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ハッピークローバー

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第百四十一話 楽園はなくてもその八

「間違ったことが信じられていたんだよ」
「巨人がいいチームだって思われていたのね」
「そうなんだ、けれどその巨人が弱くて」
「万年最下位なら」
「それで阪神が強いなら」
 そして毎年日本一ならというのだ。
「それだけでね」
「幸せよね」
「そうだよ、幸せってね」
 これはというのだ。
「楽園じゃなくてもね」
「あるわね」
「というか何も悪いことがなくて」
 そうした環境でというのだ。
「それで幸せとか感じるかな」
「悪いことが何もなくて」
「それじゃあそれが普通でね」
「悪いことがない状況が」
「それでね」
 そうした環境でというのだ。
「果たして幸せを感じるか」
「あの、楽園を追い出されたのは」
 理虹はこちらのことから話した。
「キリスト教の」
「さっきそのこともお話に出たね」
「アダムとイブね」
「知恵の実、林檎を食べてね」
「追い出されたわね」
「そうだよ」
「あの、知恵がないってことは」
 これはというのだ。
「何も考えない何も感じない?」
「幸せとかも」
「不幸も。何も考えないと」
 そうであると、というのだ。
「何も感じなくて」
「それでだね」
「ただいるだけだから」
 それでというのだ。
「植物以上に考えなくて」
「サボテンとかも調べたら考えてるしね」
「そうした風だから」
「楽園にいるんだね」
「もうね」
 理虹は考える顔でだ、古田に言った。
「脳味噌がない位ね」
「考えないなら」
「楽園にいられるのかしら」
「というかそうした状態が楽園?」
「さっき古ちゃん考えるから悩むって言ったわね」
「苦しんでね」
「それで憂いたりするわね」
 この話をまたしたのだった。
「そうよね、もう本当に何も考えないなら」
「植物よりも」
「楽園にいるんじゃないかしら」
「何かね」
 古田もここまで聞いて言った。
「楽園ってね」
「考えないで済む世界?」
「そうかも知れないね」
「そうよね、考えないで済むって」
 それはとだ、理虹は言った。
「幸せかしら」
「幸せを感じるか」
「ええ、どうかしら」
「感じないね、幸せだってね」
 それもとだ、古田は答えた。
「考えて感じるから」
「あるわね」
「思うからね」 
 自分を幸せだと、というのだ。
「だからね」
「それじゃあね」
「アダムとイブみたいにね」 
 知恵の実を食べる前のというのだ。 
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