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蜜蜂の挑発

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第一章

                蜜蜂の挑発
 この時神々は困っていた、豊穣の神であるテリピヌが草原の方に行ってしまったのだ。
「何があったのだ」
「一体どうして二つの川から離れたのだ」
「チグリスとユーフラテスからどうして離れた」
「訳がわからない」
「急に怒って出て行った」
「何がどうなったのだ」
 こう言って驚くばかりだった、そしてテリビヌがいなくなり。
「植物が育たぬ」
「無論作物もだ」
「家畜の羊や牛もだ」
「そして人も増えない」
「世の中が止まっている」
「このままでは世の中が終わるぞ」
 神々は本気で危惧していた。
「テリビヌを探して呼び戻すのだ」
「何もかもが育たないのでは話にならない」
「実りが得られないのでは」
 口々に言って探した、だが。
「広い草原だ」
「簡単には見付からないぞ」
 誰もが頭を抱えた、そしてだった。
 太陽神シャマシュ、彼も探したが。
「いたが」
「それでもか」
「帰る気配はないか」
「そうなのか」
「戻る様に説得した」
 そのテリピヌにというだ。
「だがもう嫌だと言ってな」
「嫌なのか」
「こちらに戻るのが」
「そうなのか」
「そう言ってだ」
 そうしてというのだ。
「頑としてだ」
「戻ろうとしないか」
「そうなのか」
「決して」
「そうだ、困ったことに」
 年老いた姿の神も困った顔で言う、だが。
 ふっくらとした中年の女の姿をした地母神ハンナハンナがここでそれならとシャマシュに対して言った。
「なら私に知恵があるわ」
「どうするのだ」
「彼の居場所はわかったのよね」
「そうだ」
 シャマシュはその通りだと答えた。
「もうな」
「ならそこを教えて、そこに蜜蜂を送るわ」
「蜂をか」
「ええ、そうするから」
「蜂をどうするのだ」
 シャマシュはハンナハンナの話を聞いて首を傾げさせた。
「一体」
「それはこれからわかるわ」
「これからか」
「ええ、それで私に任せてくれるかしら」
「そう言うならだ」
 シャマシュはそれならと応じた。
「貴殿とは古い付き合いでだ」
「よく知っているわね」
「貴殿のことをな、ではな」
「それではね」
「任せよう」
「それではね」  
 こう話してだった。
 シャマシュはハンナハンナに任せた、するとだった。 
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