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第29話

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第29話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――ブリリアンス艦隊旗艦〈スラクル〉。

 攻撃予測データにより回避出来る確率が、七割もあるのだ。スヴェートからすれば、それで充分だった。彼女は〈ヤマト〉が解析した攻撃予測データを、全艦にリンクするよう指示を出した。

 攻撃予測データを全艦にリンクしてから30秒が経過した時だった。

 「攻撃、来マス。方位〇〇〇、連合艦隊ノ左翼にデス」

 敵旗艦から強力な光点と重力変動の感知を報告された。

 「全艦、攻撃予測データに従い回避しろ!」

 それに対しスヴェートは直ぐさま、攻撃予測データに従って回避するよう指令した。

 スヴェートからの指令により、回避行動に移るブリリアンス艦隊。ガミラス艦隊にも共有されていたようで、連合艦隊は艦体各所のスラスターを目一杯吹かして、回避行動をとっている。

 重力変動を感知し回避行動してから数秒後、空間の一画に時空の波紋が生まれた。波紋が中心に集中した刹那、その歪みから先程見た巨大なエネルギーが飛び出した。
 
 〈ヤマト〉のクルーにとっては二度目となる攻撃だが、ブリリアンスにとっては初だ。突如として現れた―――ガトランティスが火焔直撃砲と呼ぶ兵器のエネルギー流は、幾つもの小エネルギー流を纏わりつかせながら、連合艦隊左翼を空間ごと引き裂くかのように突進していく。
 
 火焔直撃砲のエネルギー流は、回避途中のアクラメータ級とゲルバデス級〈ニルバレス〉の中間地点を通過していった。

 「敵アウトレンジ攻撃、通過ヲ確認」

 「アクラメータ級、シールド低下」

 「同アクラメータ級、左舷装甲に損傷。損傷ハ軽微」

 とはいえ、完全無傷とはいかなかった。ゲルバデス級〈ニルバレス〉の隣を航行していたアクラメータ級は、損傷は軽微なれど小さなグレーの煙を1つ噴いていた。
 
 「改めて思うが、凄まじい攻撃だ」

 「私もです」

 ゴクンっと固唾を飲み込んだスヴェート。もしも、〈ヤマト〉から攻撃予測データを貰い受けなければ、今頃はアクラメータ級とゲルバデス級〈ニルバレス〉、そして〈ニルバレス〉の左舷を航行していた【デストリア級】とボレアス級Ⅱ型は、業火の炎によって焼き尽くされていただろう。

 アウトレンジ攻撃艦は1隻のみではあるが、今後の戦闘で隠していたアウトレンジ攻撃艦が多数投入された場合、不利に陥ってしまい、勝機は薄くなるだろう。それこそ、攻撃予測データがあったとしても勝てるかどうか分からない。

 そう思うと、背筋がゾッとしてしまう。1隻だけで良かった。

 「重力変動ヲ感知。方位〇〇〇、連合艦隊ノ左翼に来マス」

 「直ぐに回避行動を。…もう三発目か」

 驚くべき点は射程距離のみならず、その連射性能にあることをスヴェートは悟った。先ほどの攻撃から1分すら経過していないというのに、連合艦隊は新たな重力変動を感知したのだ。

 今度は〈ヤマト〉より右翼に位置する部隊への着弾が濃厚と、攻撃予測データは導き出した。直ぐさま〈スラクル〉以下のブリリアンス部隊とゲルバデス級〈ミランガル〉以下のガミラス部隊が散開し、火焔直撃砲の直撃コースから退避する。

 「ボレアス級Ⅱ型〈ボルコス〉、損傷ハ極メテ軽微。AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型〈スラス〉、損傷軽微」

 「予測できても、辛いところがあるか」

 火焔直撃砲の小エネルギー流の一つがボレアス級Ⅱ型〈ボルコス〉を掠めており、〈ボルコス〉はその艦体の一部を熔解し、熔解した部分の塗装を剥離させていた。とはいえ、航行不能と戦闘不能になった訳ではなく、艦に支障はなかった。

 AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型〈スラス〉は損傷軽微なれど、〈ボルコス〉と同じく艦に支障はなかった。
 
 僚艦が損傷軽微により傷つく中、連合艦隊は速度を落とすことなく前進を続けた。

 「最大射程距離まで、残り1万」

 索敵士の報告により、間もなく砲雷撃戦可能な距離に近づこうとしている。少しして火焔直撃砲が襲い掛かるが、それも回避し事なきを得た。成功確率73%とはいえども、今のところは失敗もない。地球の攻撃予測データ完成度に、「流石、母なる地球」とスヴェートは感心していた。

 〈スラクル〉艦橋で、火焔直撃砲のエネルギー流が素通りしたのを観たスヴェートはガッツポーズした。

 「よっしゃー!行ける、行けるぞ!」

 このまま行けば、比較的無傷で敵主力艦隊と交戦が可能となる。今度はこちらが反撃する番だ、ガトランティス。母艦から発艦した合同航空隊は、順調に機動艦隊へと向かっている。道中、連合艦隊と敵主力艦隊の中間に当たるエリアで、敵艦載機編隊と接敵したとの知らせが入ったが、合同航空隊は優勢。

 さぁ、いよいよだ。双方の艦隊が交戦可能距離に差し迫ろうとした途端、予想外の変化が起きた。

 「スヴェート様、後方ノ惑星シャンブロウに異変ガ」

 「異変?…確かに異変だ」

 「これは…」

 スヴェートと艦長代理は訝し気な表情だったが、”異変”を観た2人の女性は目を見開いた。

 「…もう何も驚かないぞ」

 「…驚かなかったら目を見開いていないですよ、ギルド長閣下」

 「…全く以ってその通り」

 惑星表面が静かに崩れ、その内側からはまるで骨組みのような球体が現れていく。やがて、灰色の空間に惑星シャンブロウの本当の姿が現れた。

 「…これが、本当の姿か」

 その光景に、スヴェートと艦長代理は目を奪われたのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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