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第38話「ブリリアンスの王、相見ゆ」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第38話「ブリリアンスの王、相見ゆ」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――地球。

 西暦2201年 某月某日。
 この日、予定通り、彼らはやって来た。

 地球の蒼い空を悠然と降りてくるのは、ブリリアンスの宇宙艦隊だ。アルポ銀河のブリリアンス星を発ち外交団を乗せた艦隊が、遂に地球へと到着したのだ。

 地球連邦艦隊の誘導管制を受け、地球側が降下地点を停泊地に指定した某諸島の一画へと向かっていく。

 その光景を観ていた、とある1人の男性将兵は思う。懐かしい、ガミラスも今のブリリアンスと同じくこのように降下していた。

 脳裏には、過日の事がありありと蘇ってくる。同期や戦友の死の衝撃に、謎の病原菌で両親は死亡、次々に落着する遊星爆弾の恐怖、地下都市の生活での絶望と無力感の逼塞の日々。

 だが、私は生き残ってしまった。後を追いたい気持ちが強くあったが、母と父は喜ばないだろう。だから、この手で殺してやりたいという憎しみの気持ちを何とか仕舞い込み、ヤマトに乗った。

 生き急いでいた、はあるにはあったが、イスカンダル航海の帰還で、私は絶望から希望へと変わった。ヤマトが帰還し地球を青い星へと取り戻したのもあるが、一番は宝を―――愛する子供がいるからだ。

 これで、簡単に死ねなくなってしまったが、不思議にも何処か開放感があった。清々しい気持ちだった。

 私と同じく、大切な何かを喪った者は多いだろう。認め合い、許し合い、愛し合うのは難しいが、必要なのだ、前に進む為に。

 「愛する子供と共に、明日を」
 
 軍帽を被り直した1人の将兵は、その想いを強めたのだった。

 
 ブリリアンス外交団艦隊は、トラック泊地へ着水を開始する。アクラメータ級改と白銀の戦艦―――ブリュンヒルト級一番艦〈ブリュンヒルト〉は、着水することが可能なのだ。

 艦橋内では各艦への入泊命令と情報が交わされ、艦橋内は司令部要員のバトルドロイドの声で満ちていた。そんな中、だ。ギルド長スヴェートは、黒髪赤眼の女性―――スラクルに視線を向けた。

 「海洋での停泊、やはり素晴らしいものだな」

 「そうですね」

 彼らの瞳には、碧海が映る。スヴェートの言う通り、素晴らしい光景だ。旗艦〈ブリュンヒルト〉も着水し、黎明の光を浴びる海水は白銀の戦艦が身を置く衝撃で波立ち、その水飛沫は黄金のように輝いた。

 「では、行きましょうか」

 「そうだな」

 1時間後、入泊が完了したとの知らせを受けたスヴェートは、スラクルと共に艦橋を後にした。

 ……
 …
 
 舞台となるのは、地球側が用意した某施設で行われる。小さいながらも議場として必要な容積は満たせているこの建物は、ガミラスとの外交交渉の際に使用されていた。

 設えられた会議場は国威と体面を重視し、豪奢なテーブルクロスを掛けた黒檀の長机とふかふかの席、絨毯や壁面、装飾にも手が込まれていた。

 その会議場に地球連邦大統領以下の要人が、ブリリアンスの外交団を出迎えた。

 「ブリリアンス外交団、入室されます!」

 男性士官の大きな声が会議場に行き渡った直後、ブリリアンスの外交団が入室する。一同の視線が、彼ら―――否、彼女らに向けられた。

 「な、なんと…」

 地球連邦大統領ペネットは、小さくも驚きの声を上げる。それは、この場に集う要人も同じ気持ちだ。ブリリアンス外交団の全員が見目麗しい女性だったのもそうだが、視線は”彼女”に向けられていた。

 美しく、きめ細かな白髪。
 真っ直ぐ整った鼻。
 切れ長の美しい赤い瞳と黄金の瞳をするオッドアイ。
 強い意思を感じさせる唇。

 全てがバランスよく配置された”彼女”の顔立ちは、まるで精巧に作り上げられた人形のようにも見えることだろう。

 美しいのは顔だけじゃない。

 身体付きも完璧といっても過言ではないものだった。学ランを基調としたような純白の軍服を着用し、外は黒色、内側が赤色の肩掛けマントを背負う。

 軍服の上からはっきりと分かるくらい胸元は、ツンっと上向きに盛り上がっている。それでいて腰は今にも折れそうなくらい引き締まっていた。

 下は純白のスラックス。足にフィットしているスラックスは足のラインが良く分かり、スラリとした両足は、まるでモデルのよう。

 ペネット大統領を含む要人は、”彼女”の名前を内心で確認する。―――スヴェート、と。
 同時に、彼らは思う。スヴェートは、一大佐ではないのか。否、と内心にて首を横に振る。メッセージの最後には、こうあったのだ。―――ブリリアンス国王、スヴェート・ブリリアンス。

 つまりは、だ。スヴェート・ブリリアンスは王族で、女王だったのだ。何故、一国の王がアケーリアスの遺跡シャンブロウにいたのかについては疑問が絶えない。しかし、だ。今はそれを考える時間ではない、後でも出来ることだ。

 ペネット大統領は、歓迎の笑みを浮かべて出迎えた。

 「ようこそ、地球へ」

 彼に対し、スヴェートは静かな笑みを浮かべた。

 両国の代表団はペネット大統領とスヴェート女王を中心にして左右に広がり、交渉のテーブルへと着く。外交交渉が、幕を上げた瞬間であった。

 ……
 …

 そして、時は経過し、西暦2201年の某月某日。
 度重なる協議と擦り合わせの上で地球はブリリアンスとの各種国交の条約を、締結したことを国内外に知らしめたのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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