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コントラクト・ガーディアン─Over the World─

作者:tea4
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第一部 皇都編
  第二十六章―黎明の皇子―#4


 温かい何かに抱き包められて、緩やかに意識が浮上する。夢うつつのまま、私はその温かい何かに身を寄せた。

 ああ、これはレド様の腕の中だ────そう思いながら、レド様の胸板に顔を(うず)める。

 レド様の心音と温もりが心地よくて────また深い眠りに陥りそうになって────私は我に返った。

「……あれ?」

 それは、夢でも妄想でもなく────本当にレド様の腕の中にいる。そう認識して、私はパニックになった。

 え───何これ?
 どうして、私、レド様と一緒に寝ているの…?!

 眠る前の状況を思い返せば、レド様が長い眠りから目覚めたときのことが甦る。

 泣きながらレド様に縋りついた後の記憶がないことを考えると、私は泣き疲れて眠ってしまったのだろう。

 ああ、レド様に迷惑をかけてしまった、と恥ずかしく思いつつ───とにかくレド様の腕の中から抜け出そうと身じろぐ。

 しかし、強く抱き込まれていて、どうしても抜け出せない。

「ど、どうしよう…」

 部屋には、すでに日の光が満ちている。今日はヴァムの森の件で忙しくなるはずだから、早く起きてお弁当を作りにいかなければならないのに。

「レド様───起きてください、レド様」

 気持ち良さそうに眠っているところを申し訳なく思いながらも、レド様を起こすために呼びかけた。

 レド様は、眼を開けるどころか、私をさらに抱き込む。

「…ん───いやだ、まだ起きたくない」

 レド様はそう呟いて、私の首筋に顔を擦り寄せた。

 これは────まずい。このままでは、確実に私の寿命が減る…!

「レ、レド様」
「もう少し────もう少しだけ…」

 レド様の眠そうなその声音に、まだ完全には回復されていないのかもしれない────そう考え、言葉をかける。

「それなら、レド様はまだ寝ていてください。私は起きなければならないので、腕を(ほど)いてもらえませんか?」
「いやだ…」
「レド様、お願いですから────あれ、レド様?ちょ…っ、まだ眠らないでください、レド様…!」



「申し訳ございません────リゼラ様。リゼラ様が眠ってしまわれたので、旦那様の方を隣室で寝かせようとしたのですが────どうしてもリゼラ様の傍を離れたくないと駄々を捏ねまして。ただ添い寝をするだけでリゼラ様には指一本触れないと固く約束させたのですが────旦那様が、そんな約束を守れるはずがございませんでした。本当に申し訳ございません」

「まったくもう…!どっぷり色ボケしている上に───寝起きの悪い坊ちゃまに、そんな約束が守れるわけがないでしょう!坊ちゃまには前科があるのに───そんな口約束を鵜呑みにして!」

 頭を下げるラムルの横で、カデアがぷりぷりと怒っている。

「いえ───ラムルが謝ることではないですよ。カデアも、そんなに怒らないでください。元はと言えば、眠ってしまった私が悪いんですから。迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさい」

 あの後、私が困っていることに気づいたジグとレナスが呼んでくれたらしく───ラムルとカデアが駆け付け、二人がかりでレド様を起こしてくれたのだけど────レド様の低血圧は、私が考えていたよりも重症のようだ…。


 当のレド様はといえば、罰?として、私の代わりにお弁当を創っている。

 時間がなくなってしまったため、手っ取り早く【創造】を駆使して、食材を料理に創り変えているのだ。

「ルガレド様───何で、オムライスとベイクドサンドだけなんですか。ちゃんと、サラダやスープ、フライドポテトとかフライドチキンとか、他にも創ってくださいよ」
「オレはカツサンドがいいです。それと、三日月型のフライドポテト」
「うるさい。我が儘を言うな。リゼの作ってくれたオムライスとベイクドサンドの何処がいけないんだ」
「リゼラ様が手ずから作ってくださったものなら、オムライスとベイクドサンドだけでも有難いですけどね」
「リゼラ様の手料理が食べられないのは、ルガレド様のせいじゃないですか。文句をつけたくもなりますよ」

 何やらジグとレナスが茶々を入れている。

 いつものようにじゃれ合う三人に苦笑しつつ────三人のいつもと変わらない様子に、私は秘かに安堵した。


 厨房には、レド様と私、ラムルとカデア、ノルン───それにジグとレナスしかいない。

 ディンド卿、ヴァルトさん、ハルド、セレナさん、ラナ姉さん、アーシャ、エデルは、すでに朝食を済ませ、地下調練場で鍛練に励んでいる。

 エデルには鍛練の必要はないのだけれど、本人の希望により参加することになった。おそらく───皆の動きを見て、演技の糧にしたいのだろう。

 昨日は鍛練を休んでしまったので、私も鍛練に加わりたいところだが、今日もその時間はなさそうだ。

 レド様のお弁当創造が済み次第、私たちも朝食を済ませて────早々に行動を開始しなくては。


 正直、レド様にはまだ休んでいていただきたい。

 レド様は目覚められたばかりだし、魂魄の損傷についても詳しくは調べられていない。それを言ったら、ジグとレナスもだ。

 だけど────ヴァムの森の件は急を要する。

 私が泣き疲れて眠ってしまってから、ラムルとディンド卿が寝室を訪れて───地下施設の顛末に併せて、ヴァムの森の件もレド様に報告してくれたらしい。

 レド様も一連の事情をすでに承知しているとのことなので───朝食のときに、私たちの行動指針を話し合うつもりだ。

 それから、ガレスさん───というか冒険者ギルドに、ディルカリド伯爵の件を何処まで報告すべきかも、レド様と相談しないと。これは、おじ様も交えた方がいいよね。


「リゼ───待たせた。全員分の昼食を創り終えたから、朝食にしよう」

 レド様に声をかけられて、私は回らせていた思考を中断する。

 レド様に瞳を向けられ、レド様の声を聴けることに、確かな幸せを感じながら────その感情のまま笑みを零し、私は頷いた。


◇◇◇


「なるほど。これが────例の集落か…」

 朝食を終え、お邸から孤児院に転移した私たちは───レド様が、先にヴァムの森に造られた集落を見ておきたいと仰ったので、冒険者ギルドへ赴く前にヴァムの森へと足を運んだ。

 隠れて監視する斥候役の冒険者たちを避けて、集落へと近づく。

 そして───昨日と同じように【結界】を纏って、集落を囲う木々の一つに登って見下ろした。

「…石造りか。それに、以前見た集落とは違って、建物が密集しているな」

 レド様の言う通り───皇都の平民街ほどはびっちりと密集してはいないものの、これまで見てきたオークやオーガの集落よりも建物の間隔が狭い。

 大抵の集落は、中央に広場か見張り台があり、それを囲う形で家があり、さらにそれを塀で囲っている。

 だけど、この集落は───中央にゴブリンを捕えている檻があり、満遍なくあばら家が建っていて、広く開けた場所というのがない。

「塀がないのは攻め入りやすくはあるが───森に逃げ込まれる確率も高いな。どの道、集落に攻め込むのは得策ではなさそうだ」

 確かに、この集落の様相では戦い難い。相手は、人間ではなく───魔物あるいは魔獣だ。集団で連携して戦うには、建物が密集している。


「リゼ────昨日と比べて、周囲の魔素量はどうなっている?」
「そうですね…。昨日より、少し増えています。それでも、まだまだ普段に比べたら少ない状態ですが…」

「この遺跡に施されている魔術式───【隠蔽(ハイディング)】といったか。それは、魔素が必要量あれば、自動的に取り込んで発動するようになっているのか?」
「分析してみます。少しお待ちいただけますか?」

 私は、すぐさま【心眼(インサイト・アイズ)】を発動させて───魔物の集落が築かれた広場を、じっと視る。

 しばらくして、魔術式が地中から浮き上がってくるかのように現れた。昨日よりも詳しい情報を得るために、さらに凝視し続ける。

「レド様のお考え通りのようです。魔素を自動的に取り込み───発動するよう設計されています」
「そうか…。魔術式が発動して───再び集落を認識できないようになってしまったら厄介だ。リゼ、あの魔導機構を停止させることはできるか?」

「それは────ちょっと難しいですね。この【転移港(ポータル)】という施設は、研究都市───あの地下遺跡の管理下にはありませんので、ノルンに遠隔で操作してもらうことは不可能です。ですから、魔導機構を停止させるには───私かノルンが、直接、魔導機構に接触する必要があります。ですが───集落に潜り込むことはできたとしても、魔物や魔獣に気づかれずに停止させるのは難しいのではないかと思います。
それならば…、また地下施設の【魔素炉(マナ・リアクター)】を稼働させて───魔素を減少させる方がいいかもしれません…」

 出来るだけ思考を廻らせて答えたけれど────前回の結果が頭を過り、私は以前のように力強く言い切ることはできなかった。

 それに────この方法だと懸念もある。

「ただ────魔素を減少させ続けることには不安があります。この一件が長引けば────この森の薬草などは勿論、近辺の農村にまで効果が及んだら農作物にも影響が出ることも考えられます」

 獣よりも魔物や魔獣の肉の方が美味で栄養価が高いように───農作物も、魔素がふんだんに含まれている方が味や栄養価が良くなる。

 それに、大抵の植物や農作物は、ある程度の魔素がなければ育ちが悪い。

 つまり────不作になることもあり得るのだ。

 レド様は、私の言葉を受けて、ちょっと考え込んでから────口を開く。

「魔素を減少させ続ける弊害についてのリゼの懸念は理解した。だが───やはり、【隠蔽(ハイディング)】の発動を阻止することを優先すべきだな。長引かせるつもりは毛頭ないが────もし長引いてしまった場合、そのときに対応を考えよう」
「解りました」

 私が頷くと、レド様は改めて口を開いた。

「では───【隠蔽(ハイディング)】の発動を阻止するために、地下遺跡の【魔素炉(マナ・リアクター)】を稼働させて、魔素を減少させることにする」


◇◇◇


 冒険者ギルドに着いたのは、通常なら、すでに閑散としている時間帯だったが────今日は様子が違った。

 混雑とまではいかないまでも、ギルド内には幾人もの冒険者たちが待機している。皆一様に緊張した面持ちで、漂う雰囲気もピンと張っている気がした。

「あ───リゼさん、アレドさん」

 受付に近づいた私たちに、セラさんが声を上げる。

「おはようございます、セラさん」
「おはようございます、リゼさん。────ギルドマスターが応接室でお待ちです」

 私たちが来たら、すぐに通すようガレスさんに言われていたのだろう。私たちは挨拶もそこそこに、セラさんに促されるまま、応接室へと向かう。


 階段を上り、応接室の扉をノックすると───間髪入れずにガレスさんの応答が返って来た。

「入ってくれ」
「失礼します」
「わざわざ来てもらって悪いな、リゼ、アレド」

 そこには、ガレスさんだけでなくバドさんもいて────二人は向かい合ってソファに座っていたが、バドさんがガレスさんの横に移動してくれた。

 レド様と私は、ガレスさんたちと挨拶を交わしてから、つい先程までバドさんが座っていたソファに並んで腰を下ろす。

「それで────状況は?」
「さっき、警告に行かせたパーティーがダウブリムの街から帰って来た」

 ダウブリムの街とは、東門の正面へ伸びている街道の先にある街だ。

 楕円形を成すヴァムの森は、その正面に伸びる街道に沿って広がっており、【転移港(ポータル)】からもすぐに出られる。

 おそらく、ダウブリムの街から皇都へ向かった────あるいは皇都からダウブリムの街へと向かった冒険者や商人が、この街道で被害に遭っているのではないかと私たちは考えていた。

「リゼの───予想通りだ。ダウブリム支部から預かった護衛依頼の記録をざっと確認しただけでも───日数から考えて、すでにこちらに辿り着いていないとおかしいものが幾つもあった。どれも小規模の商隊や行商人ばかりだ」
「…そうですか」

「冒険者や商人だけでなく、念のため、ダウブリムの街の住人にも、街道を使わないよう警告をしてある。それと、近隣の幾つかの支部に援助要請をした。準備が調い次第、駆けつけるとの返答はもらっているが────今の時期は何処も人手不足だ。どれくらい援助が得られるかは判らない」


「皇城から連絡は?」

 話が途切れたところで、レド様がガレスさんに訊ねる。

「午後に登城するよう要請が来た」

 ガレスさんは、溜息混じりに答えた。
 ガレスさんのその答えに────レド様は眉を寄せる。

「午後か…。この事態への対応にしては────随分、遅い」
「リゼが書類を作成してくれたおかげで、昨日の昼前には報告を上げることができたんだがな。事の重大さを理解していないとしか思えん」

 今度はレド様が溜息を吐いた。

「理解していないのだろうな。おそらく───騎士団は当てにはできない」

 バドさんが沈痛の面持ちで口を挟む。

「……やはりか」

「皇王陛下が“デノンの騎士”を動かしてくれるとは思うが───確実とは言えない。最悪、冒険者のみでの対応となることも考えておいた方がいい」
「そうか…」

 眉間にしわを寄せて呟いたバドさんに代わって、ガレスさんがレド様に向かって口を開いた。

「アレド、この件でのお前さんの立ち位置はどうなる?」
「これも、おそらくだが────俺は皇子として駆り出される。それも、陣頭指揮を任される可能性が高い」

「それは────不幸中の幸いかもしれんな。下手に、身分しか取り柄のない無能な輩を寄越されても困る」

 ガレスさんが、しみじみ言う。

 その声音には不安ではなく、レド様への信頼が籠っていて────ガレスさんがレド様を信頼してくれていることに、私は嬉しくなった。

 レド様も、口元を微かに緩める。

「今回の集落潰しは───規模は勿論、様相がいつもとは違う。アレドが冒険者となってくれたこともだが、リゼが皇都に残ってくれていて───本当に幸いだった。例年通りなら、リゼは“大掃討”に参加していただろうからな」
「ああ、本当にそうだな」

 ガレスさんの言葉に、バドさんが頷く。

 確かに───その通りだ。レド様の親衛騎士にならなかったら、私は“大掃討”に参加していて───事が起こった後に知らされるだけだっただろう。

 私が何も知らずに遠くで過ごしているときに、この皇都にいる大事な人たちが惨事に巻き込まれていたかもしれないことを考えると、ぞっとした。

 それに───私たちが辺境に行かされる前に発覚して良かった。

 ラギとヴィドが見つけてくれて良かったとは未だに思わないが───やはりこのタイミングで発覚したことは最善だったのだ。

 私はようやく────そう思うことができた。



「それから────報告しておくことがある」

 今後のことなど幾つか話し合った後に、レド様が切り出した。

「ディルカリド伯爵の件だが────ディルカリド伯爵と従っていた者を捕らえた。これで、奴らが新たな魔獣を造り出すことは────もうない」

 ガレスさんとバドさんが、眼を見開く。

「ディルカリド伯爵たちのことは、然るべき処分をするつもりだ。だから、安心して欲しい」
「そうか…。では────後は、ヴァムの森の集落にいる魔獣だけか…」

 集落にディルカリド伯爵が造り出した魔獣が君臨していることは、すでにガレスさんたちには報告済みだ。

 レド様とおじ様に相談しないまま報告することに躊躇したが────集落の異様さは明らかなので、事情をある程度知っているガレスさんたちには隠しておくことはできなかったのだ。

「それなら、ヴァムの森の集落に集中できるな」

 ガレスさんの声音には、安堵が入り混じっていた。バドさんも僅かに表情を緩めた。


「ガレスさん、お願いしたいことがあるんですが…」
「何だ?」

「ここ三年の間に起きた魔術陣の盗難事件の詳細を知りたいんです」

 魔術陣はとても高価なものだ。元から高値だったことに加え───三年前のディルカリド伯爵家の取り潰しに伴って、さらに値段は跳ね上がっている。

 当然───魔術陣を所持していることが知られれば、上前を撥ねようとする輩に狙われる。

 盗まれるだけならまだしも、所有者の命まで奪われることも多く────それが、魔術師が希少であることに拍車をかけていた。

 セレナさんも、何度も付け狙われたことがあるらしい。無事だったのは、(ひとえ)にヴァルトさんとハルドのおかげだ。

「何だってまた、そんなことが知りたいんだ?」
「捕らえたディルカリド伯爵が、複数の魔術陣を所持していたんですが───幾ら、魔石を調達する立場だったからといって、所持する魔術陣の数が多過ぎるように思えるんです」

 数が多いだけでなく───かなり強力な魔術陣が、幾つもあった。

 あれほどの魔術陣を持っていたのなら────三年前、皇城に抗議に出向いたとき、その場で復讐を遂げられていたはずだ。

 だとすれば───全部ではないだろうけど、あの魔術陣の幾つかは後から手に入れたものだと考えられる。

 だけど、潜伏中だったディルカリド伯爵が、そんな高価なものを幾つも手に入れられるとは思えない。

 まあ、コネを使って融通してもらった可能性もあるが───それよりも誰かから強奪する方が手っ取り早いし───セレナさんの弟たちへの仕打ちを鑑みても、ディルカリド伯爵はそういうことを仕出かしそうな人物に思える。

 もし───私の想定通りに、あの中に盗品があるのなら、持ち主───あるいは遺族に返さなければならない。


 セレナさんの弟であるバレスなら何か知っているかもしれないが───バレスはかなり衰弱していて、昏睡状態を脱していない。

 使用人部屋の一室とはいえ、寝かせているのが古代魔術帝国仕様のベッドなので───ある程度回復するまでは、目覚めないはずだ。


「……解った。集落のことが済んだら、情報をまとめておく」
「お願いします」



「話しておかなければならないことは、こんなところか…。リゼ───他に何かあるか?」
「……いいえ。今のところはありません」
「オレたちにもないな」

「では───俺たちはそろそろお(いとま)する」

 時間を確認すると、もう午前11時を回っている。
 結構、長い時間、話し込んでいたようだ。

 ガレスさんが呼ばれている場に、レド様も呼ばれるかもしれない。

 今日はラムルもエデルもお邸にいるから、使者への対応は心配ないとは思うが───私たちも一度お邸に戻った方がいいだろう。昼食も摂らなければならないし。


「あ───そうだ、ガレスさん。『高潔の剣』の皆さんに、お疲れさまでしたと伝えておいてくれませんか」

 『高潔の剣』とは、今回ダウブリムの街へと行ってくれたパーティーだ。

 ベルロさんの商隊を護衛して、この皇都にやって来た冒険者パーティーで───メンバー全員がBランカー冒険者であるらしく、私は少し会話をしただけだけれど、ベテランパーティーという印象を受けた。

 皇都からダウブリムの街までは、商隊など一般人が混じった団体ならば、辿り着くには三日はかかる。しかも、今回は一部迂回しなければならなかったので、通常よりも距離は長い。

 幾ら体力のある冒険者のみだったからといって───その距離をたった半日程度で往復したということは、かなりの強行軍だったはずだ。

 そんなことを考えながらお願いすると────ガレスさんは口元を緩めて頷いた。

「解った、伝えておく」
 
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