神々の塔

「一夫多妻認めてる国は多かった」
「そやったね」
「それで山縣さんもお妾さんいてはったな」
「そやけど」
　そのことは事実だがとだ、綾乃は話した。
「伊藤さんみたいにそうした話なくて」
「何か奇麗な人見ても美人だな、で終わりやったらしいな」
　中里が言ってきた。
「あの人は」
「そうみたいやね」
「陰謀とか汚職を言われてな」
「人気のない人やけど」
「実は生活はかなり質素でな」
「女の人にも清潔やったわ」
「そんな人やったな」
　実際に整った外見の女性を見ても美人だな、の一言で終わり色気のない人物だと言われていたという逸話がある。
「あの人は」
「あの人とも戦うけど」　
　これからとだ、綾乃は話した。
「伊藤さんはたらしで」
「男の人もな」
「そやけど山縣さんはちゃうね」
「そやな、しかし山縣さんも質素やったが」
　その暮らしはというのだ。
「伊藤さんは極端やな」
「衣食住あればええって」
「ある意味凄いわ」
「ぶっ飛んでる位やね」
「そや」　
　まさにというのだ。
「そう言ってええわ」
「食べるものもあればええで」
「お家も住めたらええ」
「服は着られたらええ」
「一国の首相でな」
「位人臣を極めたのに」
「そやけどな」
　それでもというのだ。
「そんな人やった」
「そのことが凄いね」
「ああ、それでこれからな」
「その伊藤さんとも戦うね」
「そうなるわ」
　中里はこう言うと銃剣で装備したオーガの黒い軍服の者達が来たのを見て彼等に術を放って倒した、そうしてだった。
　伊藤の前に仲間達と共に来るとだ、彼に明るく言われた。
「おう、元気そうだな」
「はい、この通り」
「ゆっくり休んだな」
　伊藤は中里に笑って言った。
「じゃあやるか」
「はい、しかし」
　中里は明るく気さくに言う伊藤に笑って返した。
「ほんま聞いた通りの人ですね」
「わしはか」
「そうです」
「わしはわしだからな」　
　これが伊藤の返事だった。
「公の場では畏まるがな」
「そうやないとですか」
「そんなことはなしだ」
　やはり明るく笑って言う。
「こだわらんし飾らんぞ」
「そうですか」
「それでそこの娘さん達はな」
　綾乃とシェリルにも言うのだった。
「可愛いな、しかしわしは無名の芸者のみでな」
「お相手の人は」
「そうした話はなしだ」
「そうですか」
「そこは言うぞ、それで今から戦うが」
　伊藤はさらに言った。