金木犀の許嫁
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第三十六話 織田作之助の街その十四
「私鉄もあって」
「地下鉄もあって」
「その地下鉄がね」
「物凄く複雑だね」
「そうだから」
それでというのだ。
「本当にね」
「あそこはわかりにくいね」
「結構長く住まないと」
東京にというのだ。
「わからない位にね」
「迷路みたいに複雑だね」
「そうらしいわ」
「あっちはそうなんだね」
「ええ、まあ東京で暮らすことはね」
夜空は少し微妙な顔になって話した。
「私達は多分ないわね」
「そうだね、将来就職して」
佐京は席に隣同士で座っている夜空に話した。
「関東に転勤しないと」
「ないわね」
「そうでもないとね」
「あっちで暮らすことはないわね」
「そうだね、俺はこっちの方が好きだよ」
佐京は微笑んで言った。
「関西の方がね」
「私もよ。やっぱり馴染めるわよね」
「関西はね」
「そうよね、東京に行ったことがあるけれど」
「馴染めないね」
「どうもね」
佐京に微妙な顔になって答えた。
「そうだったわ」
「俺も馴染めなかったよ」
佐京もこう言った。
「あっちに行って」
「実感したわね」
「どうもね」
「馴染めないわね」
「寒いしお料理の味もね」
「違ってて」
「それでね」
そうであってというのだ。
「あまりね」
「好きじゃないのね」
「東京は」
「そこは同じね、私も関東の味は」
「東京のそれは」
「おうどん本当に黒いし」
そのつゆがというのだ。
「それで味もね」
「辛いね」
「そうだしね」
「それもあるよね」
「そうだしね」
「東京のお料理は」
「合わないわ」
そうだというのだ。
「私も」
「同じだね、やっぱり俺達は関西の味がね」
「いいわね」
「何といってもね」
「そうね、じゃあその大阪のカレーをね」
「自由軒のね」
「食べましょう」
「難波まで行ってね」
こうした話を地下鉄の中で話してだった、そのうえで難波に着いてだった。二人はまずは自由軒に向かったのだった。
第三十六話 完
2024・8・1
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