| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

コントラクト・ガーディアン─設定&こぼれ話─

作者:tea4
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

こぼれ話③リゼラの魔獣討伐講座


「あの魔獣───ルガレド様が弓矢で射殺したやつにそっくりですね」

 視線の先にいる魔獣を見ながら、ジグが呟いた。少し離れたところで観察しているため、魔獣は私たちの存在に気づいてはいない。

 今日は、ジグとレナスを連れて、魔物・魔獣討伐の訓練に来ている。レド様はラムルを伴って、ロウェルダ公爵邸だ。

 確かに、レド様が弓を使って討伐した魔獣にそっくりだ。

 巨大化したオークで、4m近い体長と、オークにしては俊敏な動き。内包する魔力量も大体同じくらいで、魔力で皮膚を強化しているのも同じ。

 それに、発達した牙のせいで口を閉じられずに、涎に塗れた舌が開いた口の端から垂れ下がっているところまで、同じだ。

「あのときのレド様は────凄かったですけれど…、非常識でしたよね」

 魔力で皮膚を強化しているから、眼を狙って、眼から脳を貫くようアドバイスはしたが────まさか、一本の矢だけで倒してしまうとは思わなかった。

「…リゼラ様も、同じことをできそうですが」
「まさか。それは、無理ですよ。皮膚よりは柔らかいとはいえ、それなりに硬いですから、私では一本だけで貫くことは無理です」

 まあ、【身体強化(フィジカル・ブースト)】を使って、レド様に弓矢を借りれば、同じことをできるかもしれないけど────現状では無理だ。

 レナスの言葉に、私はすぐに否定をする。この二人も私を買い被っている節があるので、ちゃんと否定しておかなければ。

「『一本だけでは無理』ということは、何本か使えば、リゼラ様も矢だけで倒せるということですか?」
「何本も使うなら、それは倒せますよ」
「「…………」」

 何故か、ジグもレナスも無言になった。あれ、もしかして疑ってる?

「それなら────ちょっと、やってみせましょうか」

 私は、【遠隔(リモート・)管理(コントロール)】で弓を取り寄せた。弓を構えると、すかさず矢が現れる。

 魔獣の眼を狙って、矢羽根と弦を放った。間を置かずに、もう一射放つ。そして、続けざま───もう二射放った。

 まず二本の矢が並んで、魔獣の眼に吸い込まれるように突き刺さったが───矢の半分ほどまで埋まって、そこで止まる。
 後で放った二射が飛来し、止まってしまった二本の矢の矢筈を正確に叩いた。

 魔獣の眼に突き刺さっている二本の矢が、後から届いた矢に押されて、深く押し込まれる。脳を射られた魔獣は、その場に崩れ落ちた。

「ほらね?一本では無理だったでしょう?」
「いや、『ほらね』じゃないですよ」
「何ですか、今の。下手したら、ルガレド様より酷いですよ」

 ええっ、何処が?



「ところで────リゼラ様」
「何ですか、レナス」
「ずっと疑問に思っていたんですが────ほら、四足型…、鹿に似た魔獣を倒したことがあったじゃないですか」
「ええ、ありましたね」

 レナスと初めて、狩りに行ったときのことだよね。

「あのとき、リゼラ様は『能力と魔術を使ったから、普通に戦うよりも手間も時間も短縮できた』と言っていましたよね?ということは────能力も魔術も使わなくても、討伐できるということですよね?その場合、どうやって討伐するんです?」

「え、魔法を使うだけですよ?」

 いくら何でも、双剣だけでは無理だしね。

「……魔法でどうやって?」
「そうですね。まず気づかれないよう近づいて───魔獣の足元の土を、魔法で一気に深く陥没させます。魔獣が嵌って身動きとれなくなったら、穴に落ちて低くなった魔獣の眼に双剣を突き立てます。それで、終わりです」
「……………」
「レナス?」

 黙ってしまったレナスに首を傾げていると────ジグが口を開いた。

「リゼラ様───貴女に、ルガレド様を非常識と言う資格はありません」

 え、何で?
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧