| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

同志諸君に告げる。これが理不尽だ!

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第12話

 
前書き
〜デ・ブランに侵攻するミドガルド艦隊構成〜
・フリゲート(アークワイズ級)1000隻
・駆逐艦(AC721スサナー級)1200隻
・巡洋艦(プロテクト級、『KCCPV2.0級艦載型』)500隻
・戦艦(ロジャー級、エターナルストーム級)2隻
・プロヴィデンス級デストロイヤー4隻
・空母(セレスター級)180隻
・補給船300隻


〜デ・ブラン本星侵攻するミドガルド艦隊構成〜
・巡洋艦(『CAS066ミスキ級』)70隻
・戦艦(エターナルストーム級)120隻
・補給船10隻
・揚陸艦800隻 

 
〜〜デ・ブラン本星より100と数光年 インダク宙域〜〜

 「清々しいまでの大船団だ…恐らく今後、数十年は見ることは無いだろう」

 デ・ブラン帝国ミドガルド侵攻宇宙軍の最高指揮官のバイオス・スウォルト将軍。齢65歳、『侯爵』の称号を持ち数々の死線をくぐり抜けてきた猛将である。

 そんな彼が指揮するデ・ブラン帝国宇宙軍は、総兵力10万の将兵を抱え、美しい星々の大海原を、軍船4,000隻を超える大船団で航行していた。

 「ミドガルドの艦艇など我が足元にも及ばないのやもしれぬな」

 デ・ブラン帝国の艦艇は駆逐艦から戦艦まで全てが大きい。駆逐艦は150mで巡洋艦は駆逐艦の2倍であり戦艦は400mだ。バイオス・スウォルト将軍が座乗する艦艇は全長600mを誇る弩級戦艦である。

 無論、艦艇の大きさだけでは無く技術面においても自国より上はいかないだろうと絶対の信頼がバイオス・スウォルト将軍にはあった。最新技術であるシールド発生装置は当時、試作型の関係の為、極少数のみでの運用であったが10年前より全ての艦艇に搭載されるようになり、融合炉のアップグレードにより攻撃力は強力となった。

 それに加え、光の壁を超えることが出来る全艦艇が持つこのワープシステムは帝国のさらなる進歩を約束した。

 勝利の神は我が帝国にやってくる。バイオスはそう信じて疑わなかった。……先程までは。

 「何故だ!?たった100隻しか無いミドガルド艦隊に何故こうも手こずるのだ?!」

 「将軍ッ、戦闘不能の艦艇は2割を突破しました!」

 そんなことは分かっている!と部下に怒鳴るがそれだけでは目の前で起きる現実は変わらない。

 どうなしてこうなっている、とバイオスは起きている現実から目を逸したいと強く願いたいくらいだ。

 数は100と少ないが其れ等の多くは250〜300m級だが、その内の三分の一がデ・ブラン帝国では大型艦に分類されるだろう。

 三分の(ミドガルド)はバイオス将軍が座乗する弩級戦艦に匹敵する程であった。砲塔の数は船体に釣り合わないがそれでもデ・ブラン帝国より上の光学兵装が使われている。防御兵装においてもシールドが使われており帝国の先を行く技術であるとバイオスは悔しさを胸に抱きながら見抜いていた。

 「陣形を立て直すッ。戦艦を前へ、巡洋艦は左右より2方向で叩く!。ただちに…「バイオス将軍!」今度は何だッ?!」

 このままではまずいっと考えたバイオス将軍は陣形を立て直そうとするが通信士より掛けられ、バイオスは振り返る。

 通信士は震えながらバイオスに静かに報告する。

 「巨大な重力破を確認。…来ます」

 バイオスがメインパネル(全面)に振り向くと同時に現在もなお、交えている艦影(かんえい)と見たことの無い艦影の、大艦隊が敵艦隊(ミドガルド)後方にワープアウトした。

 多くが300m級と600〜700m級だが、その内の6隻は帝国の基準では超大型に分類される程のサイズを持っていた。

 4隻は1000m級の艦であり、更に一隻だけ現在のデ・ブランからすれば”あの艦艇”と同等の巨大な艦であった。

 全長1200mを誇るその艦と円柱型のフォルムをする戦艦で2000mの長大な棒のような形状をしている艦艇は明らかに敵艦隊(ミドガルド)の旗艦と総旗艦であることを誰もがそう理解する。

 「ワ、ワープアウトした艦艇数は……3000を、確認」

 全身の毛穴という毛穴に全てが栗立つ恐怖を感じながらバイオスは心中で絶叫せずにはいられなかった。

 バイオスは状況を理解することが出来なかった。敵艦隊後方に現れたミドガルド(増援)艦隊の放った砲撃により、次々と我が味方艦艇が立て続けに撃沈された。別格なのは円柱形のフォルムをする総旗艦だ。どの艦隊よりも前方に居たサーリク率いる分艦隊600隻は陣形もままならず、その圧倒的破壊力を持つ緑色をした輝く光線に飲み込まれていき、ミドガルド総旗艦だけでの砲撃で60隻以上の艦隊が光の渦へと消し去られ、次にはミドガルド総旗艦を除いた艦隊の攻撃により500隻以上が撃沈ないし轟沈した。

 ミドガルド艦隊特有の動力機関「エリスドライブ」が繰り出すその莫大なエネルギーは、総旗艦である(エターナルストーム級)の2000mにも及ぶ粒子励起装置と加速装置により数倍に膨れ上がり、サーリク分艦隊を一挙に飲み込んでいく。それはもはや砲撃の域を超えており宇宙の一角に新たな太陽が出現したようでもあった。
 
 あまりの急展開と一方的で絶望的な暴力にバイオスは口を開けたまま固まることしか出来なかった。サーリク分艦隊からの救援要請と側近の呼びかけにより、すぐに我に帰ったバイオスは指令を下した。

 (ミドガルドの戦力は我らの下回ることは無い。上であったことが今分かった。情報部はダミーを掴まれたようだ。…撤退など許される筈もない。そして、あってはならないことだが事実を報告する必要であると嫌でもそう直感が伝わってくる)

 「こちらミドガルド侵攻軍艦隊将軍バイオス。進撃中に艦隊による攻撃を受けた。敵艦隊数は3000。我が侵攻軍は被害甚大であり既に壊滅状態。
 これより残存艦隊で現宙域より戦略的後退をしつつ、敵艦隊を迎え撃つ。本国からの増援を強く要請ーー」

 「バイオス将軍!「なんだ?!人が話している時に…」本国より増援です!。数は1隻ですが”アレ”がやって来ました!?」

 (なんだと!?)

 通信士からの報告と同時にデ・ブラン艦隊後方にワープアウトとした艦艇が現れた。何処か生物的な見た目をし、緑と白、一部黄色で構成されたコレはデ・ブランの艦艇に共通するものであった。

 全長1200mを誇るその艦はデ・ブランでは2隻しか存在しないものである。表面を見るに数え切れぬ程大量の武装を搭載し、装甲、シールドは遥かに上を行く超弩級戦艦である。そして、艦首部分が大きく空いているのは『切り札』を搭載しているからであった。

 …そしてその艦首の大砲口に赤黒い光が蓄積され始めた。それはどんどん大砲口内を満たしていき、溢れんばかりの光となり球体のように集約していく。

 人によっては美しく見えるそれは、ミドガルド艦隊を捉えた。

 「デ・ブラン砲、発射ァァア!!」

 砲口で湧き立つ光が急速に広がり、一気に収束したかと思うと、勢い良く極太のエネルギーの束を放出し無理やり1本に束ねられたエネルギーは目標に向かって突き進んでいき、周囲に放電を起こしながら進み続け、ミドガルド前衛艦隊を飲み込み、やがては全てを飲み込んだ。

 「……」

 そして、、

 「やったぞー!?」「どうだ思い知ったか!!」「デ・ブラン帝国バンザーイ!!」

 デ・ブランの旗艦のクルーは喜びの声をあげ、皆抱き合い、喜びを分かち合った。

 だがその中で同じく喜びの声をあげていたバイオスだが、ふと彼の背筋には冷たい汗が降りていた。

 (デ・ブラン砲を放った際、ふとミドガルド総旗艦を中心として薄い緑のリングのようなものがミドガルド艦隊を覆うように展開されたような……ま、まさか…)

 そして、バイオスの考えは的中することとなる。

 「ミドガルド艦隊は…健在です」 

 「………は?」

 バイオスの視界が眩む。副官と側近の声が遠く聞こえる程、思考が停止していた。ようやく得た満足度を瞬時に粉砕したのだ。

 もうどうやっても敵う相手ではない。とバイオスは思った。

 「し、将軍!どうしますか⁉︎」
 
 「……だ。」

 「え?」

 「撤退だ…全軍撤退。全艦隊通信で残っている船にそう伝えるのだ」

 「ま、まだ軍船は残っております!それに、そんな事をすれば⁉︎」

 「わかっておる…十中八九私は殺される。だが『私だけだ』。お前達は助かるから安心しろ」

 「将軍……」

 そうして、バイオス率いる5000隻。この戦いで1000隻あまりとなったデ・ブラン艦隊は、微量の赤い粒子を放出しながらインダク宙域からの撤退を開始した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 《ミドガルド艦隊総旗艦エターナルストーム級》(オリビア”達”SIDE)

 ミドガルド前衛艦隊800隻は鉄くずないし消滅したか。単艦のみで艦隊全体を重力防御フィールドで覆うことは無理があったか。『リンク=エリスフィールド』であれば防げたのかもしれないな。…しかしあのデ・ブラン1200m級から放たれたアレは…、

 「余剰次元の爆縮を検知、か…これはどうみる同志(もう一人の私)」

 「あぁ、同志(もう一人の私)この波長。…これは似ているな。」

 「あぁ…間違い無い」

 それも星を一撃で持って死に至らす兵器。これはヤマトがバラン星を惑星崩壊に至らせたもの。かつてイスカンダルは波動エネルギーを兵器に転用していた。……名を、




 「「「波動砲だ」」」

 ……ヤバいよな?

 「このことは…」

 「既に同志(創造主)にも伝わっている」

 今更で唐突だがこの艦の全てが同じ容姿をしている乗組員。なのでオリビアが沢山居る。

 「しかし、ヤマトに乗っている同志(もう一人の私)は大丈夫だろうか?」

 「大マゼランにいる同志か。問題は無いだろう、先の戦いでデ・ブランの戦力は大幅に削れた。しかし今更であるが疑問だ。そもそも今まで奴等を何故見つけることは出来なかった?あらかた調査の方と索敵はしたつもりであったのだが…」

 「とにかくデ・ブランは潰す。これは決定事項だ…では」

 「これより一部艦隊を除き、デ・ブラン本星に向かい包囲する。…もっとも既にその任務に当たる艦隊は間もなく到着予定だが」

 「そして、ヤマトに乗っている同志へ迎えを送る。1000隻の艦隊で向かわせよう。元々デ・ブラン方面の外縁部にてこの1000隻を含めて合計5000隻が集結していたんだ。その内の1000隻が今、抜けても戦況は揺るぎないし問題は無いだろう…同志よろしく頼む」

 任された。さぁ、待っていろ。同志よ、今迎えに行くからな。 
 

 
後書き
「本艦はコスモリバースの受領を終え、これより地球へ向け帰還の途につく。…帰ろう、故郷へ」

「錨あげーい!機関始動!宇宙戦艦ヤマトっ、発進!!」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧