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人を守る神

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第三章

「それで領土はだ」
「増えますか」
「戦をせずともな、そしてだ」
 神はさらに話した。
「人は増えてだ」
「神々を讃えますね」
「そして家畜も増えてな」
「国は豊かになりますね」
「国が豊かになればだ」
 そうなればというのだった。
「人はさらにだ」
「増えます」
「そうなるからだ」
 だからだというのだ。
「この度はだ」
「戦ではなく」
「降る様にだ、国の力を見せてな」
 エラ達の国のそれをというのだ。
「降る様に言うのだ」
「それでいいのですね」
「そうだ、戦をするよりもな」 
 こう言ってだった。
 マルドゥークはエラにその国の力を見せることによって周りの国々を降らせそれによって国を大きくし人と家畜を多く手に入れる様にさせた、エラも素直に従ってだった。
 周りの国々に自分の国の人の多さに豊かさ何よりも軍の数と装備のよさを見せ付けた、するとだった。
 周りの国々はこぞってエラの国に降り彼の国は戦わずして神託を伺う前よりも遥かに強く豊かで大きな国になった、そしてだった。
 人々に神々を崇めさせた、ここでエラはあることに気付いた。
「最初に戦を言われたのはな」
「我等を試すことで」
「そしてだ」
 イシュムに話した。
「真意はな」
「戦をさせず」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「平和にだ」
「人が神々を崇める」
「そうなることがな」
「神々の本意ですね」
「人を守りな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでだ、神々の本意はだ」
「人を守ることですね」
「戦からな」
「即ち平和ですね」
「若しそなたの話を聞かずだ」
 エラは玉座から自分の前に控えるイシュムに話した。
「戦をしていればな」
「そのことに気付かず」
「多くの人や家畜を殺してだ」
「神々を崇める者を減らしていました」
「そうなっていた」
「そうなっていては」
「最悪の事態だった」
 そうなっていたというのだ。
「そなたと話してよかった」
「そしてあらためて神託を伺って」
「そうだった、神々はな」
「戦を求めておられず」
「平和、人を守ることをだ」
「望んでおられます」
「それがわかった、そのことがわかりな」
 そうなってというのだ。
「私はよかったと思う、ではこれからもな」
「国の力を見せ付けて」
「そして降らせてな」
 そうしてというのだ。
「国を大きくしてな」
「人も家畜も増やし」
「神々を崇める者を増やそう」
「そうしていこう」
 こう話してそうしてだった。
 エラはそれからもイシュムと共に国を大きくし神々を崇める人を増やしていった、戦わずそうしていき神々を喜ばせた。自分達の本意が理解されたマルドゥーク達は満足していた。メソポタミアに伝わる古い神話である。


人を守る神   完


                    2024・5・12 
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