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擦れ違った人は

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大学生

「ないさ」
「そうですね」
 宇喜多も考えてみて流石にないと思って頷いた、その上で徳田に言った。
「見間違いですね」
「ああ、それじゃあな」
「はい、お店に戻りますか」
 徳田に言葉を返した、だが。  
 ここでまた擦れ違った人を見た、今度は。
「ジャーナリストでいつも庶民の為とか言ってる」
「ああ、珠川亨か」
「そうでした」
「あいつ大学こっちでな」
 京都の方のというのだ。
「時々な」
「こっちに来てですか」
「遊んでるんだよ」
 そうだというのだ。
「豪遊ってレベルでな」
「祇園で、ですね」
「そうなんだよ」
「それって全然庶民じゃないですよね」
 宇喜多は彼がいつも言っていることから言った。
「そうですよね」
「そんなのはな」
「どうでもいいんですね」
「マスコミはそんな奴が多いだろ」
「はい、それは」
「だからな」
 それでというのだ。
「あいつは」
「評判悪いですか」
「また来たかってな」 
 その様にというのだ。
「言われる位にな」
「評判が悪いですか」
「無茶苦茶横柄で尊大でな」
「ああ、テレビでもそうした一面見えますね」
「全く、マスコミはあんな奴が多くてな」
 それでというのだ。
「嫌だよ」
「祇園にも来て欲しくないですね」
「さっき自分が擦れ違ったのは将軍様かどうかわからないがな」
 そうであるがというのだ。
「今見た珠川はな」
「最悪ですか」
「ああ、また嫌な話が祇園に出るぞ」
「何をしたか」
「嫌な奴と擦れ違ったな」
 心からの言葉だった。
「店に帰る前に神社にお参りするか」
「それで厄払いしますか」
「そうしような」
 こう言って実際に店に帰る前に厄払いをした、そのうえで店での仕事に入ったが。
 祇園に将軍様が来たという話はなくて宇喜多の見間違いだということがはっきりした、だが珠川の悪評は残った。そしてそれがネットにも伝わり彼の評判をさらに落としたのだった。


擦れ違った人は   完


                  2024・3・11 
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