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金木犀の許嫁

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第三十五話 大阪でのデートその十二

「けれどね」
「流石に」
「そう、そこまではね」
 流石にというのだ。
「無理ってね」
「思うのね」
「ええ」
「そうよね」
 二人で話して納得した、そして夜空はこんなことも言った。
「ただ粕汁とか言われたら」
「まさに大阪よね」
「そう思うわ」
「だから織田作さんだからね」
 この作家の作品世界だからだというのだ。
「本当にね」
「大阪なのね」
「大阪で生まれ育って生きて来た人で」
「お墓もあるし」
「だからね」
 それでというのだ。
「大阪のことをね」
「書いてるのね」
「作品の舞台もね」
 これもというのだ。
「大阪で大阪の人達がね」
「出て来るのね」
「大阪を書いた人なのよ」
「文字通りに」
「だからね」
 そうであってというのだ。
「それでね」
「大阪を感じるのね」
「あの人の作品からはね」
「そういうことね」
「京都を書いた作品もあるけれど」
 池田屋騒動を店の者達から書いた作品もある、だがこの作品も町人を書いているところが織田作之助なのだ。
「殆どはね」
「大阪ね」
「作品の舞台はね」
「だから大阪の匂いが強いのね」
「そうなのよ、若くしてだったけれど」
 その死はだ。
「けれどね」
「それでもなのね」
「その書いた作品は残っていて」
「今も読めて」
「大阪をね」
 この街をというのだ。
「そしてそこにいる人達と文化を」
「書いたのね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「粕汁もね」
「出て来るのね」
「若し長生きしていたら」
 結核で倒れずにというのだ。
「昭和五十年代でも六十代だったから」
「そんなお歳だったのね」
「だからね」
 真昼はさらに話した。
「結核じゃなかったら」
「もっと長生き出来て」
「それでね」 
 そうであってというのだ。
「もっと沢山の作品を残してくれて」
「たこ焼きやお好み焼きもなのね」
「食べてね」
 そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「楽しんでいたのね」
「焼きそばも串カツも」
 そうした大阪名物の料理もというのだ。
「豚まんもアイスキャンデーもね」
「食べていたのね」
「だって自由軒のある場所に」 
 千日前の一帯だ、織田作之助はまさにその辺りを日々歩きそうして楽しみ生きて来たのである。そして法善寺の方にも行っていたのだ。 
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