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地下アイドルの日常

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第二章

「出さない、どの大学に通って家は何処にあるか」
「間違ってもか」
「言わない様にしてるよ、よく通うお店も」
 それもというのだ。
「もうな」
「ネットで出さないか」
「アイドルは仕事で」
「プライベートは別か」
「プライベートに入られるとな」
 それこそというのだ。
「洒落になってないからな」
「絶対にか」
「ああ」
 柳原は津森にさらに話した。
「何があってもな」
「守る様にしてるんだな」
「事務所からはそのことも言われてるしな、若しプライベート家や大学の近くでファンの人達に会っても」
 そうなってもというのだ。
「違うってな」
「言うんだな」
「そうしてるよ、兎に角ファンの人達とは変な風にならなくてな」
 気を付けてというのだ。
「プライベートは出さない、トレーニングや食事にも気を付ける」
「アイドルも大変だな」
「これがな」 
 こう言ってだった。
 柳原はアイドル活動を続けていった、だが。
 就職活動に入るとだ、事務所の社長に言った。
「あの、俺そろそろ」
「ああ、就職だね」
「ですから」
「じゃあ活動を減らしてね」
「大学を出て就職したら」
「アイドル活動もね」
「卒業させて下さい」
 こう言うのだった。
「いいでしょうか」
「勿論だよ、この仕事やっぱり長く出来ないからね」
「アイドルは、ですね」
「そこはもうね」
「割り切ってですね」
「こっちもやってるから」
 社長は真面目な顔で話した、如何にもやり手といった感じの初老の男である。
「また次の子を募集するから」
「俺が卒業したら」
「宜しくね、じゃあ仕事はこれからセーブして」
「就職活動に力入れます」
「そして就職決まって大学卒業したら」
「アイドル活動も」
「そういうことでね」
 まさにとだ、社長は自ら言った。
「宜しくね」
「はい、それじゃあ」
「その時までお願いするよ」
 柳原に笑顔で言った、そしてだった。
 柳原はグループのメンバーとともにステージに出た、そうして地下のステージで歌って踊った。やがて活動をセーブし就職活動に入れて就職を決めた。そのうえで大学もアイドル活動も卒業してサラリーマンになった。だが結婚して娘に昔の自分の写真を見せてアイドルだったと言うと写真を見せても嘘だと笑われて思わず自分も笑ったのだった。


地下アイドルの日常   完


                  2024・9・22 
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