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八条学園騒動記

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第七百六十九話 三人で飲むクミズその十三

「何しろあるものは食べる国だから」
「それでなのね」
「そうしたものも食べるのね」
「私が暮らした場所には近くに大きな湖があって」
「その湖になのね」
「蛸とかいたのね」
「カスピ海みたいな湖で」
 そこまで巨大なというのだ。
「アザラシもイルカもいたのよ」
「それでそうしたものも食べていたのね」
「あんたも」
「家族でね。けれど泉鏡花さんは」
 また彼の話をした。
「そういうのも食べなかったらしいのよ、お水だってね」
「ああ、沸騰させて」
「これはモンゴルもだけれど」
 生水を飲まず一旦沸騰させてから飲むのだ。
「そこからお茶を飲む様にもなったけれど」
「それでもなのね」
「そう、流石にあの人はね」
「極端ね」
「昔のモンゴルでは生きていけないわね」
 こうアロアに話した。
「昔は生肉も食べたそうだし」
「そうだから」
「生の血も飲んだし」
 家畜のだ、そうして栄養を摂っていたのだ。
「そんなのだから」
「そんな潔癖症の人だと」
「だって燃料はね」
 生活に用いるそれはというと。
「羊や馬が出した」
「ああ、そういうのね」
「草原で木なんてないから」
「薪とか」
「だったらね」
 それならというのだ。
「草を食べて出したから」
「草ね」
「それの塊だから」
「燃料になるわね」
「だからね」
 それでというのだ。
「出したものを拾って集めて」
「燃料にしてたのね」
「そうだったのよ」
「そうなのね」
「だからね」
 そうした環境だからだというのだ。
「あの人はね」
「昔のモンゴルでは暮らせないわね」
「極限の生活環境で」
 そうであってというのだ。
「生活自体が軍事訓練だったのよ」
「スパルタみたいね」
 ベッカはナンの今の言葉にサラミを食べつつ言った。
「それって」
「いや、スパルタはあれでしょ」
 アロアが横から言って来た。
「敢えてね」
「ああしたことしてたのね」
「戦争に勝つ為にね」
「強い軍隊を作る為に」
「もう極限まで厳しく鍛え抜かせていたでしょ」
「人工的に」
「スパルタ自体にはあったのよ」
「ものが」
「そう、あったからね」
 だからだというのだ。
「人工的にね」
「ああした無茶をしてたのね」
「けれどモンゴルはね」
 彼等はというと。
「最初から何もなくて」
「過酷な環境で」
「そこで暮らしていて」
「生活自体が軍事訓練ね」
「意識してやってたスパルタよりも強かったんじゃない?」
「そうなの」
「敢えて贅沢をしないのと」
 スパルタでは贅沢は徹底的に否定された、それに触れることすら罪であるとされていた程であった。
「最初からなくてね」
「それで生活自体が軍事訓練だと」
「いつも馬に乗って狩りをして」
「モンゴル相撲もして」
「それだとね」
「モンゴル人の方が強かったのかしら」
「そうじゃない?」
 二人で話してだ、ナンに聞こうとすると。
 ナンはチーズを食べてからだ、二人に真剣な顔で口を開いた、そうして二人の今の疑問に対して答えたのだった。


三人で飲むクミズ   完


                   2024・6・24 
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