赤ビールの力
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第一章
赤ビールの力
ライオンの頭を持つ女神セクメトは怒ると大層気性が荒くなる女神である、このことは神々の悩みの種の一つだった。
「兎角怒るとだ」
「見境なく暴れる」
「その時はどうにもならない」
「血を飲みたがり肉を貪る」
「まさにライオンだ」
「餓えたライオンになってしまう」
「困ったものだ」
セクメトについてこう話した、そしてだった。
神々の主ラーもこのことに憂いていた、そして玉座から神々に言うのだった。
「若しだ」
「またですね」
「セクメト女神が暴れると」
「その時どうすべきか」
「その時が問題ですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「私もだ」
「憂いておられますね」
「兎角あの女神は強いです」
「只でさえそうであるのに」
「それで暴れた時はです」
「尚更です」
「手が付けられません」
「そして血と肉を貪る」
その両方をというのだ。
「それから満腹になるまでだ」
「暴れ貪るので」
「世に大きな被害が出ます」
「セクメト女神が暴れると」
「そうなります」
「あの女神が怒る度に世に大きな被害が出るとだ」
そうなればというのだ。
「たまったものではない、だからな」
「それで、ですね」
「その際どうすべきか」
「暴れさせない為には」
「一体」
「いい知恵はないか」
ラーは自分の前にいる神々に問うた、すると。
コウノトリの頭を持つ神トトが進み出てだ、こう言った。
「その際はまず食するものをです」
「セクメト女神にか」
「はい、彼女の前に置き」
そうしてというのだ。
「食べてもらいましょう」
「まずは食べてもらうか」
「兎角貪るので」
怒って暴れたその時はというのだ。
「手当たり次第にそうなる前に」
「供物を食してもらうか」
「特に肉を」
「肉を貪るからだな」
「貪るのは結構見境がないので」
「肉以外のものもか」
「置けばいいです」
こう言うのだった。
「それで」
「それで肉を貪ることは解決するか」
「そうなります」
トトは自信を以て答えた。
「間違いなく」
「わかった、ではな」
「セクメト女神が怒った際は」
「すぐに多くの供物を出そう」
「そして食べてもらいましょう」
「そうしよう、だが」
それでもとだ、ラーはトトに怪訝な顔のまま言った。
「それだけではない」
「血のことですね」
「そちらはどうするのだ」
トトにこちらのことを問うた。
「一体な」
「そちらも考えがあります」
トトは落ち着いた声で答えた。
「ご安心下さい」
「そうなのだな」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「若しです」
「セクメト女神がまた怒ってもだな」
「ご安心下さい」
「それではな」
ラーはトトのいうことを信じることにした、そして。
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