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バイオハザードなんてクソくらえ!【未完】

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第10話

 〈サミュエル・ゼノビアSIDE〉

 「ゼノビア博士。また強い超能力波が発生した。47%の確率で、これはオリジナルのアリスよ」

 …ホワイトクイーンよ、今なんと? アリスと言ったのか? …聞き間違いでは無いな。単に脳の処理が追いついていないだけだろう。

 「三角法で、居場所を割り出せ」

 「はい、ただちに」

 命じられたホワイトクイーンは居場所を割り出せた後、私の目の前にあるデスクトップ上に位置情報を送信するだろう。

 私は2度目ともなる突発的なプシー粒子活動の…超能力の波を、グラフィックで呼び出した。

 それを見て、私は感嘆の息を漏らす。

 「感動的だな。本物だとすれば、驚異的な進化だ」

 「例のデトロイトの施設を脱出した後、彼女のパワーは飛躍的に伸びてる」

 デトロイト……正直なところ、デトロイトの失敗は思い出したくもない記憶だ。今、私は苦虫を噛んだような表情をしているに違いない。

 デスクトップ上に映るグラフィックを暫く見ていると研究室のドアが開かれる音と入室した人物の声を、私は確かに耳にした。

 「ゼノビア博士!」

 入室してきたのはスレイターだった。スレイターは、この施設のプライバシールールを無効に出来る男だ。ちゃんとルール守れ。そういえば、私が食事中の時も勝手に入室してきたのはコイツだったな。

 そう思うとうっかり、苛立ってしまうのは悪くは無いだろう。しかし、スレイターよ。何故、怒りの表情を浮かばせているのだ? 怒りレベルは5の内、4といったところか。

 私は彼に振り返りながらこの研究室の奥の一角にある、ガラス張りとなっている所まで歩き出す。おい、追従してくるな。 

 「この24時間で10回も地上に行ってる。それも無断で! ”私の部下”を危険に晒して実験用アンデットを大量に補充だと? 急に何故?…ゼノビア!」

 …上司に向かってその態度は失礼だぞ。許容範囲に収めてやる。

 だがな?…誰が呼び捨てしろと言った?

 それに何が『私の部下』、だ。確かにこの施設の責任者である私の補佐役にしてナンバー2であるスレイターは、科学部門の副部長兼人事を担当している。

 だがこの施設の居る者達は1人残らず私の『部下』であって、断じてお前の部下では無い。不愉快である。

 「研究が今、佳境に入った」

 横目でスレイターに言いながら私はパスワードを打ち込み、このガラス張りに備わっている不透明を取り除いた。

 取り除いた先であるその向こうは実験室だ。実験室の内装は極めて簡素。

 実験室にはグロッキーと同じ過程を経た10体のアンデットが、喚き散らしながら暴れている。その内の1体が体当たりして来たことで、スレイターはぎょっとして飛び退いた。いい気味だ。

 「大丈夫、完璧に安全だ」

 1体はガラスを壊そうとパイプ椅子を投げてきたりぶつけたりとしているが、プラスディック製のガラスはびくともしない。

 それを堺に、全アンデットはガラスにしがみつく。とあるアンデットは涎を垂らしながら私達を喰らおうと必死のようだ。まぁ、無駄だが。

 「奴等を飼いならせたのでは?」

 「凶暴さが役に立つこともある」

 「いったい何の為に必要なのです?」

 …私は1度もスレイターを頭が良い男とは思ったことは無い。いや、こんな奴でも私の右腕なのだ。誠に遺憾であるが。

 「ゼノビア博士、クローン83番がテストグリッドの最終ステージに辿り付きました」

 あぁ、アリスー83か。…さて、今回はどうかな。

 「ホワイトクイーン、デスクトップに映せ」

 ガラスを不透明に戻すことを忘れずにし、私は席に戻る。

 席に戻った頃には、既にクローンであるアリスー83が映し出されていた。

 ハイブの大惨事や前回と同じように赤いドレスを着て、ブーツを履き、ラクーンシティと同じに作られた廊下を歩いている。

 罠を警戒するように用心深く正面入口へと進んでいく。

 これは賢明な行動だろう。83番が床に印字されているアンブレラのロゴを片足踏んだ時、突如として表に出る一対のドアが開くと1体のアンデットが居たからだ。

 アンデットは83番に飛び掛かる。当然、83番は返り討ちにしようとするが、残念ながら失敗に終わった。

 アンデットは83番の首に歯を立てて、喰らいつく。83番は退かそうと必死のようだが、彼女の口から血が出始めてきた。吐血だ。

 ふと、後ろからゴクンと息を飲み込む音と、しゃがれ声を上げていたのを、私は確かに耳にした。スレイター、後ろに立ってこの様子を見ていたのか。

 私にもこの反応は理解出来るが、こんなのはマシなほうだ。アンデットは人間の身体なんて素手で引き裂くことが出来るのだから。

 「ウェスカー議長は、これを知っているんですか?」

 「必要なことは知っているとも」

 「議長に告げることに決めた事は、ですがね。あなたは与えられた権限を超えている。これは反乱です」

 私は平然とスレイターを見返した。
 
 確かにアンブレラは、その意図においても目的においても、ひとつの国家となった。したがって、反乱という言葉は適切かもしれない。

 だが、この男に反逆罪を言い渡す権威は無いのだ。…そもそも反乱行為など、私がする筈が無いだろうが!。

 「私の研究で世界の全てが変わる」

 私はアンブレラに忠誠を誓っている女だぞ? それにアンブレラは世界を救うのだ。やり甲斐を持ってやっているとも。
 
 「…では、私はこれで失礼します」

 スレイターはアンデット達が収容されている不透明なガラス張りを見て、それから私を見た。そして首を振り、研究室から出て行った。

 さて、仕事に戻るとしよう。 
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