インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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戦闘と説教と執事AI
―――ジュッ! ドガァァァァッ!!
光線がレールカノンから吐き出された弾丸を貫いた。
「ほう。中々―――グァッ!?」
ボーデヴィッヒがカエルを押しつぶしたような声を上げて吹っ飛んだ。まぁ、俺がやったんだから仕方がないだろう。
「………いい度胸してんじゃねぇか。その度胸だけは褒めてやる―――が、時と場合を考えろ。まぁ、お前みたいな奴に何を言っても無駄だな」
「何だと!?」
「その言葉の通りだカス。ちょっとは頭使って考えろ」
ああ。もういいや。もうウザイし―――消すか。
俺は距離を取りつつレールカノンをこっちに向けているボーデヴィッヒに接近するが、
(―――動けない?)
「気づいたようだな。これはAICだ」
「ああ。アクティブ・イナーシャル・キャンセラーね。………で、それが?」
「何―――!!」
ボーデヴィッヒに光線の雨が降り注ぐ。それと同時に俺の束縛が解除された。
「さて――――――地獄へ誘ってやるよ」
大鎌《エネルギーサイズ》を展開し、肩に振り下ろすが両手の《プラズマ手刀》で受け止めた。
「ふーん。やるじゃん」
だが、甘い。
その場で《エネルギーサイズ》を収納し、左アッパーを顎にお見舞いする。
「さて、この距離だ―――しゃべると舌咬むぞ?」
―――ドドドドドスッ!
連続パンチを食らわせ、5発目でストレートを放った。
「くッ………き……さまぁ……」
「………」
俺は無言でISを解除する。
「!? どういう意味だ!」
「ピットの方にお前の大好きな女がいるからさ。ご立腹のようだし。ご愁傷様」
そう言って俺は踵を返してBピットから中に戻った。
そして俺はあるシステムに用事を頼んだ。記憶が少し回復したからできる芸当だ。
「―――祐人!」
声がした方に向くと、そこには一夏とデュノア、それに篠ノ之がいた。
「大丈夫だったか?」
「それはオルコットと凰に言ってやれ。おそらくボーデヴィッヒと仲良く怒られているだろうから」
「あ、ああ。わかった」
一夏はそのまま行き、デュノアもその後について行った。
「おま―――」
「―――風宮、話がある」
「?」
「お前は行かないのか?」と聞こうとすると、そんなことを言われた。篠ノ之は一夏loveなので告白はないだろう。
「何だ?」
「やはり私は無力なのだろうか………」
「まぁ、確かに俺から言わせてみればそうだが、何もお前に限ったことじゃない。ここにいるほとんどは無力だよ。いくらISのためとは言え、鍛えていると言っても高が知れる」
そして俺は無駄だとは思うが念の為に釘を刺しておいた。
「だからと言って姉の力なんて頼るなよ。ただでさえお前は狙われやすいんだから」
「そ、それは………そうだが………」
「ところで、お前と姉は仲がいいのか?」
ふと、質問してみた。
「………いや。私は好きじゃない」
「へぇ~」
「さ、先に言っておくが、言い寄ろうなんて考えは捨てたほうがいい。千冬さんから聞いているとは思うが、姉さんは私と一夏、千冬さん以外には興味を持たない」
「………え? 親は?」
「……あまり関わっていなかったのは覚えている」
それは意外だった。まさか親にまで興味がないとは。
「……一応、念の為に言っておくが、一夏は鈍感だからせめて力加減は考えろよ。女の専用機持ちもそうだが、お前も酷すぎる」
「わかった」
そうでもしないと後々面倒な事になると言うのが率直な感想なんだが。
それにしても、専用機持ちはろくな人間がいないな。デュノアも含めてな。
■■■
―――とあるside
「………やっぱり、こいつ邪魔だな」
ある女性がモニターを見ながらそうつぶやく。
「しかも箒ちゃんに近づいてきてるし、もしかして体狙い? まぁ、どっちにしろ倒すけどね」
そう言いながら別のモニターを開く。そこにはドイツの第三世代型IS『シュバルツェア・レーゲン』のスペックが表示されていた。
「むむ? これは……またドイツか~。この前もだし。その時は変なISが現れて原因不明の制御不能に陥るし………。………あれ? そういえば―――」
女性はカタカタと投影型キーボードを叩き、ある映像が表示されていた。
「このIS、少し似てるね~。いや、少し変わっているだけで一緒だね。しかも操縦者は―――あれかぁ。私のことを探っているらしいけど―――邪魔だね。いっくんの引き立て役になるならまだ良かったんだけど、目立ちすぎるんだよねぇ。しかも―――束さんが開発していないビーム兵器を実装しているなんて、これを造った人間はある意味凄いね。でも―――邪魔だからいいか」
そしてある日のために仕組む。障害は排除する。例えどんな手を使っても。それが―――篠ノ之束という人物だった。
「まぁともかく、今はその工場を消そっか」
篠ノ之束の秘密ラボ。そこから一機のISが飛んで―――消えた。
「―――え?」
彼女は驚いてディスプレイを凝視する。そこにはさっきまで飛ばした無人ISに付けられているカメラからリアルタイムで送られる映像を見ていたのだが、それが突然消えたのだ。
彼女はすぐに別の衛生からその場所を確認すると、狙った先の工場が無事で自分が飛ばしたISも無傷―――だが、地面にうつ伏せで倒れていた。
「どういう……こと?」
ありえない。ありえないのだ。
実際にはそんなことは起こり得ない。何故なら―――自分が造ったISはISでしか倒せないからだ。
さっきまでそのISの近くに―――半径100km内にISはいなかった。そりゃそうだ。完璧なステルス機能を付けたISだ。見破られることがあるわけがない。それなのに―――壊された。
「………ふ~ん。まぁいいんだけどねぇ」
その後、彼女がある異常に気づくのは―――その工場にいた人間が全員逃げてからの襲撃が成功してからだった。
■■■
「ありがとう」
『いえ。これが記憶を失う前に言いつけられたことですから』
「ああ。そうして俺を助けてくれ。デタラメで造った優秀なAI『セバス』」
『私には信じられませんが。まさか―――篠ノ之束が造ったコアのシステムを解析するプログラムを、まさかあなたが構築するとは』
相変わらず、このプログラムは一言多かった。
『ですが、私は作られた身。例えどんな道を選ぼうと私はあなたに付いて行きます』
「そうしてくれ。それで、今回得られた戦利品は?」
『ええ。ISコアです』
そう言って転送装置から2個のISコアが現れる。ディアンルグ以外のコアは俺は作っていない。これは篠ノ之博士が作成したコアだ。それを―――セバスが掌握した。
「それで、残骸は?」
『あなた様が用意した乗り物に運び込みました。今まで封印されていたとはいえ、相変わらずの馬力です。あれを量産すれば、おそらくはISなど恐るに足りない存在になるかと』
「………そうか」
セバスの通信はISの、しかし特別の個人間秘匿通信を通じて通信だ。だから、俺たちの会話は外部には漏れない。
俺はコアを量子変換して隠した。コアを持っているだけで戦争が起こりかねない。
そして俺は―――そのままベッドに潜った。
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