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今度こそ、成し遂げてみせる

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プロローグ「助けて!」「フフフ」

 日が沈み暗くなっている中、とある高校に在籍する少女が校門を出た。

 「スマホの電池が切れちゃった……」

 校門を出た少女…千里は溜息を吐いた。今日は歩いて帰る事になりそうだ、と付け加えて。

 千里の家までは徒歩で約20分。歩けない距離では無かった。陽が落ちた初夏の気温は案外心地よく、千里は歩いて帰ることにした。

 「…そういえば、中学生以来だな。歩いて帰るのって」

 千里は中学生の際に起きたとある件以降、家の方針で運転手付きの車で毎日送り迎えをしてもらっていたのだ。

 普通の少女が運転手付きの車で送り迎えなんて、あり得ない。だが、千里の家庭は、『普通の家庭』では無い。良い意味で。

 だから、なのか。久しぶりに自分の脚で歩く下校がどこか楽しくて、暗い夜道でもに鼻歌をする程に、千里は不安を抱くことすら無かった。その不安の中には、今日迎えに来なかった車も含まれていた。

 しかし、そのせいで警戒心すら忘れていたことを、千里は身を以って知ることになる。

 突然、千里の横に黒塗りのワゴン車が停車し、大柄な男が降りて来たのだ。

 「――え?」

 彼女が気付いた時には、男の太い腕が彼女の首に巻き付いていた。

 「ぁ…ぐるじいッ……!!」

 ギリギリと締め上げられ、何秒か経たない内に彼女の意識が薄れてゆき…意識を手放した。




 「……ぅぅ」

 彼女が目を覚ますと、そこは薄暗い倉庫だった。 倉庫の天井からは月光が照らしている。

 両手足は縛られ、口には猿轡を噛まされていた。

 まだ意識がはっきりとしていないのか、赤い瞳は何処か虚ろのよう。確か黒塗りの車から降りてきた男に首を絞められて……最後に、誰かの姿を見た気がする。

 「ぅぅ! ぅぅう!!」

 助けを呼ぼうと呻くが、猿轡のせいで言葉にならず声が出なかった。

 「お〜」

 その時、突然としゃがれた男の声が聞こえた千里は動きを止めた。男の声は彼女の背後から発せられたよう。

 「気がついたか、嬢ちゃん?」

 千里は振り向いた。

 「大人しくしていろよ。痛い目にあいたくなければ、な?」

 その男は、身長190センチはありそうな大男だった。

 下卑ながら言い放った彼の後ろには共犯者かつ仲間と見られる3人の男がいた。

 「お前の家に10億の金を要求した。金さえ払えば開放してやる」

 「いけねぇなぁ。一条財閥のお嬢様が一人で夜道を歩くなんてなぁ?悪い男に捕まるだろぁ」

 「全くだぜ!」

 ギャハハっと男達は笑い、その内の一人が倒れている一条千里に歩み寄る。

 「ぅぅう!」

 来ないで!

 そう叫んでも、猿轡を噛まされている為に言葉にはならない。千里自身、それは分かったいたが、気持ち的な問題だ。

 千里は地を這うように近づいて来ている男から遠ざかろうとする。

 でも…、

 追いつかれてしまい、千里の細い脚を男が掴み、力任せに引き寄せたと同時に馬乗り。彼女の顎をクイっと持ち上げて整った顔を間近で観察し始めた。

 「こうして間近で見ると綺麗な顔してんじゃねーか」

 千里は抵抗する。

 「抵抗するなよなぁっ」

 千里のその頰を、男が平手打ちをした。

 「痛いよな?なら大人しくしてろぉ」

 口の中に血の味が広がる。目尻に溜まった零が落ちる。

 「こんな綺麗な嬢ちゃんが中学を上がる頃だったか?その時はストーカーの仕業らしいなぁ」

 中学を上がる頃、千里は誘拐をされた。そこで千里は怖い思いをした。

 幸い、早期に保護され大事には至らなかった。

 それでもこの少女にとっては…、

 必死に忘れようとしていた記憶が千里の脳裏に蘇り、ガクガクと身体が震えてしまう。無理も無い事だ。

 「ハハハハハっ、どうした?そんなに怯えてさ。…楽しめそうだぜ」

 「(怖い、怖いよ!)」

 千里は途轍も無い恐怖に陥り始める。これから何をされるのか、更に恐怖が増幅する。

 当然だ。これからされるのは女性の尊厳を破壊される事。

 「……ぅぅ! ぅぅうぅぅぅうぅうぅぅ!!」

 「誰も来ねぇよ、お嬢様ぁ♪」

 最後の抵抗を試みる千里であったが、男の太い腕が押さえつけられてしまう。

 だが、抵抗を止めることは無い。助けを祈り、叫ぶことも止めない。だからどうか、どうか届いて!

 ーー助けて!

 その祈りは、届いた。

 ドコォォォン

 「「「「「っ!?」」」」」

 倉庫のドアが轟音と共に破られ、重力に従い地面に落ちる。

 そこから人が姿を現した。

 長い銀髪に、高級感のあるスーツを纏う”女性”。

「声が、した...助けを求める声が」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 そこからは、凄いとしか言えなかった。暗い為、良く分からないけどとにかく凄かった。人数では男達の方が上回っていたけれど”女性”はものともせず男達を倒していった。

 少しして、”女性”は男達を縄で拘束した。

 少しして、警察と千里の両親がやって来た。

 「千里、千里!」

 母親は千里を抱きしめた。

 父親は千里の安否が確認し「バカ娘っ」と男泣きをしながら妻と一緒に抱きしめた。

 落ち着いた千里の両親は”女性”にお礼をし、千里両親は娘を助けてくれた御礼として”女性”を家に招いた。

 何か望みは無いかと聞くと何と「何もいらない」と返答。

 何故か?”女性”は続けて言う。

 「彼女が無事であり、あなた方とこうして食卓を交わせて嬉しい」

 「何よりも彼女の笑顔が見ることが出来たのは報酬に値する」

 千里は頰を赤く染めて、両親は微笑ましく見つめていた。




 〈本作主人公SIDE〉第0.5話「ふふふ」

 最近は何かと物騒だな、と思いながら倉庫の屋根で仰向けとなって月を眺めていた時、男の声が聞こえる。

 先程から「お〜」って聞こえてくる。それも重複してるような声である…いかにもって感じだ。

 ドキリっとして寒気がして来た。

 え、幽霊なのか?だとしたらこの場所は”THE曰くつき”の場所という事になる。…普通に怖い。

 即刻、立ち上がり屋根から降りた私であるが…、

 ドオ〜ンっと反響するような音が何度も聞こえるのは気の所為では無い筈だ。

 …最近の幽霊は怖いな。何だ、最近の幽霊って。

 しかし、女の子の声が聞こえた気が…はっ、もしかして、助けを求めている声では無いか?

 なんたる事だっ。最近の幽霊は……だから何なんだ、最近の幽霊って。

 なんであれ向かわなければっ。私が卑劣な行為をする悪霊を倒し、その子を救う!

 しかし、男であれば立ち去ろう。興味無いし。…いや、やはり立ち去るのは止めておこう。”色々”と怖いからな。

 作戦としては、スーツの内側の胸ホルスターにあるモデルガンで威嚇しながら食塩でお祓いする。

 悪霊を倒した後は彼女へこう言う。

 「怪我は無いか?心配はいらない。悪は滅びた」っとな。

 フフフ、完璧な作戦だ。モデルガンに今日買った食塩袋…。

 モデルガンは弾は無いその代わり、リアルな銃声に薬莢が出る。…ん、悪霊?

 ま、まぁこれで準備は整った。いざ行かん。力強く扉を…蹴る!

 ドコォォォン

 「「「「「っ!?」」」」」

 フフフ、驚くのも無理はなかろう。頑丈である筈の扉が破れたのだから当然だ。

 しかし……私にとって驚くべき事に悪霊がいなかった。

 なんとヤクザが居たのだ。それも危ない匂いがプンプンと。

 「声が、した...助けを求める声が」

 心無しか震えてる気がするのは本当に気の所為では無い筈だ。

 「…(帰っていい? あ、駄目っ)」

 襲い掛かってくるヤクザ。

 「(私に近づくなー!)」

 ステップ1 まずはモデルガンで牽制。

 ステップ2 牽制しながら塩を顔に向けてぶちまける

 ステップ3 男の大事なところは強く蹴る。

 を繰り返す。

 効果あるの?っと疑問に思われるだろう。かくいう私も最初はそうだったが効果抜群であった。

 むむ、最後の一人が残ったか。それもビビっている。

 よし、最後も冷〜静に対処するとしようか(煽り)

 あ、あれ…ナイフ持ってる(唖然)

 「冷静になれ、若造が」(そうだ、ここは落ち着いて話をしよう。あ、争いは何も生まれないぞ?)

 「死ねやオラァァ」

 突っ込んできた!

 モデルガン…弾切れ。予備弾無し。
 食塩…0。
 御札…相手は人間でそれも裏社会の人間だ。効く訳が無い!

 どうする、どうする…ん?足元に何か有るな……。

 拾い取り見るとコレは、酒瓶か?

 …ほほう、上物じゃ無いか。帰って飲むとしよ「くたばれや、女!」…しまった、忘れてたコイツの事!

 と、とりあえず手持ちの物で対処だ!

 「さらば、若造」

 パリィ―ん

 「頭がーッ!!」

 最後の一人クリティカルヒット&amp;ダメージ。…おい、倒れろ。そして早く帰らせろ。

 私は早く帰って”この上物”を飲むん……ど、何処だ。上物は何処だ。私の手持ちが何故かガラ空きなのだが。

 そういえば先程からガラスを踏んでいるような…え?…まさか……そ、そんな……酒瓶が……私の、酒瓶が……見るも堪えない姿に。

 …絶許だ。

 「ひっ、ま、待て。来るなっ!」

 これもまた、コイツ等のせいだ。これもまた、コイツ等のせいだ。

 武器を奪い、腹を殴って、男を床に叩き倒し、男の大事なところを蹴るまくる。男の大事なところを蹴るのは繰り返しだ。

 「ひっ、もう、ゆ…じて…っ!!」

 繰り返ししている内に口から泡吹いてる。

 いつしか、男はピクリとも動かなくなった。

 「さらば、名も知らぬ男よ」(し、死んでないよな?死んでいたら私は責任取れないからな。死ぬなよ。頼むぞ!)

 ステップ4 縄で拘束したら、無力化完了。

 よし、撤収「…ぅぅ! ぅぅうぅぅぅうぅうぅぅ!!」 …したら嫌な予感がする。

 最後倒した男が持っていたナイフを発見した私は拝借し、高校生に近寄る。

 「ぅぅぅう!」

 何故、私から逃げようとしているのだろう?

 「逃げるな。今、助けてやる」(縄を切ってあげるから落ち着いて落ち着いて、ね?)

 「…ぅぅ」

 いや、泣くことは無いだろうに。では、縄を切るぞ。

 よし、無事に縄が切れたな。…いや何故ポカンとしているんだ。そんなに私が怖かっただろうか。だとしたら少しショックなのだが。

 「怪我は無いか?」(心配しないで。悪は私が滅ぼした。君はもう自由の身だよ)

 しかし、幽霊と思ったら裏社会の人間であったとは…。

 怖い思いをした。警察も呼んだことだし我が家に帰ろう。

 …何故、前に進まない?

 「あ、あの警察が来るまで一緒に…っっ!」

 あぁ、なるほど。腕を掴まれているのか。……え?面倒くさいのだが。

 ー20分後ー

 通報により駆けつけた警察官達はヤクザ達を連行し、私はその場で事情聴取を受けた。私は何も悪くない筈だ。あ、違った? 良かった。

 直ぐ終わった私は帰りたかったのだが、女の子とその両親より声を掛けられた。

 家に招待したい…だと?

 Why?正直言って断りたいが凄まじい笑顔だ。あれ?さっき面倒くさいって思ったからか?

 …す、すまない!だが私は絶対に悪くない!悪いのは貴方方の娘さんが夜道にぶらぶらするからだっ!!

 「ぜひとも明日の夜、私共の家にお越しいただけまんか?」

 笑顔がより深くに…っ。

 「是非伺おう」

 拒否件が無い。私は内心、泣いた。

 

 そうして約束の日、招かれた席にて私は驚きを隠せなかった。

 私は助け出した娘さんが一条財閥の令嬢だとは思っていなかったからだ。

 震えが止まらん(ガクガクブルブル)。

 まぁ、私は物心ついた頃から人前ではそういった動作や表情筋はあまり動かないし冷静に落ち着いているしクールだ。心はその逆であるが。

 人前と言った私だが、安全と分かっている家は例外だ。

 「ーーーしかし、やはり何かーーをしたい。ーーも良いですかな?」

 ゴメンなさい、聞いて無かったです。え〜と、うん…私を殺す?

 ・・・・・・

 ・・・え?聞き間違い、そう!聞き間違いに決まってる!思い出せ、今の会話をッ!

 『娘を暗い倉庫の中に放置しようとした貴様を許すことは出来ない。選べ、この場で殺されるかor後で殺されるか』

 聞き間違いじゃ無かった。どうなる!どうなるんだ私は!?

 今この瞬間にも私の命は狙われている。なんとかこの窮地を乗り越えらねば…、

 「何も要らない」(要るって言ったら虫が良すぎるて言って私を即殺んだろ?)

 「彼女が無事であり、あなた方とこうして食卓を交わせて嬉しい」(逃げたい逃げたい逃げたい)

 「何よりも彼女の笑顔が見ることが出来たのは報酬に値する」(逃げたい逃げたいっあ、しまった!?失言だった…死にたくない死にたくない)

 ここで死ぬのか…、自分でも分かるくらい珍しく笑顔をしてることは間違いない。

 「貴方はホントに器がお広いお方だ」

 何故だか知らんが感激深い表情になってるのはいったい? 口調もそうだ。

 しかしながら少女は何故、頰が染めてるのだろうか…?

 「おっと、もうこんな時間ですね。表まで送迎しましょうか?」

 外までだと? 発振器をつけるつもりか!?

 「いえ、お気遣い感謝する。一人で大丈夫だ」

 一刻も速く家に帰らねば!(使命感)

 そして無事、家に帰ることが出来た。

 帰宅後は直ぐに着替え、今日来たスーツに金属探知機を手当たり次第掛けた。

 結果、反応無し。

 ほっと安心する息を出した。

 良かった。私は許された。

 は〜、今日は疲れた。

 さて、寝るとするか。明日は何をしようか…。

 ー翌日ー

 よっしゃー!、まさか『アレ』を確保出来たとは(感激)

 しかもラストワン!速く厳重に保護し収容しなければ…。

 しかし、陽が落ちて暗くなってきたな…ん?

 ブゥーーーん

 車の音?やけに大きい音だな、それも近い。うん?まさか…。

 回れ〜右!あっ

 ドーーーん

 一回転し、重力に従い地面に私は落ちた。いや何故だ。

 最後に見たのは、車に印字された一条財閥の印。

 最期に思ったのは「…(や、やっぱりか)」。 
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