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ギリシャの葡萄酒

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第二章

「いいとな」
「そうか、それならな」
「うむ、飲もう」
「これからな」 
 アテネの葡萄酒をとだ、こう話してだった。
 二人は飲むことになった、だが。
 クレテヌスの家の奴隷の者が自分達の前で葡萄酒を水で割ってだった。
 そこにさらに蜂蜜を入れたのを見てだ、ソレイオスは言った。
「そのまま飲まないのか」
「葡萄酒をだな」
「そうだ、そうしないのか」
「とんでもない、そのまま飲めるものか」
 クレテヌスは即刻答えた。
「葡萄酒なんてな」
「他の酒はそうして飲むな」
「蜂蜜や麦の酒はな」
「そうだな」
「しかしどちらもそのまま飲んでもすぐに酔わない」
「弱い酒だからな」
「しかし葡萄酒は強いな」 
 飲むとすぐに酔うというのだ。
「だからな」
「水で割って飲むか」
「海の水を使っている」
「港に幾らでもあるからか」
「それでだ」
 その為にというのだ。
「そうしている」
「塩辛そうだな」
「だから蜂蜜を入れてな」
 そうしてというのだ。
「甘くしている」
「そうなのか」
「しかも葡萄酒は高い」
 このこともだ、クレテネスは話した。
「こちらではな」
「特にペルシャから来たものはか」
「そうだ、美味いだけにな」
「そのこともあってか」
「とてもな」
 それこそというのだ。
「そのままではだ」
「飲めないか」
「このギリシャではな」
「アテネでもだな」
「そうだ、それに長く置いているとな」
 クレテネスはこのことも話した。
「葡萄酒は味が変わる」
「酸っぱくなるな」
「酒全体がそうだがな」
「その酸っぱさを和らげる為にか」
「水等で割ってな」
 そうしてというのだ。
「飲むのだ」
「そうしているか」
「こちらではな」
「そこが違うか、ペルシャだとな」
 ソレイオスはペルシャ人として答えた。
「そのままだ」
「飲むな」
「普通にな、しかしそこはな」
「国によって違うということだな」
「そうだな、ではこれからだな」
「葡萄酒を飲もう」
「それではな」
 二人で話してだった。
 実際に飲んだ、するとソレイオスは笑って話した。
「これはこれでだ」
「美味いな」
「そのまま飲んでいないが」
 ペルシャでしている様にというのだ。
「それでもな」
「美味いな」
「うむ、ではな」
「このまま飲むな」
「そうさせてもらう」
 クレテネスに笑顔で言ってだった。
 共に海水で割り蜂蜜で味付けをした葡萄酒を楽しんだ、そしてアテネでの仕事を終えるとクレテネスと別れてだった。
 ソレイオスはペルシャに帰り酒の話をした、すると誰もが驚いた。
「あちらではそうして飲むのか」
「葡萄酒の飲み方も国によって違うか」
「それにはその国の理由があるのか」
「そうしたことを知ることか」
「それが商売にも役立つのならな」
「覚えておかないとな」
 こう話して記録した、そしてその記録が今も残っている。かつてギリシアでは葡萄酒はそうして飲まれていたと。


ギリシャの葡萄酒   完


               2024・9・13 
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