神々の塔

「実際な」
「有り難いな」
「その国にとってな」
「国を発展させてくれてしかも見ていておもろい」
「痛快なまでにな」
「どの国に出てもな」
「おもろい人や」
　そうだというのだ。
「ほんまな」
「そうやな」
「それでな」　
　芥川はさらに話した。
「一つ思うことはな」
「何や？」
「実は女好きで男の人もたらすが」
　それでもというのだ。
「そっちの趣味はなかったらしい」
「あら、そうなの」
　アレンカールは芥川の今の話に意外といった顔になった、そしてそのうえでこうも言ったのであった。
「同性愛はなかったの」
「長州藩はそうした傾向があまりなかった様でな」
　伊藤が長州藩出身だからこう言ったことは言うまでもなかった。
「それでな」
「そっちの趣味はなかったのね」
「そうらしいわ」
「そうなのね」
「薩摩藩や土佐藩ではあったが」
　長州藩と同じく幕末と維新で活躍した人材を出したこの両藩はというのだ。
「長州藩はな」
「あまりなかったのね」
「その辺りはそれぞれの藩でな」
「違ったのね」
「そやった、ただな」
　芥川はこうも話した。
「土佐藩出身でも坂本龍馬さんはな」
「そっちの趣味なかったの」
「女の人だけやったらしい」
　そちらの趣味はというのだ。
「どうもな」
「そやったのね」
「それでな」　
　そのうえでというのだ。
「ほんま一説やが梅毒にな」
「なってたのね」
「あの頃遊郭に好んで行けば」　
　そうすればというのだ。
「普通にや」
「梅毒になっていたわね」
「それで川柳にもよお詠われてた」
　梅毒それにこの病に罹った者達のことがだ。
「馬鹿息子親の目盗んで」
「鼻が落ち、か」　
　リーが続いた。
「そうなるか」
「そや」　
　芥川はその通りだと答えた。
「まさにな」
「やっぱりそうなるな、梅毒になれば」　
　リーはこの病気の症状を具体的に話した。
「まさにな」
「鼻が落ちるな」
「髪の毛が抜けてな」
「身体中に斑点が出てな」
「それが膿んで瘡蓋にもなってな」
　ここから瘡毒と古来は言われたのだ。