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金木犀の許嫁

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第三十六話 織田作之助の街その十

「行って回ってるのよ」
「幽霊になって」
「そうなのよ」
 こう話した。
「今もね」
「そうなんだね」
「そう、そしてね」 
 それにというのだった。
「織田作さんは東京でお亡くなりになったけれど」
「大坂にだね」
「お墓はあるのよ」
「生まれ育った」
「東京でお亡くなりになって」
 結核であった、やはりこの病は彼の命取りになったのだ。
「そうしてね」
「大阪に戻って来たんだ」
「そうなの、ご遺体が戻って」
 大阪にというのだ。
「あちらでもやったらしいけれどお葬式をね」
「行って」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「今はね」
「ここにお墓があるんだね」
「そうなの。やっぱり大阪の人ってね」
 その様にというのだ。
「思うわ」
「お墓もあるから」
「だからね」
「そうだね」
 佐京も確かにと頷いた。
「そこまで考えたら」
「織田作さんがまさにね」
「大阪の人だね」
「何から何までね」
 それこそというのだ。
「大阪の人だよ」
「織田作さんはね」
「そうだね、それじゃあ」
 佐京はそれでと言った。
「このお寺にも来てよかったってね」
「思えるわね」
「うん」
 夜空に微笑んで言った。
「そう思ったよ」
「そうよね、ここもね」
「織田作さんの場所だね」
「そしてね」
 夜空はさらに話した。
「この辺りお寺集まってるわね」
「凄くね」 
 佐京も確かにと答えた。
「そうだね」
「それは何でもね」
 夜空はそうなっている理由も話した。
「豊臣秀吉さんが集めたらしいのよ」
「お寺を」
「一つの場所にね」
「それでなんだ」
「今もね」
「この辺りにお寺が集まってるんだね」
「そうらしいわ」
「そうなんだね」
「このことはお祖父ちゃんから聞いたの」
 そうだったというのだ。
「実はね」
「そうなんだ」
「そう、そしてお墓もね」
 これもというのだ。 
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