北朝鮮はいい国
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第四章
「あいつは」
「ああ、何処がいい国なんだ」
「最悪の国でしょ」
「それがわからないなんてな」
「本当に馬鹿だよな」
「全くだな」
かつての同級生達の言葉に頷いてだった。
重太郎は同窓会を楽しんだ、大いに語らい飲んで食べてだった。
そのうえで家に帰った、今も実家暮らしでそうして父にこのことを話すと。
母と共にテレビを観ていた彼はこう息子に言った。
「完全にわかったな」
「ああ、あの先生本物の馬鹿だな」
「あんな国がいい国とか言うなんてな」
「馬鹿じゃないと言えないな」
「昔は変な報道ばかりでな」
それでというのだ。
「あの国もいい国って思われてたんだよ」
「そうだったんだな」
「俺が子供の頃はな」
父は今もビールを飲みつつ話した。
「そうだったんだ、けれどな」
「その報道がか」
「拉致の話が出てな」
そうしてというのだ。
「テロもしてだ」
「最悪の国だってわかったんだな」
「丁度俺が結婚した頃にな」
自分の妻、重太郎から見て母にあたる彼女を見つつ話した。
「ソウルオリンピックがあってな」
「ああ、あの時に」
「テロやってな」
「金賢姫だったな」
「それやってその前のアジア大会の時もやってな」
テロをというのだ。
「その頃から酷い国だってわかってな」
「父ちゃんもわかったんだな」
「ああ、それでな」
「中学の時の俺にも言ったんだな」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「最悪の国だってな」
「もう俺達はネットで聞いてたしな」
「そうだったな」
「ああ」
まさにというのだ。
「俺もな」
「そんな状況でな」
それでというのだ。
「まだな」
「そう言ってるならか」
「事実を受け止められない奴は馬鹿だ」
父は言い切った。
「妄想みたいな話を鵜呑みにしたままでな」
「それならか」
「ああ、もうな」
それこそというのだ。
「馬鹿でな」
「言うことは全く信じたら駄目か」
「馬鹿の言うことを信じると馬鹿になるぞ」
こうもだ、父は言った。
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