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現実世界は理不尽に満ちている!

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第25話前半「白銀の守護者」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。となります。
前半・後半と分けてお送りします。スヴェートSIDE(一人称視点もある)がメインです。どうぞ、ご覧ください。 

 
 夕日が注がれる最中、艦橋を出た防空指揮所にて拳銃を向け合う2人の男が居る。拳銃を向け合っている2人の男の正体は、古代進とフォムト・バーガーだ。それを固唾を飲んで見つめる新見、相原、沢村、桐生、バーレン、メルヒ。観察するように見るネレディア。

 誰にも知られることなく、スヴェートはフッと笑みを浮かべながら思う。…何故か一触即発なのだが、と。

 どうしてこのような事になっているのか、私は追憶し始めた。

 ……
 …

 あれはそう、打ち合わせが終わった時だ。打ち合わせを終え、採掘作業を行う現場へと向かおうとしていたところ、新見が血相を変えて飛び込んで来たのだ。

 曰く、桐生がエレベーターに乗るや消えた。

 私は困惑した。何を言っているんだと。エレベーターに乗っただけで、人が消える訳がないじゃないかと。…しかし直ぐ納得してのが怖いところだ。何せ、そういった事が起きる空間に閉じ込められているのだから、エレベーターに乗って消えてしまうのも仕方がないのかぁ、と思っていた。……改めて困惑してしまった。何だ、エレベーターに乗ったら人が消えるって………。

 しかし、続けて語られたことで、多少は困惑の色が薄れた。

 桐生を乗せたエレベーターが、天井を突き抜けて真っ直ぐ上へ上昇。エレベーターは最上階の筈の4階どころか、空が見えていたガラスの屋根を突き破った直後、屋根を形成していたガラス片などが一切降ること無く、桐生を乗せたエレベーターはゆらりと歪んだ空間に入るや消え去った。

 …多少は困惑の色が薄れたとも、…うん。

 採掘作業はやらず、桐生の救助に赴いた。

 エントランスへと向かい、エレベーター扉上部にある表示板の階数を示す針を見つめた全員が目を見開いた。それもその筈、動かない筈のエレベーターと針が動いているのもそうだが、…最上階は4階だったのが昨日まで無かった11階までの階数表示となっていたのだ。衝撃を与えるのには充分過ぎた。

 目を見開いている場合ではない、桐生のもとへ向かわなければ。エレベーターはエントランスのみで、降りて来ていない為、使用は出来ない。通信機の調整で席を外している相原とバーレンを除き、階段を使い最上階まで駆けた。

 最上階についた一同だったが、壁面にある階数表示は4階のまま。エレベーターでは11階まであったのに何故だろうと疑問に思った瞬間、沢村の驚く声が耳に入った。

 どうしたどうした、と振り向いた私は絶句した。絶句してしまうのは仕方ない。

 4階に部屋は無く、エントランスにあったのと同じ白銀の美女が描かれた1枚の絵画しかない。それなのに、だ。どいうわけか、上へと続く金属製の階段がある。

 我先に上へと続く金属製の階段を駆け上がり、駆け上がりきったと同時に私は驚く声を出しそうになった。何故なら艦橋だったからだ。しかもその艦橋は、旧日本海軍最大の戦艦大和。

 全員が戦艦大和で戸惑っていると、外から銃声が響いた。銃声が聞こえた方向の扉から外へと飛び出し、私を先頭に階段を駆け上がった。

 左に防空指揮所があり、それを1人分程度の通路が囲む。通路の向こうはぷっつりと景色が切れ、そこが高所だと分かる。もし、足を踏み出せば命の保証は無い。

 そんな防空指揮所には、2人の男女が居た。ガミラス人のメルヒと地球人の桐生だ。大きな布袋を足元に置いているメルヒは桐生の首を後ろから左手で締め上げながら、拳銃の銃口を古代達に向けた。彼は彼女を人質としたのだ。

 そんなメルヒは、布袋に目をやりながら言い放ったのだ。「この食料は俺達のだ!新鮮な食料だ!ザルツ人が食う権利はない!」。彼の血走った目は、正常ではないことは誰の目から見ても明らかだろう。

 何度も「新鮮な食料だ!」と叫ぶ彼に、私は思わず目が点となってしまった。そんなものが腐らずあったというのが疑問だ。偽物の食料ではないのか。仮に本物だったとして、それは何処にあったのか不明だった。

 まぁ、その食料を見つけ持ってきた人物は分かった。唯一ラウンジに来なかった人物、ネレディアだ。メルヒと桐生の後ろに、彼女がゆらりと現れた。状況が状況だというのに、慌てる様子を一切見せていなかった。

 ネレディアは微笑んだ。その微笑み、どこか黒幕のそれなのだが。ネレディアは口を開いた。
 
 「バーガー、古代。貴方達も銃を持っているじゃない」

 言われた二人は腰に目を落とすとホルスターに正式拳銃があることに気づき、驚きのあまり体を引いてしまう。私も驚いたが、慣れた。驚きの慣れは諦めともいう。消えていた銃が復活したのか。多分、正式拳銃だろう。

 何故かバーガーは古代の正式拳銃を凝視していたが、首を横に振った。バーガーはこの状況の解決を優先したようだ。説得が始まる。

 「メルヒ!いい加減にしろ!全員で分ければいいだろ?俺達はザルツ人の戦闘食糧のおかげで助かったんだからよ」

 怒り狂ったメルヒは、桐生の頬に銃口を押しつけた。

 「少佐、目を覚めしてください。一等ガミラス臣民である俺達が、どうしてザルツ人なんかに食料を譲る必要があるんですか!」

 「それは…ッ、食料なんかじゃ…ッ」「うるせぇ!」

 お前が目を覚ませ、と内心ツッコミを入れた。口に出したかったが、言葉を慎むべきだろう。おのれメルヒめ、女性になんて事を。

 そういえば、桐生は足元にある食料を食料ではないと断じた。彼女が断言したのだ。布袋の中身は、食料ではないのだろう。…骸骨とかだったら、ドン引きする自信しかない。仮に中身が本当に骸骨であるなら、空腹状態とはいえ、メルヒは何故気づかないのだろう。謎過ぎる。

 それと、だ。ネレディアお前、よく涼しい顔をしているな。この女、本当に黒幕だったりしないだろうか。実は本人ではなかったりして。その線はありそうだ。

 「改めて言います。少佐、目を覚ましてください!ザルツ人を信用なんて…!」

 「やめろーーー!!」

 不自然なく、ブラスター・ピストルをホルスターから抜く準備をしなくては。私が決意した直後、上方から声が降ってきたのだ。この場に居る全員が、上方を見上げる。降ってくる人物を確認し、誰かがその人物の名前を口にした。―――沢村、と。

 「なっ!?」

 唖然としつつも驚くことしか出来ないメルヒは、避けれなかった。落下する沢村はメルヒの体へと激突した。めちゃくちゃな態勢の体当たりだ。

 メルヒはその衝撃により拳銃が落とし、クルクルと回転しながら落下していった。同時に、桐生は拘束から逃れた。

 沢村のフライングボディプレスを受けたメルヒは背中を激しく打ちつけ、衝撃でなのか彼は沢村を押し倒した。押し倒した場所の直ぐ近くには布袋があり、上部が閉じられていなかったのか布袋の中身がぶち撒けられた。

 「「ひっ、ひゃーーー!!?」」

 布袋の中身は食料ではなかった。食料だったら、メルヒと沢村は悲鳴を上げながら抱きついていないし、後退ってもいない。食料ではない。布袋に入っていたのは、白骨化した頭骸骨だったのだ。…正解してしまった、…ひぇ。

 誰もが固唾を飲み込み、完全に引いている。状況が状況なのにも関わず、ネレディアは涼しい顔をしている。私が、ネレディアを黒幕女というあだ名をつけた瞬間となった。このネレディア、実は偽物なのでは?

 黒幕女というあだ名をつけれたと知らず、ネレディアは口を開いた。

 「テロン人と共存なんて出来ない」

 「テロン人?」
 
 バーガーは首を傾げた。

 私も首を傾げた。バーガーは知っているようだが、私は知らない。テロン人とは何だ?テロン人とやらは此処に居ないだろう。此処に居るにはガミラス人と、ザルツ人と偽っている地球人だけだ。

 自分達の正体がバレたと悟ったかのよう顔をし、口を噤む古代達。…あれ、古代達は地球人ではない?

 「私達は騙されていたのよ、バーガー。コイツらは、あのヤマトのクルーよ!」

 そ、そうだよな、彼らは地球人。…ん?何故ネレディアは、古代達をテロン人と呼んでいるのだろうか。謎だ。

 「そうかい、…やっぱりな」

 フッと笑みを浮かべるバーガー。
 いや、やっぱりなと呟かれても…。私は戸惑った。

 彼女の戸惑いを知らず、バーガーは腰のホルスターに右手を置き古代に体を向けた。相応して古代もホルスターに手を掛けた。

 瞬間、2人の男は拳銃を向け合った。 

 ……
 …

 時は現在。
 2人の男―――古代とバーガーは今も拳銃を向け合っている。

 「どうした、撃てよ」

 「君こそ、何故撃たない」

 緊迫感が支配する防空指揮所。いったい2人の間で何が起きたのか、気になるものだ。少しして、古代は口を開いた。

 「俺達は、ドメル将軍と戦った」

 バーガーは銃口を向けたまま、静かに聞く。
 スヴェートは耳を立てた。深い意味はない、純粋に気になったからだ。

 「我々はイスカンダルへ、コスモリバースシステムを取りに行かなくてはならなかった。ドメル将軍はヤマトを阻止しなくてはならなかった。上層部から命令されれば、軍人は戦うしかない。…相手を殺したい訳ではなくとも」

 「…そうだな。だがお前達に殺された。ドメル将軍もハイデルンの親爺さんもクライツェもゲットーもな」

 バーガーは、拳銃のグリップを握る力を強めた。
 古代は真っ直ぐと見つめる。

 スヴェートはキョロキョロしそうになった。話についていけれていない訳ではないが、脳の処理が追いつかない。彼女は追いつこうとしているのだ。ただまぁ、知らない勢力・知らない代物・知らない人物が語られている為、悲劇的だったとしても「へぇ〜」としかならない。彼女の反応はあれだ、戦争を知らない時代を生きる者の反応のそれなのだ。

 「聞いたでしょ、殺したのよ!バーガーの大事な人達を、彼らヤマトのクルーが殺した!コイツらは貴方の仇よ!」

 ネレディアは興奮気味に追い立てながら、古代とバーガーに近づいた。人を指すのは失礼だぞ黒幕女。

 「…例え―――」

 古代は口を開いた。
 ピタリっと興奮気味だったネレディアが口を閉じ、指すのを止めた。バーガーは静かに聞いているが、驚きの声を上げそうになった。何故なら、古代が微笑んでいたからだ。

 「―――生まれた星が違っていても、俺達は理解し合える」

 古代は銃口を下げ、拳銃をホルスターに戻した。微笑みのまま、彼は目を閉じた。

 「理想主義だな」

 バーガーは目を細めて睨みつけた。

 「兄が遺した言葉さ。共存共栄もそうだけど、俺はそれが大好きだ。勿論、一番は兄だ」

 「…良い兄を持ったな、古代」

 銃口を向けたままではあるが、バーガーの睨みは無くなった。今は、笑みを浮かべていた。

 それを見たスヴェートは、兄の事はご冥福を申し上げる、と内心で目を閉じた。古代兄が遺した言葉は良い言葉だなぁ、そう思っていた彼女だったがネレディアの言葉に舌打ちしたくなった。

 「撃ってバーガー!撃つのよ!」

 もう我慢しなくともいいよな、銃口を向けていいよな。そう思うや、スヴェートはホルスターからブラスター・ピストルを素早く抜き取り、銃口をネレディアに向けた。

 「先程からギャーギャーとうるさいな。誰だお前は」

 全員の視線がネレディアに集められる。
 スヴェートのその行動に、この場に居る者達は絶句したが、バーガーだけは絶句しなかった。

 「な、何を…わ、私はネレディアよ!」
 
 子供でも分かる程、顔に焦りの色が露わとなっているネレディア。嘘つけ、とスヴェートは毒ついた。

 「ネレディアの姿をした偽物だろうが。茶番はもう充分。覚悟するんだな」

 「スヴェート…。バ、バーガー、助けて!」

 ネレディアはバーガーに助けを求める。助けてくれると確信しているようだ。
 あ、それはマズイ。スヴェートは続けて発せられるであろう言葉を遮り、バーガーに顔を向けた。

 「バーガー、お前も気づいている筈。黒幕がコイツであることを」

 あぁ、とバーガーは頷いた直後、銃口をネレディアに素早く向けた。それにスヴェートは内心にて安堵の息を吐いた。よかった。私は助かった。バーガーも気づいるだろう発言は、決めつけているだけなのは内緒である。

 「バーガー、どうしちゃったの!」

 焦りの色がより強くなる黒幕女。ネレディアと呼ぶのはもう止めだ。

 バーガーは口を開いた。

 「どうしちゃったの、じゃねぇんだよ。偽物が」
 
 「な…!?」

 バーガーは黒幕女のおでこの真ん中に照準を動かした。

 「スヴェートと同じく、お前が黒幕なのは分かってたぜ」

 えっ、と間抜けな声が漏れた。
 スヴェートである。バーガー含め、誰も聞こえていないようだ。よかったよかった。

 「決定的だったのは、桐生を見た時の反応だ。自分の妹と瓜二つの桐生を見ても反応しねぇ姉はいないからな」

 えっ、と驚く声が桐生から発せられた。
 私も驚きだ。自分と同じ容姿をした人間が世界に3人居ると言われていたが、まさか実在していたとは。

 「それにな…」

 バーガーは、ニヤリとした笑みを浮かべながら続けた。

 「ネレディアは俺のことを、フォムトって呼ぶんだぜ」

 「…フフっ」

 小さく頷き、黒幕女は薄く笑った。

 「どうも……記憶を読みそこねたようです」

 黒幕女のその声は口を動かさず発せられた。ネレディアの声ではない、黒幕女自身の声だ。音で話していないということは、テレパシーの類で話しているのだろう。瞳は、白銀の瞳へと変貌していた。

 黒幕女は、静かにジャングルのほうを見つめた。

 「…招かれざる客が来ている」

 その時、空の一角が溶鉱炉のように燃え上がり、地獄の釜が抜けるように真っ赤な炎がジャングルに降り注いだ。まるで天井から発生した融合爆発のよう。降り注いだ巨大な爆発炎はジャングルを焼き払い、キノコ雲を生成した。やがて戦艦大和を容易に覆う津波が、もの凄い速さで戦艦大和に迫って来た。

 「…フっ」

 スヴェートは目を閉じた。
 …諦めよう、私は此処で死ぬんだ。死にたくない、死にたくな〜い!白髪オッドアイの女性スヴェートこと私は、70代の美女だぞー!私は、ベッドで横たわって老衰で死にたいんだー!!

 その想いと共に、戦艦大和ごと飲み込まれた。 
 

 
後書き
スヴェート「70代の美女だぞー!こちとら老衰で死にたいんだー!!」
世の女性 「喧嘩、売ってる?」(表情:怖い程の笑顔)

ーーー

さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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