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一本の杉から

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第二章

「あの木からね」
「木が増えたのね」
「木の種と」 
 その杉の木のというのだ。
「他の人が植林して」
「それでなのね」
「徐々にね、千年以上の間にね」
「木が増えて」
「今ではね」
「ああして山が木に覆われてるのね」
「そうなったのよ」
 ミチルは楓子に話した。
「これがね」
「千年以上経って」
「そうよ、最初は禿山だったなんて」
「今じゃ想像も出来ないわね」
「そうよね、そうなったのは一本の木から」
 それからというのだ。
「全てね」
「変わったのね」
「そうなったのよ」
 こう言うのだった。
「これがね」
「そう思うと世の中凄いわね」
「最初は何もなくてもね」
「禿山でもね」
 それでもというのだ。
「今じゃ木で一杯よ」
「一本の杉からはじまって」
「それでね」
「そうなったのね」
「そう、本当にね」
 二人でこうした話をした、そしてだった。
 学校が終わると楓子とミチルは一緒にその山に入って頂上の杉を見た、その杉はとてつもなく高く。
 見上げていてだ、楓子は一緒にいるミチルに言った。
「最初は小さかったのよね」
「この杉の木もね」
「それが今では」
「こんな大きいのよ」
「千年以上の間に」
「そうなったのよ」
「歳月が経てば」
 そうなればというのだ。
「禿山も木で一杯になって」
「小さな木も大きくなる」
「そうなったわね」
「ええ、自然って凄いわね」
「つくづくね」
「そのこと覚えておかないとね」
「本当にね」
 こうした話をした、そしてだった。
 二人で暫く杉の下に座って自然について語り合った、山のことも杉のことも。そうして森林浴もしてだった。
 夜が近付くとそれぞれの家に帰った、そこで楓子はミチルに言った。
「またここ来よう」
「それでこうしてお話しようね」
「そうしようね」
 お互い笑顔で言葉を交えさせてだった。
 一緒に帰った、夕方の山も緑の自然に覆われていた、その空気も緑の世界も実に心地いいものであった。


一本の杉から   完


                    2024・4・16 
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