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名前書けたら入学

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第一章

                名前書けたら入学
 長嶋茂雄の逸話は多い、その中にはこんな話もある。
「あの人大卒ですよね」
「立教だよ」
 居酒屋の中で店の親父の田所譲二が若い常連のサラリーマン中谷一人に話した、中谷は丸い目と太い眉に尖った眉と丸い顔を持っている。黒髪は短く背は一七二位で痩せていて田所は細い目が印象的な優しい顔立ちで白髪は殆ど丸坊主である。中谷は今はカウンターに座っている。店は結構半畳している。
「そうだよ」
「ですよね」
「同期に杉浦がいてな」
 杉浦忠、南海ホークスのエースだった男だ。
「先輩に大沢親分がいて」
「あと西本幸雄さんもですね」
「そうだよ」
「そうでしたね、ただ」
 中谷はビールを飲みつつ言った、つまみにもつ煮込みと枝豆がある。
「長嶋さんって。俺ヤクルトファンですが」
「俺は東北出身でな」
 田所はそれでと返した。
「楽天だけれどな」
「パリーグですね」
「昔はセリーグはヤクルトだったけれどな」
「俺と同じですね」
「今もセリーグはヤクルトだけれどな」
 それでもというのだ。
「楽天の方をな」
「応援されてますか」
「ああ」
 そうだというのだ。
「今はな」
「そうなんですね」
「それで長嶋さんだけれどな」
 田所はそちらに話を戻した。
「立教だよ」
「大学は」
「高校時代は甲子園に出てなくてな」
 実はそうであるのだ。
「注目はされてたけれどな」
「甲子園には縁がなかったですね」
「そうだよ」
 実際にというのだ。
「あの人は」
「そうでしたね」
「しかしな」 
 それでもというのだった。
「立教でスターになったんだよ」
「滅茶苦茶活躍して」
「それでプロに入ったんだよ」
「後は言うまでもないですね」
 中谷は飲みつつ応えた。
「大活躍して」
「ミスタージャイアンツって呼ばれてな」
「監督にもなって」
「皆知ってる通りだよ」
「そうですね、ただ」
 ここでだ、中谷は首を傾げさせて言った。
「長嶋さんって勘とか動きは凄いですが」
「動物的勘だな」
「それは凄いですが」
 それでもというのだ。
「考えるタイプじゃないですね」
「本能で動く人だな」
「野村さんと違って」
 監督時代によくライバルと言われていた野村克也と、というのだ。
「そうですね」
「あの人はな」
 まさにというのだ。
「そうだな」
「勘、本能ですね」
「そっちの人だよ」
「そうですね、やっぱり」
 さらにだ、中谷は言った。ビールで喉を潤しながら。
「大学はスポーツ推薦ですか」
「ああ、そうだよ」
 田所はその通りだと答えた。
「もうわかるな」
「はい」
 中谷はまさにと答えた。 
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