神々の塔
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第七十五話 焦る気持ちその九
「用いたらあかん」
「そういうことやな」
「ほんまそこが大事ね、悪意の塊みたいなのいるから」
アレンカールも話に入って来た。
「世の中にはね」
「邪悪と言うしかないな」
「歴史でも時々出て来るしね」
「そんな奴がな」
「それで悪事を為すさかい」
だからだというのだ。
「ほんまね」
「用いたらあかん」
「見付け次第ね」
「除かんとな」
「スポーツのチームでも八百長してる人おるって聞いたら」
「ええ監督さんは見極めんとするな」
「チームをよお見て」
南海ホークスの監督鶴岡一人はその輪を聞いて選手兼任だった頃敢えて自分のポジションをファーストに置いてそこからグランド全体を観てそうした選手を見抜こうとして実際に見抜いていたのである。
「いたらトレードになり出して」
「取り除くな」
「そうせんとね」
「チーム全体がえらいことになるわ」
「日本でもあったのよね」
「嫌な事件やったらしいな」
シェリルはやや暗い顔で応えた。
「どうも」
「ああ、それな」
芥川が嫌そうに言って来た。
「さっき自分等が話したことがな」
「実際にか」
「あってな」
それでというのだ。
「トレードに出してるうちはよかったが」
「それで終わらん様になったな」
「黒い霧事件ってな」
芥川はその顔をさらに嫌そうに歪ませて話した、その歪みにこそその事件のおぞましさが出ていた。
「八百長で多くの選手が永久追放になった」
「中には冤罪もあったな」
「どう見てもな」
こうシェリルに返した。
「そういったのがな」
「あったんやな」
「そやった」
まさにというのだ。
「池永さんな」
「西鉄のエースやったな」
「今の西武のな」
西鉄ライオンズが二度の身売りを経て親会社が西武となったのだ。
「エースやった」
「確か」
シェリルは自分の記憶を辿りつつ芥川に話した。
「二十三歳で百勝いったな」
「このままいくとな」
それこそというのだ。
「三百勝もや」
「いけたな」
「そうも言われてるな」
そこまでのというのだ。
「凄い人やった」
「そやってんな」
「しかしな」
「その事件でやな」
「多くの関係者が無実やって言うてるのにな」
永久追放となった人すらそう言っていた、死なば諸共ではなくそう言って処分を撤回してくれと言ったのだ。
「それでもな」
「永久追放になったんやったな」
「ああ、けど僕が調べてもな」
芥川は自分の見解も述べた。
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