのタルトでなぁ…………!」
フェリの疑問を聞いたヴァンが自慢げに説明を始めると、助手達はそれぞれ冷や汗をかいて呆れていた。
「(…………ヴァンさんの言う通りかな。ちゃんと自分で考えて決めないと。そうでないと曾お祖父ちゃんに…………ううん、お父さんにだって――――――)あ…………すみません、心配させちゃいましたか?」
ヴァンがバーゼルのスイーツについての説明を語っている中真剣な表情で考え込んでいたアニエスは自分を見つめているリゼットの視線に気づくと我に返り、リゼットに声をかけた。
「いえ、アニエス様が迷われるのも無理はないかと。行き先が重なった場合はわたくしもフォローしますのでご安心を。」
「(やっぱり敵わないな…………)ありがとうございます、でもどうして――――――」
リゼットの気遣いを知り、リゼットに敵わない事を悟ったアニエスがリゼットに訊ねたその時、リゼットはアニエスのゲネシスが保管されているポーチに視線を向け、アニエスも釣られるようにポーチに視線を向けるとポーチの中にあるゲネシスが光を放っていた。
「あ…………」
「…………!」
「おいおい、こいつは…………」
アニエスが取り出した光を放ちづけているゲネシスに仲間達が注目している中真剣な表情を浮かべたアニエスはヴァンと視線を交わして頷いた。
その後、アニエスを見送ったヴァンは仲間達がそれぞれ次の出張に向けての準備をしている中夜の巡回をしていると話題のストリートミュージシャンが来ているという情報を知り、その情報が気になったヴァンはストリートミュージシャンが来ているという駅前に向かった――――――
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