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金木犀の許嫁

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第三十九話 めでたい幽霊がその十二

「ほんまな」
「俺達のこともわかりますか」
「そや、それで二人共長生きするんや」
 こう言うのだった。
「ええな、それで自分等名前は」
「はい、猿飛左京です」
「西宮夜空です」 
 二人は即座に名乗った。
「八条学園高等部の学生でして」
「今は大阪で織田作さんの名所を巡ってデート中です」
「そうなんやな、猿飛っていうと」
 織田はその名前を聞いて笑って話した。
「猿飛佐助やな」
「はい、俺達は子孫です」
 佐京はすぐに答えた。
「俺は本家になりまして」
「私は分家筋になります」
 夜空も言った。
「そうなります」
「そうなんやな、書いたな」 
 織田は懐かしむ様に言った。
「猿飛佐助も」
「小説にですね」
「ああ、丁度な」
 まさにというのだ。
「自分等のご先祖様を主人公にした」
「そうした小説をですね」
「書いたわ」
 夜空に話した。
「昔の忍者ものの感じでな」
「確かお空飛んでましたね」
「ああ、あの頃の忍術ってな」
「お空飛ぶのは普通でしたね」
「妖術と変わりなくてな」
「それで、ですね」
「姿消したりもしたわ」
 そうだったというのだ。
「それはニコ狆先生で書いたわ」
「その小説で」
「それで佐助さんも書いたんやが」
 二人の先祖もというのだ。
「懐かしいな」
「その小説も」
「ああ、まさかその佐助さんの子孫と大阪で会うとは」
「思いませんでしたか」
「鹿児島に落ち延びて維新で神戸に来たとは聞いてたけどな」
 それでもというのだ。
「まさかこうして会うとはな」
「子孫の私達と」
「思わんかったわ、奇遇やな」
 織田はしみじみとした口調で述べた。
「これも」
「いや、俺は忍者をしていますが」
 佐京はそれでもと話した。
「別に何もです」
「おかしなとこないな」
「はい、忍者はです」
「あくまで普通の人やな」
「空を飛んだりしません」
 絶対にというのだ。 
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