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バイオハザードなんてクソくらえ!【未完】

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第13話

 アリスは目を閉じ、モーテルの傍にあるガソリンスタンドの支柱に寄り掛かっていた。

 「アリス、ちょっといい?」
 
 アリスは目を開け、声が聞こえた方向へと振り向きつつ、”彼女”へ頷いた。アリスの視界にはクレアが映り、彼女はアリスの目の前に立った。

 「皆、あなたが助けてくれたことに感謝してるわ。でも…」

 「”早くこの場から消えて欲しい”って?」

 クレアが何が言いたいのかを察したアリスは、苦笑いを浮かべつつ彼女へと口を開いた。

 「誤解しないで」

 クレアは違うと、謝罪し、続けて言う。

 「本当に感謝しているのよ。でも、あなたがしたことを皆が話題にしてる。そして恐れてるわ」

 当然だと思う、とアリスは言った。自分は人間であって人間では無いのだから…。

 外見は極普通の女性に見えるにせよ、アンブレラ社はアリスをマットと同じ怪物に変えたのだ。どうして他の人と一緒に過ごせる? 自分がどんな人間で、どんな超能力があるのか、アリス自身にもよく分からない。

 だから、恐れられているのは仕方が無い。そうアリスは思った。

 「あなたの周りだけじゃないわ」

 クレアは顔ごと今日埋葬した10人の墓へと振り向いた。数秒後、アリスへと振り向き戻った。

 「そうそう、今朝のアレ…説明して欲しいのだけれども」

 アリスは溜息をし、クレアの質問に答える。

 「出来ればいいんだけど、彼等は私に何かしたの。私には説明出来ない」

 『彼等』がいったい誰を指すのか、言う必要も無いだろう。何故なら今では、世界中がアンブレラ社の罪を知っている。だが悲しいことに、その罪を追求するよりも大きな問題を抱えていた。

 野営地を見回しながら、アリスは続けて言う。

 「皆が怖がるのも無理は無いわ。正直、私も自分自身が怖いもの」

 「・・・」
 
 自笑したアリスを、クレアは黙って見つめた。

 「留まる気は無いけど、出来ることなら手伝うわ。その後は…二度と私には会うことは無いでしょうから」

 「…すると、また1人になるわ」
 
 「そうよ」

 「辛い生き方ね」

 「少し慣れる必要があるわ」

 アリスは肩を竦めて、クレアは鼻で笑った。

 アリスはクレアの瞳を見て思う。

 (クレアは希望を宿していない。どこか諦観して、絶望している…)
 
 ふと、アリスはアラスカのアルカディアについて書かれた赤い日記帳を思い出した。絶望には、いつだって希望が効くのだから。
 
 「クレア、実はーーー」

 



 「ーーークレア、この半年で1番有望な情報だ」

 「アラスカが?」

 「これは無視出来ない。行ってみる価値はある」

 「マイキー、それがどれだけ大変な旅か、分かっているの?」

 「わ、分かってるよ。クレア」「あぁ、長い事は確かだな」

 クレアは野戦用トラックの荷台に集めたメンバーを見ていった。カルロス、マイキー、チェイス、モーガン、そしてアリス。

 今回、クレアが話し合いの場を設けたのはアリスより「少し前に見つけたものがあるの。きっと、皆の役に立つ」と熱心に口説かれたのがきっかけだった。

 「で、でもクレア、この情報には…」

 クレアは深い溜息が出るのを、寸前で堪えた。確かに行ってみる価値はある。だが、それは余裕があるからこそだ。

 それに、だ。無線に応じて救助に向かったことなど何度もあった。…だが、手遅れだったのが殆んど。

 これには誰もが口を閉ざす他が無かったのだがそんな中、アリスはマイキーを援護するよう口を開く。

 「だけどこの日記帳には、感染者はいないと書かれてる。隔離されてて、安全だと」

 「私は皆の命を預かっている者として、そんな甘い夢は語れないわ」

 クレアは憤り、アリスを睨みつけた。アリスは睨みこそはしていないが、真っ直ぐとクレアを見返した。

 「クレア、夢こそが必要なのかも」

 クレアはくるっと彼へ振り向く。意見したのは、今まで口を閉ざしていたカルロス。

 「皆を見てみろ…」

 クレアは視線をカルロスから”皆”にやった。

 子供大人関係なく暗い影を落としていた。

 「半年前、俺達は50人だったが、今では20人しかいない。絶望ムードだ。必要なのは希望だ」

 「希望、か…」

 クレアはこの荷台に集ったメンバーを見た。アリスは表情が分かりづらいが、他は違う。彼等の瞳には、希望に縋っていた。

 (カルロスの言う通りかもしれない。少なくとも選択肢を選ぶ義務はある。全員に)

 リーダーといえども、1人で決められることではない為、クレアは集会を開こうと決意した。

 10分後、野戦用トラックの荷台周囲に生存者達は集まった。ひとり残らずクレアを見つめていた。

 「皆を集めたのは他でも無い。集めたのは…これから重大な決断を決めるからよ。でも、私一人で決めることは重すぎる。単刀直入に言うわ。…仲間(生存者)が生き残っているのかもしれないの」
 
 その言葉を聞いた瞬間、ザワザワと騒めき始めた。誰もが「何処に?」と唱えていた。

 「アラスカに。其処は、感染が及んでいない可能性がある。でも保証は無いの」

 だから、とクレアは続ける。

 「選択肢は2つ。このまま留まるか、アラスカを目指すか。アラスカ派は?」

 クレアは見回した時、ゆっくりとぽつりぽつりとだが手が挙がっていき、やがては全員が手を挙げた。結果が分かり、クレアは呟く。

 「決まりね」

 だがその呟きは、よく響くものであり、クレアが呟いた直後、野営地は歓喜の声で包まれた。絶望ムードは消えた。

 クレア自身、結果が後者に傾いて良かったと安堵した。仮に今のまま旅するにしても、いずれ死ぬのは目に見えていたからだ。

 クレアはカルロスの手を借り、野戦用トラックの荷台から飛び降りた。そして、真っ直ぐとアリスへと近寄った。

 「賭けてみるわ」

 アリスは頷いた。

 今より、アラスカへの旅をする為、準備を始めた。

 夜になり、野戦用トラックの荷台にて作戦会議を始めた。作戦会議にはクレアを筆頭にカルロス、マイキー、チェイス、モーガン、アリスが参加した。

 灯りは床に置いた1つのランプのみである。

 「食料は底に尽き、ガソリンもそろそろヤバい。マイキー、お前のガソリンは?」

 「俺のニュース・トラックのタンクに半分ぐらいは」

 「チェイスは?」

 「マイキーよりもっとヤバいぞ。160キロ走れれば御の字ってところだ」

 「とにかくアラスカまで行くには、補給が不可欠だ」「そうだな」
 
 カルロスはよれよれの色褪せた地図を広げて置いた。彼は灯りを地図に近付けながら指で追う。一同は視線をカルロスの指を追った。

 「最も近くて安全なのは…此処、キャリエンティ。どうだ?」

 カルロスはキャリエンティを指さしたがアリスから「そこはもう駄目」と指摘された。これに対し、カルロスは「何故?」と顔を上げて質問した。

 「一ヶ月前に立ち寄った。空っぽよ」

 「なら、此処はどうだ?」

 カルロスはメスキートを指さした。それに対し、アリスはまたしても首を振った。

 「じゃあ、此処ならーーー」「ベガスよ」

 全員がぎょっと驚き、クレアを見た。彼女は説明する。

 「ガソリンと食糧が確実に手に入る場所は、そこしか無い」

 一同は危険すぎる、と反論した。

 勿論、クレアは理由が無く言ったわけでは無い。小さい町はもう行き尽くしたからだ。それに対し大都市であるラスベガスには大量のガソリンと食料があることは間違いない。

 「…その通りかもね。私はクレアの案に賛成よ」

 アリスはクレアの案に賛同した。マイキーは震え上がっているようだが、固い固い決意を浮かべていた。カルロス、チェイス、モーガンは諦めに近い表情を浮かべていたが、反対では無いのか、賛同の意を示した。

 「決行は明日の朝。出発の準備を」

 こうして、補給の為、ラスベガスに向かうべく出発の準備を取り掛かるクレア一行であった。 
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