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第64話「見たまえ桂木くん、《シュトラバーゼ》の姿を!」
前書き
ネオ・代表05−1です。第64話「見たまえ桂木くん、《シュトラバーゼ》の姿を!」となります。
みんな大好き―――ロバート・レドラウズ教授を、どうぞご覧ください。
―――宇宙戦艦ヤマト・後方観測室。
見たまえ桂木くん、《シュトラバーゼ》の姿を!
なんとも凄まじく、そして美しい光景ではないか。杭で貫かれたかのような、あの星を!
《シュトラバーゼ》は、地球と同等のサイズを持つ惑星なのだ。それと両極の”杭”だが、全長2000キロはある。あれは結晶化した物質ではなく、水晶と呼んでもよいだろう。私的には、「結晶化した物体」と呼ぶがね?
あの物質は自重で崩壊することもなく、《シュトラバーゼ》の大気圏すら貫いて聳えている。天然自然の物理法則を逸脱しているのだよ、あれは。
どうやら、あの結晶体には質量が無いようなのだ。しかも、だ。この星は質量を持たないばかりか、隣接次元に保持している。エネルギーも、だ。
これにより、奇怪な形を崩壊せずに保っていられるのだよ。
「《シュトラバーゼ》には、遺跡があるという話があります。それは、本当でしょうか?」
遺跡があるのは本当だとも、桂木くん。しかしそれは、決して正しい表現ではない。この星すべてが、古代アケーリアス文明の遺跡なのだよ。
彼らが何か、実験を行っていたのは間違いないのだ。
「でなければ、このような珍妙な星が存在できる筈がないと?」
その通りだとも。…さて桂木くん、あれを見たまえ。
「マグマを、ですか?」
そう、マグマだ。この星の海は全て、煮え滾る溶岩なのだ。真っ黒の大地を割り、噴き出すマグマが河となり灼熱の海へ注ぐ。
「とても、人間が生身でいられる環境ではないですね」
普通なら、そうだろうな。
「普通なら?」
そうだ。大気は過熱され組成が地球と大差なくとも、人間が生身を曝せる場所ではない。直ぐ様、蒸し焼きとなってしまうだろう。
ところが、だ。この星の気温は、そこまで高くない。せいぜい、戦前のナイロビ程度の暑さなのだよ。
「それで済む訳ない、ですか?」
うむ。あの巨大な結晶が、その原因なのではと言われている。あの結晶は、両極に聳え立つものばかりではない。サイズはバラけるが、表面を覆うように生える。
あれが、惑星全体の気温を下げている。だが、だ。気温を下げるというのは、熱収支が安定するという意味。ではそのエネルギーは、いったい何処へ向かう?
先ほど私は、この星に質量が無いという話をしたことだろう。知っての通り、エネルギーとは―――質量に光速度の自乗を掛けたに等しい。つまりこのエネルギーもまた、隣接次元へ転移させているのだよ。
分かるかね、桂木くん。
「はい。教授が仰りたいこと、よく分かります」
ふふっ、素晴らしい。そう、この星は―――古代アケーリアス文明が改造した星なのだ!間違いない!
「しかし、何故でしょう?」
……ふむ、何故だろうね。だが、それを解き明かすことこそが私達―――考古学者の使命。
「その為には、遺跡を調査せねばならない」
そうだ。最も、この星に遺跡として存在する建造物は、アケーリアスによって作られたものではない。それは、判っている事実。遺跡として存在する建造物は、既に滅んだ星間文明が遺したもの。
滅んでしまった彼らはおそらく、アケーリアスの意図に気づいたのだろう。アケーリアスの遺跡を調査すれば、結論に達することが出来ると。
桂木くん。
「はい、教授」
我ら地球人類は果たして偶然誕生した存在なのだろうかと、疑問に思ったことはあるかな?
「…はい、あります」
そうだろう、そうだろう。私もそうだ。私は、人類が誕生したのは偶然だとは思っていない。イスカンダルやガミラス、ブリリアンスが太陽系に訪れる以前から、地球人類の種が遠い宇宙からやって来たと信じて疑わない。今後も、絶対に疑うことはない。
かつて、ガミラス戦争前の地球には古代文明の遺跡が存在していた。その遺跡には、宇宙人―――今では異星人と呼ぶ存在を示唆するものがあった。
ある日、天から降り、人々に叡智を授けた大いなる存在。『神』と崇められがらも、突如として姿を消した存在。太古の人々は『神』の姿を壁画に刻み、再び降臨する日を待ち続けた。
他にも、だ。文明すら持たぬ段階から、我々のDNAには偉大なる存在が刻まれていた。『旧約聖書』と呼ばれる神話において創造された―――最初の男女の段階で、だ。
「確か、教授の仮説を提唱したことがあると」
あぁ、沢山な。当時が懐かしい。…だが皆、眉を顰めるばかりだったよ。
「そうだったのですか?」
そうとも。はぁ全く、頭が固い。いや、彼らの気持ちも分かるつもりだ。だが、そもそも我々はワープを実現させて日が浅いのだから、直ぐ眉を顰められると…心が傷つくものだよ。
…はぁ、それにしても、『真実』を研究しているガミラス人に生まれたかった。こういった研究と調査は、ガミラスのほうが進んでいるというのに。
「まだ間に合いますよ、教授。ガミラスよりも先に、『真実』に辿り着きましょう」
そうだな。アケーリアスがどのような意志で、この宇宙に文明の種を蒔いたかを知ることが。
…それにしても、軍の連中は本当に頭が固いものだな。そもそも、私は公式に許可を得ているのだぞ。《シュトラバーゼ》の調査許可を得るのに、どれだけの手間が掛かったものか。頭を下げに下げ、ようやく実現したというのに。これでは、全てが水の泡となってしまう。
…軍の連中の言い分も、私なりに分かっているつもりだ。嫌な予感、しなかった訳じゃない。
ガトランティスが現れたのもそうだが、一番は《シュトラバーゼ》で使用する筈だった―――100式空偵が届かなかった事。なんでも、輸送中に月で事故が起きたそうだ。
全く、こんな事になるなら、第十一番惑星で調達したほうがよかったよ。
「教授、この〈ヤマト〉にも100式空偵は積んでますよ」
おぉ、そうか。それはよかった。あれは、中々に使い勝手がよい機体だからな。エンケラドゥス調査ぶりに地球で乗ってみたが、操縦の腕は落ちていなかった。
…思い出してしまったよ、腹ただしい男を。
「彼、ですか」
そう、司令官の土方竜だ。穏便な態度で接してやったというのに、何だあれは。取り付く暇もない。無礼な男だった。
この調査は、芹沢氏の肝いりなのだぞ。あの男は一生、太陽系最果ての星に勤務したいらしい。《シュトラバーゼ》の調査が成功した暁には、私に対する非礼な代償を支払うことになるだろう。
そういえば、君はあの時ベランダにいたな。あの司令官の失礼極まりないを目の当たりにせずに済んだなら、幸運というもの。
思えば、桂木くんとは初めて顔を合わせたのも第十一番惑星だったな。教授のお役に立てる、と熱心に聞いて助手は君しかいないと固く決めたものだったよ。
「ふふっ、ありがとうございます」
本当に立派なものだよ、君は。
学生時代から、外惑星文明を専攻しようとする人間は少なくてね。君のように進路を選ぶ段階で、身を捧げるという人間は珍しかった。
「ガミラスとの戦争が開始した直後に、進路を決めていました」
ふむ、そうだったのか。桂木くん程の人間は、そうはいない。文句の付け所がない経歴だと、今でも思う。逆に君のような人間が何故、この調査に加わったのか不思議なくらいだ。
「教授が、アケーリアス調査の第一人者だからですよ」
おぉ、それはなんともありがたい言葉だ。なんだか、報われる気がするよ。だからこそ我々は―――、
「偉大なる超古代文明の継承者として謎を解明する、ですか」
そうだ。解明せねばならない。君の言う通り、偉大なる存在の継承者して。調査団は君とわたし以外殺されてしまったとはいえ、せめてこの星の遺跡をこの目で見てみたい。
だから桂木くん、協力してくれ!
「勿論です、教授。協力させていただきますよ。だから―――」
―――チャンスは自分の手で、ね。
ありがとう桂木くん、君はいつもイイ事を言う。嬉しいよ。
「それほどでも」
なんとしてでも、目的を果たさなくては…。
ふと思い出したが、私は一度死んだような気がするが••••••あり得ないか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
《3号SIDE》
なるほど、イイ事を聞いた。では私は、便乗させてもらうか。その際はよろしく頼むぞ、ロバート・レドラウズ教授?
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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