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英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

作者:sorano
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第53話(三章終了)

10月12日――――――



~アークライド解決事務所~



――――――なお、ジュディスさんは最優秀賞(レオンドール)を逃したことを真摯に受け止め…………今後は後輩でなくライバルとしてニナさんに来年の両映画祭でのリベンジを誓ったんだとか。いや~、早くも次回作の制作を仄めかしたゴッチ監督も含めて、今後の動向が楽しみですね。それでは次の特集です。先日発売されたクインシー社の新商品――――――





「ったく、どいつもこいつも呑気なモンだ。エロ監督に至っちゃ、あの事件を映画化するとか抜かしてるんだったか?」

サルバッドでの”出張業務”を終えてから数日後ラジオのパーソナリティが語ったサルバッドでの映画祭の件を聞き終えたアーロンは呆れた様子で呟いた後ある話を思い返した。

「あはは………………逞しいですよね。転んでもただでは起きないと言いますか。…………さすがに薬物やマフィアの件は大きくは取り上げられなかったですね。」

「まあ、不安を煽るだけだろうしな。おまけに世間では服役中であることになっている”風の剣聖”や”キリングベア”と”司法取引”をして一時的に釈放して捜査に加わらせているなんて話が世間に知られたら、帝都(クロスベル)が騒がしくなることも目に見えているからな。GID(ルネたち)やメンフィル・クロスベル両帝国政府の情報規制に、公国方面からの働きかけの賜物だろう。」

アーロンの言葉にアニエスは苦笑した後あることを呟き、アニエスの言葉にヴァンは静かな表情で答えた。

「あの後、殿下達もすぐ回復されて良かったですね。サァラさんとシャヒーナさんも、ちゃんと借金を返せたみたいですし。」

「クク、いきなり耳揃えて返したから闇金業者のヤツらも魂消たみたいだが。」

フェリとアーロンはそれぞれサルバッドから去る際の出来事を思い返しながら呟いた。



~数日前・サルバッド~



「…………本当にありがとうございました。皆さんがいなかったら今頃は…………翼の女神(アルーシャ)の導きに感謝します。」

「ま、お前さん達の実力だろ。俺達はあくまで背中を押しただけさ。」

「ヴァンさん…………」

礼を言う自分に対して謙遜した答えを返したヴァンをサァラは微笑みを浮かべて見つめた。

「今回は時間がなくて残念でしたけど、いつか踊りを教えてくださいねっ。」

「えへへ…………うん、約束ねっ!今回のお返しも絶対するから――――――またね、お兄さんにフェリたちも!」

フェリの言葉に対してシャヒーナは無邪気な笑みを浮かべて答えた。



~現代~



「…………本当に素敵なご姉妹でしたね。そういえば早速、大きな舞台が決まったんですよね?」

「ああ、クロスベルの”アルカンシェル”とのコラボ公演か。”アルカンシェル”のアーティストとしても所属することで女優とアーティストの二重生活を送ることになるそうだがアルカンシェルがあの姉妹を最大限にサポートするとの事だからな。ま、あの姉妹なら何とかやって行けるだろ。」

「ハッ、裏についても胡散臭えが表のコネも随分増えたじゃねえか?トップ女優どもに売れっ子監督、将来有望な踊り子姉妹、元伝説の凶手兼アルカンシェルの”舞姫”にクロスベルの”英雄”たちとはなぁ。…………さぞやに下がって鼻の下延ばしてんだろ、オイ?」

「やにさがる…………?」

「…………ヴァンさん?」

アーロンのヴァンへの指摘の意味がわからないフェリが首を傾げている中、意味を知っているアニエスはジト目でヴァンを見つめた。

「ねえっつの………人聞き悪ぃ事を言うな。大体な、お前らも含めてここまで手広くやるつもりは無かったんだからな?それが今やGIDやエルザイム、果てはメンフィル・クロスベル連合方面まで目を付けられる始末…………面倒臭すぎだろ。」

対するヴァンは反論した後自分達が目をつけられた勢力を思い浮かべて嫌そうな表情を浮かべた。



「あはは………………でも半分以上はヴァンさん自身のせいのような。」

(”自業自得”とはまさにヴァンの事を示しているでしょうね。)

「半分どころか100パーだろ。」

「えへへ、公太子殿下に気に入られたのも凄いと思いますっ。」

苦笑を浮かべているアニエスの指摘に続くようにメイヴィスレインとアーロンはそれぞれの考えを口にし、フェリは無邪気な笑みを浮かべてサルバッドでの別れ際のシェリド公太子達の事を思い返した。



~数日前・サルバッド~



「―――――不甲斐なき我が失態、収めていただき感謝に堪えません。」

「いやはや、とんでもない目に遭ったが色々な意味でいい経験にもなったよ。約束通り、報酬には色をつけさせてもらった。後日届けさせるから楽しみにしてくれたまえ。」

「はは、恐れ多いですが有り難く受け取らせてもらいますよ。」

感謝の言葉を述べたナージェに続くように苦笑しながら答えた後ウインクをしたシェリド公太子にヴァンは苦笑しながら答えた。

「しかし、本当に興味深い事件だった。アルマータに”ゲネシス”とやら…………――――――そしてヴァン君、”君自身”にもね。」

意味ありげな笑みを浮かべたシェリド公太子の言葉にヴァンは苦笑を浮かべた。

「そういやあの天使の刑事の話だと、あんた達、アルマータの件を利用してメンフィルに嵌められたかもしれないらしいが、あれからメンフィルから何か文句とかあったのかよ?」

「ア、アーロンさん。」

「幸い………と言っていいかどうかわからないけど、今の所は南カルバード総督府から私へもそうだけどイーディスにある我が国の大使館にもメンフィル帝国方面から今回のサルバッドでの騒動の件について何も言って来ていないよ。結果的とはいえ大きな被害が出る事なく映画祭が成功したからか、エースキラーの諸君がメンフィル帝国に言い含めておいてくれたか、もしくはルファディエル警視の推測は杞憂だったのか…………いずれにしても、メンフィル帝国(むこう)から何も言ってこないのであれば、我々もわざわざ藪をつつくような事はしないさ。」

「その…………殿下は本当にそれでよろしかったんですか?」

アーロンのシェリド公太子への質問にアニエスが冷や汗をかいている後に答えたシェリド公太子の答えを聞いたフェリは複雑そうな表情でシェリド公太子に確認した。



「ああ。仮にルファディエル警視の推測が当たっているとしているならば…………メンフィル帝国もそうだがクロスベル帝国にも誤解されるような事をしていた私を含めたサルバッド公国にも落ち度があるからね。”ゼムリア連合”に調印したとはいえ、かつての二大国であるエレボニアを衰退させ、カルバードを滅ぼしたクロスベル帝国もそうだがメンフィル帝国に対して私を含めたサルバッドの人々は口にはしなくても”侵略国家”というイメージを抱いていて、二帝国との距離を測りかねていて、未だ二帝国との直接的な国交は行っていなく、二帝国との国交を行う際は北カルバード総督府に仲介してもらっていたからね。現北カルバード総督であるグラムハート総督が”中央”――――――クロスベル帝国による干渉を抑え続けている事や中央からの北カルバード州への莫大な”援助金”の件で”中央”から警戒されつつある事も知っていながらも、北カルバード総督府との関係ばかり深めていたら、二帝国からそんな風に思われても仕方無い事さ。」

「殿下…………」

「……………………」

複雑そうな表情を浮かべて語るシェリド公太子の様子をナージェは心配そうな表情で見つめ、アニエスは辛そうな表情で黙り込んでいた。

「二帝国からの誤解を解く為もそうだが、サルバッドの繁栄の為にも今後は二帝国との直接的な国交を本格的にするつもりさ。私が尊敬している”彼”も、祖国が二帝国との戦争によって大敗して衰退し、今はメンフィル帝国に”保護”という名目で”総督府”を置かれながらも国際協調を唱え、各国ともそうだが二帝国との国交も自ら積極的に行っているのだから、そんな”彼”を目標にしている者の一人として見習わなければね。――――――そういえばヴァン君は二帝国の一部の皇族ともそうだが、かの”大英雄”殿との”伝手”も持っているのだったね。その内君の”伝手”に頼る機会が訪れるかもしれないね?」

「はは、自分としてはそんな機会は訪れてくれない方が助かりますが…………その時が来れば可能な限りの協力はさせてもらいますよ。」

決意の表情で答えた後興味ありげな表情を浮かべたシェリド公太子に視線を向けられたヴァンは苦笑しながら謙遜した様子で答えた。

「アークライド解決事務所…………MK社同様、今後とも応援させてもらうよ。」

そしてシェリド公太子はヴァン達に対する応援の言葉を送った。



~現代~



「だからありゃあ気に入られたっつーより”目をつけられた”っつうんだよ。ま、報酬の”色”については遠慮なく受け取るけどな――――――フフフ。」

サルバッドでの別れ際のシェリド公太子の様子を思い返したヴァンは呆れた表情で指摘した後口元に笑みを浮かべて笑っていた。

「やっぱり7割以上は…………」

「いや、120パーだろこりゃ。」

ヴァンの様子を見た助手達全員は冷や汗をかいて呆れた後アニエスは苦笑し、アーロンはからかいの表情を浮かべた。

「だがまあ、手を広げすぎるとやっぱロクなことはねぇな。第一マルドゥックは関係ねぇだろ、マルドゥックは。”出向サポート”はあの時限りで今は元通りのテスター契約だけだしな。」

「え…………」

「???」

「は?」

中身が入ったコーヒーカップを手に立ち上がって呟いたヴァンの言葉を聞いた助手達はそれぞれ不思議そうな表情を浮かべて呆けた声を出し

「…………?なんだよ、その反応は。」

助手達の反応にヴァンは眉を顰めた。

「えと…………その。」

「…………おい小娘。また黙ってやがったのか?」

「そ、そんなことは…………あれはアーロンさん達の時だけで。」

ヴァンの指摘にフェリが答えを濁している中、アーロンはアニエスに問いかけ、問いかけられたアニエスは困惑の表情で答えた。



「失礼いたします。」

するとその時扉がノックされ、女性の声が聞こえてきた。

「っと、客か。はいはいお待ちくださいよっと。」

女性の声を聞いて依頼に来た客と判断したヴァンは扉を開けた。

「………………………………まあ待て、落ち着け。」

扉を開けた瞬間最近共に行動をした見覚えがありすぎる女性を目にしたヴァンは少しの間黙った後扉を閉じて独り言を呟いていると、扉が開かれると女性――――――リゼットがヴァン達の前に姿を現した。

「皆様、ご無沙汰しております。といっても5日ぶりですが。」

「時間ピッタリかよ、クソ真面目なメイドだな。」

「道には迷いませんでしたか?」

リゼットの登場にヴァンが固まっている中助手達は全く動じずアーロンとアニエスはそれぞれリゼットに声をかけた。



「ええ、ご住所は以前から把握しておりましたので。改めて、”これからお世話になります。”」

「はあああああああああ…………っ!?おいおい、ちょっと待て!いったいどういう――――――」

そしてリゼットが自分の所で働くことの宣言に我に返ったヴァンは困惑の表情で声を上げた後リゼットに理由を要求した。

「先日の事件についてオレド本社での各種報告とリスク分析が完了いたしました。その結果、極めて異例ではりますが”現地SC"としてのサポート業務継続の必要性が検討され――――――この度めでたく、アークライド解決事務所への”長期出向”の申請が下りた次第です。」

「……………………」

「その、私達の事情も本社には伏せつつメアちゃんも含めてサポートできるそうで…………」

「シャード指南やその他サービスなんかも色々と受けられるらしいですっ!」

「ああ、なんか導力ネットを使った最先端のサービスが試せるらしいなァ?」

リゼットの説明を聞いたヴァンは口をパクパクしている中アニエスやフェリはリゼットの説明を補足し、アーロンはあることをリゼットに確認した。



「はい、ヴァン様同様、皆様にはテスターとして協力していただければと。もちろん不都合な契約にならないよう、誠心誠意、計らわせていただきますので。」

「ふふっ、リゼットさんでしたらそのあたりも安心できますから。」

「……………………えっと…………」

「ああ――――――すでに3Fの部屋も契約済み、荷物も置いてまいりました。伺います限り、非正規雇用の税務手続きや保険申請なども滞っていらっしゃるご様子――――――諸々サポートさせていただきますので、遠慮なく申し付けてください。」

ようやく我に返ったヴァンがリゼットに声をかけるとリゼットが更なる説明をし、リゼットの説明を聞いて完全に外堀を埋められた事を悟ったヴァンは苦笑いの表情で固まり、リゼットに指摘する答えを失くした。

「全部押し付けるのは流石に…………その、私も勉強させていただきますので!」

「あ、早速ですけどシャード足場を使った戦術指南を…………!」

「お前ら――――――俺を差し置いて話を進めまくってんじゃねええっ!!」

そして助手たちが自分を差し置いてリゼットと話を進め始めるとヴァンは思わず声を上げて突っ込んだ。



こうして…………アークライド解決事務所にマルドゥック社からの”長期出向”という形で”押しかけ現地SC"が加わった――――――



 
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