| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

二人の英雄と冥界

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

第一章

                二人の英雄と冥界
 ギルガメシュとエンキドゥは冥界の神ネルガルの宴に呼ばれた、宴の場所は冥界にある彼の宮殿だたが。
 ギルガメシュにだ、彼の味方をよくする知恵の神エアは彼等が宴に行く前に彼のところに来てこう言った。
「奇麗な衣を着てだ」
「冥界に入ってはいけませんか」
「そして声もな」
 これもというのだ。
「決してだ」
「出してはならない」
「そうするのだ」
 年老いた顔で黒い見事な髭を顔の下半分に生やし大柄で逞しい黒髪の毅然とした顔立ちの英雄に話した。
「絶対にな」
「そうしないとどうなりますか」
「冥界の悪霊達に囚われ」
 そうなってしまってというのだ。
「冥界の住人になってしまうのだ」
「つまり死にますか」
「そうなる、だからな」
「神の宴に呼ばれても」
「奇麗な衣は着ずに」
 そうしてというのだ。
「声もだ」
「出さない」
「そなたもそうしてな」
 そしてというのだ。
「エンキドゥもだ」
「そうすることですね」
「死にたくないな」
「はい、まだ」
 実際にとだ、ギルガメシュは答えた。
「そしてエンキドゥも」
「ならな」
「その二つはですね」
「絶対にな」
 何があってもというのだ。
「それは守るのだ」
「そうですか」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「宴を楽しむのだ」
「宴は奇麗な衣と声が欠かせませんが」
「派手にかつ賑やかにな」
「それでもですね」
「冥界ではそうだ、ではいいな」
「はい、その二つを守り」
 ギルガメシュはエアに誓って答えた。
「宴に行きます」
「エンキドゥにもくれぐれもな」
「言っておきます」
 このことを誓ってだった。 
 ギルガメシュは冥界の宴に行くことにした、エンキドゥにも話すと彼もそれならと頷いた、そして毛の多い逞しい巨大な身体に粗末な服を着てだった。
 ギルガメシュと共に冥界に赴いた、そのうえでネルガルの宴に出た。その宴は場は豪奢で見事な髪の宮殿だった。
 出て来る酒も馳走も見事だ、だが。
 二人以外の宴に出ている神々を見てだ、エンキドゥはギルガメシュに囁いた。
「わしはいいのだな」
「お主はだな」
「元々野で暮らしていた」
 だからだというのだ。
「粗末な服はな」
「構わないな」
「別にな」
 そうだというのだ。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧