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金木犀の許嫁

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第三十九話 めでたい幽霊がその一

                第三十九話  めでたい幽霊が
 二人は夫婦善哉を出ると道頓堀に出た、その中を一緒に歩いたがここで夜空が佐京にこんなことを言った。
「織田作さん絶対にこの道頓堀もね」
「よく歩いたね」
「ええ、まさにね」
 道頓堀はというのだ。
「千日前や法善寺横丁の間にあるし」
「来ていない筈がないね」
「昔はここ芸の小屋が多かったらしいから」
「その芸を見ていたんだね」
「結構作品に浄瑠璃とか出るから」 
 この文芸がというのだ。
「だからね」
「ここにもよく来てたんだね」
「そうだと思うわ」
「そうなんだね」
「兎に角大阪が好きで」
 そうした人でというのだ。
「芸もね」
「大阪の芸だね」
「上方文化っていうけれど」
「その上方文化の中で生きた人だね」
「そうなの」
 織田作之助という人はというのだ。
「まさにね」
「そうなんだね」
「美味しいものを食べて」
「芸を見て」
「大阪の人達の中にいてね」
 そうしてというのだ。
「生きていたのよ」
「それが織田作さんだね」
「だから偉そうなところはなくて」 
 その作品にというのだ。
「親しみやすいのよ」
「そして読みやすいんだね」
「そうなの」 
 まさにというのだ。
「あの人の作品はね」
「そこもいいところだね」
「そうなのよ」 
 こう言うのだった。
「本当にね」
「そうなんだね。俺もここは何度も来てるけれど」
 佐京は周りを見回しつつ話した。
「昔の道頓堀は知らなかったよ」
「そうだったの」
「知ってるのは今の道頓堀でね」
 そうであってというのだ。
「蟹やエイリアンの看板があって」
「昔は河豚もあったわね」
「それで紅白のおじさんのね」
 この人のというのだ。
「お人形もある」
「そうした場所よね」
「それで阪神が優勝したら」
 橋の方も見て話した。
「その時はね」
「川に飛び込む」
「そうするわね」
「そうした場所だってね」
 その様にというのだ。
「思ってるけれど」
「そうね」
「元々は」
「そうなの、芸の場所でね」
「織田作さんも楽しんでいたんだね」
「そうなのよ。だからね」
「だから?」
 佐京は問うた。
「というと」
「いえ、浄瑠璃とかもね」
 この文芸もというのだ。 
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